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相互扶助再論 の商品レビュー

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2013/04/15
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クロポトキン(大窪一志訳)『相互扶助再論』同時代社、読了。主著『相互扶助論』を深化・発展させた論考「いま求められている倫理」「自然の道徳」の初訳、「進化論と相互扶助」「アナキズムの道義」の新訳を収録。本書は副題の通り「支え合う生命・助け合う社会」へ向けての青写真といえよう。 相互扶助とは人間社会におけるモラルの根本であるが、クロパトキンは、それを生物の生命活動の機制自体と考えたが、人間社会と同じように動物社会にも相互扶助があるのではなく、動物世界のそれに起源があると見る。相互扶助再生のヒントはここにある。 クロパトキンの人間観・生物観は、伝統的西洋近代のそれを打破するものだが、連続だけでなく断絶も認める。それが本能と意識との相違である(ここに人間の自由の原点が存在する)。ただ、本能と意識に関しても連続性を認めるから相関的といえよう。 マルクス主義に顕著に見られる機械論、還元主義、歪な因果論は一切見られない(勿論、それが「空想的」と揶揄」されるが)。しかし、クロポトキンの言説は空想的どころか、イデオロギーと訣別した生き生きとした等身大の人間の思考を認めることができるのに驚く。 「強くあれ。情と知のエネルギーをみなぎらせ、あふれされよ。そうして、君の知を、君の愛を、君の行動エネルギーをみなぎらせ、あふれさせよ。そうして、君の知を、君の愛を、君の行動のエネルギーを、広く、他者へ向かって拡張せよ!」、『アナキズムの道義』。 人間からかけ離れそれを利用する言説は全て幻像である。抽象的立場を取り下げ、自分を自分として生きていくこと。要はここであろう。所謂「爆発しろ」とは無縁である。同時代社からは大杉栄訳『相互扶助論』が刊行されており、併せて読みたい。了。

Posted byブクログ