東京骨灰紀行 の商品レビュー
もはやどこでピックアップしたのか分からないんだけど、いつか読んだブックガイドから。東京の地理に明るくなく、近現代史もちょっと奥になると分からない、その程度の知識だと、ちょっと歯が立たない。まるで入ってこないほど難解ではないんだけど、馴染みのない地名・人名のオンパレードで、右から左...
もはやどこでピックアップしたのか分からないんだけど、いつか読んだブックガイドから。東京の地理に明るくなく、近現代史もちょっと奥になると分からない、その程度の知識だと、ちょっと歯が立たない。まるで入ってこないほど難解ではないんだけど、馴染みのない地名・人名のオンパレードで、右から左へ抜けていく。いちおう積読けど、再読、するかな~…。
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東京の墓地・墓碑を巡り、江戸期からこの地に積もり続ける骨と灰から〈都市と死〉の在り方を見つめる。 最初のほうは本当に「お爺ちゃんの歴史散歩」といった感じなのだが、大火や地震、流行病の犠牲者、あるいは吉原で亡くなった女たち、医大生の解剖に使われた御遺体、そして戦死者たちが眠る土...
東京の墓地・墓碑を巡り、江戸期からこの地に積もり続ける骨と灰から〈都市と死〉の在り方を見つめる。 最初のほうは本当に「お爺ちゃんの歴史散歩」といった感じなのだが、大火や地震、流行病の犠牲者、あるいは吉原で亡くなった女たち、医大生の解剖に使われた御遺体、そして戦死者たちが眠る土地に赴き、彼ら彼女らが「なぜここに埋葬されたのか」を語る口調は徐々に熱を帯びてくる。講談調の小気味いいリズムで書かれているが、中身は堀田善衛の『方丈記私記』を思わせるような、民を顧みない権力者への怒りに満ちている。 そのエネルギーにあてられてなかなか読み進められなかったのだが(文体の心地よさに反して"食らう"のだ)、膨大な資料を引用して語られる都市の歴史は濃く、面白い。地下鉄サリン事件を発端に語りだされる築地の聖路加国際病院の成り立ち。20世紀初頭に「乞食」を押し込んだ養育院と彼らが眠る無縁墓地。中産階級が通うお坊ちゃん学校の真裏に夜間も受け入れる貧民小学校が建っていたかつての新宿。東京の知らない顔が次から次へと掘り返され、現在の姿の上に重ね合わされる。 読みながら東日本大震災のころの記憶が蘇ってきた。あのときアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の放送が全国的に延期になって、「なんで関係ない地域まで我慢させられるんだ」というネットの書き込みを見たのだ。それはいつも関東優位で物事が決まることへの不満でもあっただろうけど、私はその書き込みの主が近畿地方在住と言っているのが引っかかり続けた。多分若い人だったのだと思う。 都市の表面だけを見れば、〈復興〉したその姿に人はやすやすと騙されてしまう。というか、自分から騙されにいってしまうのだと思う。本書は自分が育った土地に刻まれた傷を見つめ、静かな怒りと共に死者の魂を街に浮かび上がらせる。
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東京の墓巡り、慰霊碑の巡礼。明暦の大火、関東大震災、東京大空襲…こんなにも多くの犠牲者が東京の地には眠っている。さらに刑死者、遊女、行き倒れ、名も知れぬ死者たちの骨灰が、東京の地下には埋まっている。飄々と歩き、慄然とする紀行。
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いわゆる墓地巡りである。東京の東側に詳しい。墓地になった歴史的出来事も説明していふので、変わった東京ガイドブックとして使うこともできるであろう。ただ地図が章の初めだけなので、文章をよみながら地図を見るのが面倒である。さらに、東京の西は多磨霊園だけである。 教育としての特徴は新宿...
いわゆる墓地巡りである。東京の東側に詳しい。墓地になった歴史的出来事も説明していふので、変わった東京ガイドブックとして使うこともできるであろう。ただ地図が章の初めだけなので、文章をよみながら地図を見るのが面倒である。さらに、東京の西は多磨霊園だけである。 教育としての特徴は新宿で、本人が通った新宿高校周囲が詳しい。そこでの、地域と学校の文化の違いについて文献ではなく、自分が通った昼間の高校と夜間の高校の生活の違いについて自分の体験から述べている。もっと詳しく書くことで教育社会学としても価値が出る論文になるであろう。雙葉幼稚園については、文献を上手く使って説明しているのて、コロナ禍の状況と似ているところもあるので、幼児教育施設経営学からは役立つかもしれない。 単行本で読んだが活字がよくないので、読みにくく、時間がかかる。老眼ではニか三か漢数字がわかりなくい。文庫本では読みにくさが改善されていることを望む。
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本書で取り上げられている町。普段何も考えずに行ききしている町。 改めて、考えれば夥しい亡者の上に成り立っているのですね。まったく意識はしないが。 恐らく、いくら綺麗に飾ってもその場には隠せない意識のようなものが漂っているのでしょう。感覚が鋭敏な人は、その意識を感じて感応するのでし...
本書で取り上げられている町。普段何も考えずに行ききしている町。 改めて、考えれば夥しい亡者の上に成り立っているのですね。まったく意識はしないが。 恐らく、いくら綺麗に飾ってもその場には隠せない意識のようなものが漂っているのでしょう。感覚が鋭敏な人は、その意識を感じて感応するのでしょう。 ある意味自分は鈍くてよかったのかもしれない。 2000年くらい経って、この町を掘り起こす人はどういう解釈をするのかな。
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タイミング悪く短期的に読むことが出来なかったので、途中飛ばしちゃいました。 自分の職場が東京の東にあるので、身近な場所も多かった。 こういう形とか、違う形でも、戦時中のこととか、昔のことは、もうちょっと知ろうと思った。
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東京の地下に埋まっている骨灰の消息を江戸以降の大火事・震災・戦災の跡、牢屋敷、処刑場の跡、谷中・多摩墓地等を訪ねて東京の人々の失われた記憶を掘り起こす。年齢を感じさせずに現場を歩くフットワークと事前、事後の十分な調査、高齢の著者ならではの幅広い見聞、体験により得がたいルポルタージ...
東京の地下に埋まっている骨灰の消息を江戸以降の大火事・震災・戦災の跡、牢屋敷、処刑場の跡、谷中・多摩墓地等を訪ねて東京の人々の失われた記憶を掘り起こす。年齢を感じさせずに現場を歩くフットワークと事前、事後の十分な調査、高齢の著者ならではの幅広い見聞、体験により得がたいルポルタージュになっている。それにしてもどの現場でも、その場所に最も相応しいと思われる資料を必ず携えているのには驚かされる。明るくひょうひょうとした筆致は、骨や灰について書くのに不思議と似合っている。取り上げられている場所を全部尋ねたくなったのは、良い紀行の証拠であろう。
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