決定版 五輪書現代語訳 の商品レビュー
地水火空風の五巻からなる兵法書。本書では「現代語訳」「原文」「解説」の順に構成されている。 <地の巻> 概要と全体の構成を記し、本書のなかでは導入にあたる。死を覚悟することにおいては、武士にかぎらず農民や職人・商人でも同じことだとしているのは、正鵠を得ていると感じたとともに武士...
地水火空風の五巻からなる兵法書。本書では「現代語訳」「原文」「解説」の順に構成されている。 <地の巻> 概要と全体の構成を記し、本書のなかでは導入にあたる。死を覚悟することにおいては、武士にかぎらず農民や職人・商人でも同じことだとしているのは、正鵠を得ていると感じたとともに武士の言葉として意外でもあった。つづいて武士が兵法を修行する道の目的のひとつに、「我が身のために名をあげ、立身もしようと思うこと」と現世的な利益をはっきりあげているあたりも率直に感じる。いわば武士のための現代でいえばビジネス書であることの宣言とも受け取れる。 <水の巻> 「二天一流の剣術を記し置いたもの」として、戦いにおいての心がまえにはじまり、身体的な姿勢、足使い、太刀の持ち方・構え方といった具体的な方法を順に説いている。それだけに現代この章を読んで活用できる読者は稀ではないだろうか。冒頭の「物真似ではなく道理を理解したうえで行動し、常に改良せよ」という教えは本書全体に通じる基本的な教えでもある。 <火の巻> 戦場における立ち回りと考え方を指南している。「三つの先」「枕を押さえる」「渡を越す」「敵になる」「影を押さえる」などといった項目ごとに戦いで有利に立つための思考法を数多く列挙する。先の"水の巻"と違って汎用性が高く、現代のビジネスに活用するつもりで読めば少なからぬ教訓を読み解くことも可能だろう。"先手必勝"や"油断を誘う"といった教えは複数の項目で共通するところである。 <風の巻> 他流派への考察であり、基本的にすべて批判である。具体的には大きな太刀、小太刀、型の多さ、構え方など、おそらく当時の兵法として流行していた各流派の教えの問題点を指摘する。批判の要点を一言で表せば「形式主義批判」ということになるだろう。同時に本巻の内容からは、華々しい戦績を残しながらも時流には乗ることができなかったであろう武蔵の鬱屈した思いを汲み取れないでもない。 <空の巻> 本巻のみ病気のため代筆となっている。もっとも短く、あとがきに相当する。 上記のように、地水火空風の五巻といっても並立する要素ではなく、地の巻と空の巻はそれぞれ序文とあとがきに近い。五巻の分類はまさしく現代の書籍の章立て捉えてよいだろう。「五輪書」といえば重々しい達人の思想書といったイメージだが、"地の巻"の宣言で武士としての実利的な目的も隠さないことからも、いまでいうビジネスパーソン向けの新書本にあたるといって過言ではなさそうだ。 全体を通していえるのはとにかく「常に工夫しろ」「道理を考えろ」といった教えが繰り返される点である。換言すれば強さを相対的なものとして捉える武蔵の基本的なスタンスが本書を覆っている。この点は"風の巻"にある他流派にたいする形式主義批判にも通じる。型にこだわらず常に自力で考えろというのは真理であり共感もできると同時に、江戸時代の安定期に入って本格的な戦闘が不要になり、まさしく形式的になりつつあった武士のニーズに添うものではなかったかもしれないとも思う。 巻末にある25ページほどの解説は、弟子による創作説もある五輪書成立の経緯を掘り下げるもので、全面的に文献の考証に費やされている。解説で内容についての分析や考察が一切なされていないことには不満が残った。
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【2015/3/12】 紹介者:高橋太郎さん レビュー:米山 宮本武蔵が書いたという、戦いのコツ? 高橋さんが戦闘系の方だということを置いといても、人生で応用する場面が多いという。 例えば営業でも、「絶対契約してやる。そのためには、今は自分を抑えて引こう」みたいな、強かかつ合理...
【2015/3/12】 紹介者:高橋太郎さん レビュー:米山 宮本武蔵が書いたという、戦いのコツ? 高橋さんが戦闘系の方だということを置いといても、人生で応用する場面が多いという。 例えば営業でも、「絶対契約してやる。そのためには、今は自分を抑えて引こう」みたいな、強かかつ合理的で目的に一直線な思考に結びつくんだとか(^^) 宮本武蔵マインドを自分に憑依させるための秘伝の書なのかもしれない!
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