貧困についてとことん考えてみた の商品レビュー
「自己責任論というのは、『自分は関係ないよ』という『社会的無責任論』である」、という考えに共感した異分野の湯浅さんと茂木さんが、パーソナルサポートの現場を回り、貧困の実情とその原因を探っていく本。湯浅さんの考えには声を出して「うんうん」と言ってしまうぐらい、今までなんとなくあった...
「自己責任論というのは、『自分は関係ないよ』という『社会的無責任論』である」、という考えに共感した異分野の湯浅さんと茂木さんが、パーソナルサポートの現場を回り、貧困の実情とその原因を探っていく本。湯浅さんの考えには声を出して「うんうん」と言ってしまうぐらい、今までなんとなくあった違和感を言葉にしてくれていた。また、脳科学という別の側面からその事実が裏付けられていくのがおもしろかった。 困りごとを抱えた人を支えていくことで社会全体が強くなるため、そういった人を切り捨てる考え方は全体にとってマイナスという捉え方が今まで自分にはないものだった。誰しも人権があるという価値観で支援者になることを決めたが、それは結果的に社会にとってどうかということまで考えていなかった。 「わかりやすいものは良くて、わかりにくいものは悪いもの」とい善悪のつけ方は、とても危険です。 2009年から民主党政権時代に内閣府にも参与し、政策を変える過程に人を納得させることの難しさを感じた湯浅さんの言葉はずっしりと重いものがあった。これから調整する立場の仕事に就く自分に意思がなくて、社会にとっての善悪がわかるだろうか。社会が持っている多様な意思を理解できるだろうか。そう思って、これから新聞を読みたいと思った。
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茂木健一郎さんということで、ちょっと足踏みしたのですが、なんてことはなかったです。 現場できちんと話をして現状の確認をしてセーフティネットをいかに広げるか、ということを、直接現地を回ってやっぱりそう思った、という書籍。
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人格って、その人ひとりだけでできているわけじゃなくて、川の流れのようにたくさんの影響が集まってできている。だから、あなたという人は今まであなたが人生で出会ったすべての人の反映なんだということが、脳の研究の現場では、科学的にもわかってきたんですね。ということは、自分を高めたり、自分...
人格って、その人ひとりだけでできているわけじゃなくて、川の流れのようにたくさんの影響が集まってできている。だから、あなたという人は今まであなたが人生で出会ったすべての人の反映なんだということが、脳の研究の現場では、科学的にもわかってきたんですね。ということは、自分を高めたり、自分の命を輝かせるためには、人とつながらなくてはいけない。そういう意味においても、自己責任というのは、矛盾しているんです。・・・逆に言えば、ある人が少しうまくいかないのも、その人の責任ではなくて、その人が今までたまたまそういったつながりに出会えていなかった、というだけの話なんですね。 単にお金を支給すれば、セーフティネットとなるわけではない。・・・つまり、必要とされているのは、お金を出してそれで済ませるのではなく、あるいは社会保障費の額だけを政治問題にするのでもなく、社会の中に豊かな関係性を築いていく技術であり、工夫である。 いわゆる「空気」と言われるもの。忖度文化ともいわれますが。「一つの流れができた」と多くの人が感じると、個々人がそれを所与のものとして動き出して、結果的にそれが強化されるという、妙な増幅過程です。誰かが何かを言いだして初発の勢いを持った時というのがは、それはまだ少数の話なんですね。では、その後に続いた大量のフォロワーたちが、本当にその考えに強く賛同しているかというと、そういうわけでもない。・・・そうやって受け入れられていって、結果的に7割8割になったりする。これは、一人ひとりが誰かに説得されたというよりも、忖度文化の影響が強い。
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~べき はやめよう。 人はみんな違っていい。 きっちり人と向き合おう。人間を理解することが大切。 人とのつながりがなければ、金がないより生きづらい。 同質の人の集まりは足し算にしかならないが、異質の人の集まりは掛け算
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最後に今まで論じてきたことのまとめ的なおさらいがあって良かった。貧困とは金銭面だけじゃなく他者との関わりも乏しくなるということだ、といった内容の言葉に改めて気付かされたことがあった。
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良識ある大人同士の対話で安心できる。こういう良識ある人がちゃんといるんだと思うと、世の中捨てたもんじゃないなと感じる。
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人のつながり、人の多様性について考えさせられた一冊。 タイトルが違えば、あるいはサブタイトルがあれば、もっと広くいろんな方に手に取っていただけるのではないかと思いました。 マーク・グラノヴェッターの「弱いつながりの強み」、有益な新しい情報は「弱いつながり」の人たちから得られる...
人のつながり、人の多様性について考えさせられた一冊。 タイトルが違えば、あるいはサブタイトルがあれば、もっと広くいろんな方に手に取っていただけるのではないかと思いました。 マーク・グラノヴェッターの「弱いつながりの強み」、有益な新しい情報は「弱いつながり」の人たちから得られるケースの方が多い、という考え方が興味深かったです。 貧困に陥る方の多くは孤立していて、人とのつながりがほとんどなく、ゆえに有益な情報を得る機会も乏しい、とのこと。 なるほど、でした。 また、パーソナル・サポートのような「福祉」の「枠」にとらわれない支援のあり方についても、共感できる部分が多かったです。 運営資金をどうやって集めて、どのように運営していくのかが気になりました。 異業種交流、いいですね。 私も何かチャレンジしたくなりました。
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湯浅誠さんと、茂木健一郎さんの、やさしい対談。 貧困と言っても経済的なものだけではなく、友人がいないなどの外部とのつながり、「溜め」がなくなってしまっていることをこそ、注意して見るべきだという。 自己責任論についても批判的、人間がさまざまな社会的つながりのなかで生きている以上、「...
湯浅誠さんと、茂木健一郎さんの、やさしい対談。 貧困と言っても経済的なものだけではなく、友人がいないなどの外部とのつながり、「溜め」がなくなってしまっていることをこそ、注意して見るべきだという。 自己責任論についても批判的、人間がさまざまな社会的つながりのなかで生きている以上、「自己責任」は「他己責任」だという。 人間ががんばれる条件、それをまずはいちばんに、ひとりひとりのためにつくっていかなくてはいけない。 困った人間は宝物。こういう考え方をできる大人がいることはすてきやと思う。
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茂木はいつもの軽さだが、それが湯浅の発言を引き出し、引き立てていて、結構読みやすい。タイトルが内容をうまく言い表しているかどうかは疑問だが、北海道・大阪・沖縄のパーソナル・サポートセンターに2人で訪れて、現場の活動を具体的に見ながら対談を行うというスタイルは、内容を地に足がついた...
茂木はいつもの軽さだが、それが湯浅の発言を引き出し、引き立てていて、結構読みやすい。タイトルが内容をうまく言い表しているかどうかは疑問だが、北海道・大阪・沖縄のパーソナル・サポートセンターに2人で訪れて、現場の活動を具体的に見ながら対談を行うというスタイルは、内容を地に足がついたものにしており好感が持てる。湯浅の最近の本をもう少し読まねばと思った。
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