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社会の芸術 新装版 の商品レビュー

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2021/07/22

 原著1995年刊行、システム論による甚だしく抽象的な理論社会学のニクラス・ルーマンの分厚い本。  本書では芸術なるものの本質や生成プロセス、「進化」を巡って緻密な論考が重ねられる。ルーマン社会学は具体的例を挙げることがほとんどなかったりして、理解が難しく抽象的すぎるといったイメ...

 原著1995年刊行、システム論による甚だしく抽象的な理論社会学のニクラス・ルーマンの分厚い本。  本書では芸術なるものの本質や生成プロセス、「進化」を巡って緻密な論考が重ねられる。ルーマン社会学は具体的例を挙げることがほとんどなかったりして、理解が難しく抽象的すぎるといったイメージがあるが、この本ではときどき具体例も示される。しかしそれでも難解なのは、私にとってルーマンの思考が常に「あさっての方向から」やって来るからで、読みながら自分でも思考を進めようとすると深みにはまって全然読書が捗らず、一応読み切るまで2ヶ月くらいもかかってしまった。  結局本書全体の論旨を完全に把握できたとは言いがたいものの、随所で芸術に関する新しい考えに触れることが出来て、これは極めて刺激的な体験であった。たとえば第2章で出てくる「セカンド・オーダーの観察」といった概念など、この角度で考え続けるならば芸術についての新しい視座が生まれてくるかも知れない、とわくわくさせられる。  後半に書かれた「芸術の自己記述」という観点も、なるほどシステム論によって出てくる独特なものであり、今後自ら考察を深めていく上でとても参考になる。  難解ではあるがあれこれと興味深く、比類ない芸術論と感じた。  それにしてもニクラス・ルーマン、こういう大部の書物を大量に生産したのだから、たいへんな体力だと思う。

Posted byブクログ