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鴨長明と寂蓮 の商品レビュー

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2012/10/08

長明28首、寂蓮22首を収録。 長明27歳の頃に成立したらしい「鴨長明集」から多く採られている。 若書きの歌は厭世的な気分に彩られ、恋の題詠であってもまるで 述懐歌のような趣きがある。新古今風の歌でもどこか感傷過多だったり、 強い自意識が揺曳している。 鑑賞では若くして父を亡く...

長明28首、寂蓮22首を収録。 長明27歳の頃に成立したらしい「鴨長明集」から多く採られている。 若書きの歌は厭世的な気分に彩られ、恋の題詠であってもまるで 述懐歌のような趣きがある。新古今風の歌でもどこか感傷過多だったり、 強い自意識が揺曳している。 鑑賞では若くして父を亡くし望みの神職にも就けず、挫折を感じ「死」や遁世を 口にしていた長明の生涯を追いつつ、歌自体の魅力も分かりやすく紹介。 寂蓮の方も、梁塵秘抄に取材したり、珍奇な題材に趣向を凝らしたり、 一首を見栄えの良いものにするため特に第四句に秀句表現を心掛けたなど、 その詠歌の手法が詳しく示されている。 22首の他にも類想歌としてこんな愉快な作品の引用も。 『人すまで鐘も音せぬ古寺にたぬきのみこそ皷うちけれ』 解説では二人の歌人を当時としては野外派であり垂直方向への視線を指摘。 寂蓮は山や雲や高い木など『上方へ伸びる目線』が特徴的なのに対して、 長明は川の流れや水に映る月や雁など『下方へのうつむく目線』が 目立つという相違も興味深い。 ちなみに著者は2012年10月現在、ETVで放送中の「100分de名著」の「方丈記」 の回に解説者として出演されています。

Posted byブクログ