ヒトはなぜ難産なのか の商品レビュー
人類進化学・考古人類学の人がヒトのお産について考察。ご自分の奥さんの出産が本書執筆のひとつの契機になっている模様。しかし、薄い割りに高いんだな、岩波科学ライブラリーは。図書館だから別に文句もないけれど。 ・ヒトの場合、骨盤の骨だけ見れば90%以上の確率で男女を判別できる。しかし...
人類進化学・考古人類学の人がヒトのお産について考察。ご自分の奥さんの出産が本書執筆のひとつの契機になっている模様。しかし、薄い割りに高いんだな、岩波科学ライブラリーは。図書館だから別に文句もないけれど。 ・ヒトの場合、骨盤の骨だけ見れば90%以上の確率で男女を判別できる。しかしヒト以外の動物では骨盤に明確な性差が見られない。ヒトの女性だけが出産に適応して骨格を進化させている。それくらいヒトだけ難産だということ。 ・ヒトの胎児は、産道の形に応じてコークスクリューのように回転しながら生まれてくる。器用なものだ。 ・出産の姿勢としては座位や立位もあり、これらの方が産婦が楽だとも。いま主流の水平位は介助する側の都合が優先されている?ホンマかいな。 ・帝王切開の率があがっており、医学的見地からでなく行われているのではと。高齢出産の増加に連れて上がっている部分もあるだろうに。出産のような行為が帝王切開というテクノロジーに頼りすぎると、それに適応してしまっていざテクノロジーが失われた時の懸念があると。心配しすぎのような気もするが、なるべくローテクでいくのはひとつの知恵かもね。
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驚くなかれ、著者はネアンデルタール人の専門家であり、こと出産に関しては自分の妻の三人の子供の出産に立ち会った経験があるのみである。 もちろん、医療関係者ですらない。しかし、その著者が語る出産からみた人類進化論は非常に興味深く、130ページ程度とコンパクトでありながらしっかりと押さ...
驚くなかれ、著者はネアンデルタール人の専門家であり、こと出産に関しては自分の妻の三人の子供の出産に立ち会った経験があるのみである。 もちろん、医療関係者ですらない。しかし、その著者が語る出産からみた人類進化論は非常に興味深く、130ページ程度とコンパクトでありながらしっかりと押さえるべきは押さえられ、かつ図解や写真も豊富、また表現も平易で読みやすいので、このあたりのことに興味がある人ならだれでも楽しめそうだ。 図書館で見かけて何気なく借りただけで特に期待していなかったのだが、なかなかの好著で得した気分。 岩波科学ライブラリーはだから好き。 ヒトが難産なのは直立二足歩行をするようになったからであり、そのために頭が大きくなったためでもある。頭が大きいために未熟な状態で生まれてくることになり頭蓋骨も変化。難産による生命の危険を救うために他人がかかわるお産になり、それが次第に生理としての出産から文化・医療としての出産に変化、などいちいち説得力がある。 そうだよね~、出産を一人でしない生き物はほとんど人間だけだよなあ。 こんなところにも、生物としての進化の結果が影響していたなんて。 生物の生態や行動には、種を存続させるという一番の目的のために、あらゆることが変化しながら形態を変えながら、その時出来うる限りの最善策が取られているんだなあということを実感。 環境の変化に伴い進化してきたのが生物だから、今は気づかずとも生き物は進化し続けているはず。 最近、10万年後のヒトの顔想像図が公開されたが、これからのヒトがどんなふうに変わっていくのか、興味もあり怖くもあり、というところかな。 確かめられないのがちょっと残念。 余談。 安産の代名詞のように言われている犬だが、人間が愛玩目的で作り出した短頭種の犬(うちのワンコも…!)も実は難産傾向だなんてやはり、という感じ。犬のマズルが長いのは、そのままお産も楽だということだったのね…。
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解剖学の先生の話が面白かったので、関係あるかなと手に取ってみた。だいたい聞いた話通り。100年後、200年後、千年後、ヒトのお産はどうなっているのかな。
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別に宗教を否定するわけではないが、日本人で「ヒトが神によって一週間でつくられた」と心から信じている人は少ないのではないかと思われる。 しかし、本書を読むと、ヒトがサルとの共同祖先から進化してきた事実を「難産」という視点から多面的に考察している。ヒトの発生というか、ヒトの成立と...
別に宗教を否定するわけではないが、日本人で「ヒトが神によって一週間でつくられた」と心から信じている人は少ないのではないかと思われる。 しかし、本書を読むと、ヒトがサルとの共同祖先から進化してきた事実を「難産」という視点から多面的に考察している。ヒトの発生というか、ヒトの成立という神秘がここまで解き明かされてきたのかと驚嘆する思いをもった。 本書は、「人類学的視点から出産を描い」ているが、その内容は決して難解ではない。 ヒトが進化の過程で直立歩行し、その後脳の拡大により「難産」となったとの論理は、実にわかり易い。 しかし、犬が安産とは知っていたが、数多くの動物の中でヒトがほとんど唯一の「難産」の生き物であるとは知らなかった。 昨今の人類学はDNAの活用などにより、新しい発見が相次いでおり興味深いと思っていた。 本書には新しい発見はあまり見当たらないが、ヒトというものが、決して特別な生き物ではなく、進化の過程で様々な負の遺産ともいえる形質も負わざるを得ない存在であることを確認出来る本であると思った。 一般に出産というものについて、あまり男性は知識がないと思う。本書のような知識を得ることもまた面白い。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
出産で苦しむのは人だけだが、その理由が分かりやすく解説されていておもしろかった。 直立歩行による進化で骨や筋肉が発達し結果として産道が小さくなったことや、脳の大きさも関係していると聞いて納得。 古今東西の出産事情もなかなか興味深く、古代の出産時の主な体位が座位であったことには驚いたが、垂直で重力に逆らっていないことを考えると医術の進んでいない時代にはとても有効な方法だったのだろうなと思う。
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お産は精神的な切り口で語られる事が多いと感じていたので、 解剖学的観点からの切り口が新鮮だった。面白かった。 この手のサイエンス系が苦手な私でも読めました。
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「かわさき宙と緑の科学館」で読みました。 視点を少しだけ変えて、視野を広げると、 当たり前と思ってた"常識"が、単なる思い込みだと気付かされる。 周りのもの・ひとすべて、貴重な存在なんだな~と☆ この本も、そんな一冊でした! 息子が科学漫画を夢中で読む傍ら...
「かわさき宙と緑の科学館」で読みました。 視点を少しだけ変えて、視野を広げると、 当たり前と思ってた"常識"が、単なる思い込みだと気付かされる。 周りのもの・ひとすべて、貴重な存在なんだな~と☆ この本も、そんな一冊でした! 息子が科学漫画を夢中で読む傍らの時間潰しと手に取った一冊、 また思わぬところで、素敵な出逢いに恵まれました♪
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人は2足歩行と大きな脳を手に入れたので、難産になってしまった、という話。そのメカニズムと、難産の影響による社会性の話、という感じの本、だと思ったのだけど、メカニズムの話が思いのほか多く、もっと社会性の獲得についてのことを読みたかった。 副題が「お産からみる人類進化」なので、仕方な...
人は2足歩行と大きな脳を手に入れたので、難産になってしまった、という話。そのメカニズムと、難産の影響による社会性の話、という感じの本、だと思ったのだけど、メカニズムの話が思いのほか多く、もっと社会性の獲得についてのことを読みたかった。 副題が「お産からみる人類進化」なので、仕方ないのか。しかし著者は、ヒトの進化には文化的要素が深く関わり、それ故生物学の常識では計り知れないことが起きるかもしれないという。帝王切開100%になれば、産道を通らない体の構造になるかも、と。医療に頼らなければ出産できないようになれば、いずれ待っているのは絶滅か。お産がテーマだけど、かなり男性向けな印象の本。 難産故に、人は助け合うようになった、という説があるそうです。僕もそう思いたいなあ。
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二足歩行と脳拡大の代償 ヒトが他の動物に比べてなぜ難産となったのかをコンパクトにまとめた本。 100ページほどなのですいすいと読める。 ヒトのお産を考えるにあたって、要点を押さえた好著である。 著者の専門は人類進化学・考古人類学。『ネアンデルタール人類のなぞ』(岩波ジュニア新...
二足歩行と脳拡大の代償 ヒトが他の動物に比べてなぜ難産となったのかをコンパクトにまとめた本。 100ページほどなのですいすいと読める。 ヒトのお産を考えるにあたって、要点を押さえた好著である。 著者の専門は人類進化学・考古人類学。『ネアンデルタール人類のなぞ』(岩波ジュニア新書)といったジュニア向けの著書もある。 本書は大学で好評だった講義を元にしたものだという。 お産が重いのはヒトだけで、安産で知られる犬はもちろん、野生動物はお産が軽い。チンパンジーやニホンザルといった霊長類ですら、お産で痛がる様子は観察されていない。 こうした違いが生じる理由は、胎児の頭骨と産道の大きさの比による。 直立歩行により、ヒトの背骨はS字に彎曲した。また骨盤は内臓を支える役目を負い、幅が広くなり、底部に筋肉が発達した。二足で歩くため、お尻の筋肉である大臀筋も発達した。さまざまな要因から結果として産道が小さくなってしまった。 骨盤の形状には性差があるものだと思っていたが、これはヒトだけなのだそうだ。進化とともに、少しでもお産を軽くする方向に発達してきたのである。 一方で、胎児の脳は大きくなる。お産の負荷を少しでも減らすために、大泉門・小泉門といった、頭骨が膜だけでつながった部分が発達し、頭が可塑的に小さくなるしくみができたが、いかんせん、それだけでは難産を回避するのに十分ではない。 こういった事情が、ヒトや猿人、多様な動物の骨格や骨盤の図とともに、わかりやすく解説されている。 このほか、古今東西の出産事情も興味深い。 出産時の体位はさまざまであるが、多くは座位や立位だったようだ。現在、日本で背臥位が主流になっているのは、病院での出産がほとんどになったためである。産婦に都合がよいのではなく、介助者が介助しやすい体位なのだ。 帝王切開や無痛分娩についての記述も簡単だがわかりやすくまとまっている。 出産土偶や縄文時代の土器に描かれた出産図も興味深い。 お産についてちょっと考えてみようという際には適度な1冊だろう。
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