資源の戦争 「大東亜共栄圏」の人流・物流 の商品レビュー
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[ 内容 ] 「大東亜」戦争期の東南アジア経済は占領者日本に蹂躙され、「大東亜共栄圏」はその名に反して住民に甚大な犠牲を強いた。 ロームシャは「資源」とされ、命を粗末に扱われた。 また、敗戦の色が濃くなるにつれて日本の輸送手段は破壊され、物資の滞留と廃棄を招いた。 無駄遣いされた資源の実態と住民の無念さに、豊富な聞き取りと一次資料から迫る。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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倉沢愛子『資源の戦争 「大東亜共栄圏」の人流・物流』岩波書店、読了。本書は、東南アジア地域研究者の筆者による「日本の戦時経済政策の分析を、現地の社会の状況分析と突き合わせていくこと」で大東亜共栄圏の実態を明らかにする労作だ。 http://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-028377-9 共栄圏確立の為に実施された経済施策の殆どは、現地の実情や民生の向上とはほど遠いことを本書は丁寧に論証する。本音と建て前の分断のみならず「それだけの犠牲を強いて実行した資源取得政策が、日本の目的にさえかなわなかった」ことには驚く。 資源獲得の為に南方に「進出」したが、その実態は獲得どころではない。住民を餓死・酷死させるほど供出させた食料や資源は、輸送力不足のため現地で投棄されている。抑もプランテーションの東南アジアは食料輸入国なのである。実情を無視した搾取といってよい。 近年、政治家による、戦争を美化・正当化する発言が相次ぐ。そして賛美の拍手が止まない現状。しかし実相をみるとどうか。知人が「大東亜共栄圏」は実のところ「大東亜共“貧”圏なのでは?」と言ったが、それが現実であろう。本書の史料と聞き取りに真摯に耳を傾けたい。
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