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サラジーヌ 他三篇 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2016/02/02

短編も面白いバルザック。コプセックでも思ったけど、芳川さんの訳は読みやすい。もっと色々なバルザックの作品を翻訳して欲しい。

Posted byブクログ

2014/12/29

素晴らしい語り。病気にかかるように、魔法にかかる。熱に浮かされた、奇妙で甘美な夢……。 モームが『世界の十大小説』で「バルザックこそ、私が躊躇なく天才と呼びたいただ一人の小説家である」と書いてたので、ずっと読もうと思っていた。 そして、読んで納得した。精力的でありながら悲劇的、...

素晴らしい語り。病気にかかるように、魔法にかかる。熱に浮かされた、奇妙で甘美な夢……。 モームが『世界の十大小説』で「バルザックこそ、私が躊躇なく天才と呼びたいただ一人の小説家である」と書いてたので、ずっと読もうと思っていた。 そして、読んで納得した。精力的でありながら悲劇的、退廃的でありながら喜劇的。こういうこってりした饒舌体の文章は、読んでいると飽きてくるだろうと思っていたけれど、読めば読むほどすごいという感想を抱いた。 収録作に共通するのは、美への倒錯と皮肉である。すすんでその殉教者に志願しながら、美のために道化を演じている登場人物たち。全ては、張りぼての一夜の夢。けれど、夢を見ることができるだけ、彼らは幸せなのかもしれない……。

Posted byブクログ

2013/09/29

バルザックの短編、『サラジーヌ』『ファチーノ・カーネ』『ピエール・グラスー』『ボエームの王』の4作品を収録。4作品とも芸術家をとりまく物語で、どの作品も幻想奇譚といった趣だ。語り手がいて、昔こんな面白くも不思議な話があったよ、という感じの出だしだが、バルザックの読み手を翻弄するが...

バルザックの短編、『サラジーヌ』『ファチーノ・カーネ』『ピエール・グラスー』『ボエームの王』の4作品を収録。4作品とも芸術家をとりまく物語で、どの作品も幻想奇譚といった趣だ。語り手がいて、昔こんな面白くも不思議な話があったよ、という感じの出だしだが、バルザックの読み手を翻弄するがごとき文章表現により次第に幻想的物語に沈降させられる感覚は、子供の頃に読んだおどろおどろしい怪奇物語(?)の世界を思い出させてくれる。そして、決まって最後は思いもかけない皮肉な結末が待っていて、幻想に一層の余韻を残してくれる。 『サラジーヌ』は、とある不気味な老人にまつわる話だが、美しき少女の絵をきっかけに語られるその話とは・・・。なぜ、恋に盲目な彫刻家の話が始まっていくのか・・・。最も幻想・怪奇趣味に溢れた物語。 『ファチーノ・カーネ』は、千里眼を持つという聞き手に語られる、クラリネット吹きの盲目の老人の昔話。ヴェネチアから始まる老人の若かりし頃のハチャメチャな冒険譚であり、映像化しても見栄えがあるかもしれない。 『ピエール・グラスー』は、才能の無い画家が才能がないことを武器に崇め奉られていく話で、4編の中では最も皮肉と諧謔に満ちた物語。ブルジョワ階層が次第に政治・経済・文化の主体になっていく中で、それに伴う新たな芸術の担い手たちをよく観察し、批判する内容ともなっている。凡庸に幸あれ!という逆説な展開が面白い。 『ボエームの王』は、落ちぶれたが気ままに暮らす伯爵が従順な愛人を気まぐれに操る話と、その伯爵の愛人とその夫である劇作家夫妻がそれに翻弄されながらも実は事態が好転していくという話をパラレルに進行させた構成巧みな物語。他の作品でも実在の人物やその作品の簡単な評論が物語中にセリフとして語られることがママあるのだが、本作品ではそれがとても多く挿入されていて、そうした文学史の流れや時代背景がわかっていないと、セリフの本意を知るにはかなり苦しい。(泣)また、4作品ともいえることだが、登場人物の名前が同一人物であるにも関わらず、頻繁に別の名で呼ばれたりしていて、特にこの『ボエームの王』はそれがはげしい。こうしたセリフには場面特有の機微があるのであろうが、話を縦横無尽に操るバルザックの妙技になかなかついていけず、これもわかり辛くさせている一因となった。(泣)「愛」は強いが故に「結果」をも導いてくれるというイケイケな話が面白かった。(笑) 巻末の『サラジーヌ』における「左右対掌体」の解説は、なるほどそうであったかと思わせる考察であり、いろいろと象徴が埋め込まれていたのが今更ながらにわかったが(笑)、また、4作品ともに「現」から「原」へ、「結果」から「原因」へという2プランの一致を基調とするという物語構造の解説もなかなか興味深いものであった。確かにどの物語も、最終的に2項が対称的に浮かび上がる効果を狙っていたと思われ、バルザックのシニカルな表現と豊かな文化知識と相まって、実はかなり吟味された叙述だったのだなあ。 お気に入りは、『ピエール・グラスー』。

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2013/01/11

【メモ/感想は別で】『ボエームの王』は、相当久しぶりの新訳なんで、たいそうありがたい。 他3篇に関しては、新訳がここ数年で出たばかりなので、別の話を拾い上げてもよかったんじゃないかしら?とも思うけど…(『サラジーヌ』『ピエール・グラスー』は水声社、『ファチーノ・カーネ』は光文社か...

【メモ/感想は別で】『ボエームの王』は、相当久しぶりの新訳なんで、たいそうありがたい。 他3篇に関しては、新訳がここ数年で出たばかりなので、別の話を拾い上げてもよかったんじゃないかしら?とも思うけど…(『サラジーヌ』『ピエール・グラスー』は水声社、『ファチーノ・カーネ』は光文社からそれぞれ新訳が) とはいえ『サラジーヌ』に関しては、水声社版より読みやすいんじゃなかろうかという意見も見かけたので、後で読み比べてみる(けど、確かに岩波版のほうが頭に入って来やすかったかも) 以後つぶやき。 サラジーヌっつーと挙げられるロラン・バルトの例のものは、噂に聞くのみで読んではいないです。

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2012/12/03

ロラン・バルトの批評で有名な短編だが、もともとの話自体がとても面白いのである。バルザックの発想の豊かさと物語の巧妙さを楽しめる1冊。

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2012/11/24

バルザックの「サラジーヌ」という短編が注目されるのは、ロラン・バルトが『S/Z』という著書において詳細な構造分析をおこなったからだ。私がロラン・バルトにはまっていた頃、『S/Z』を読む前に当の「サラジーヌ」を読んでおかなくちゃと思いながら、結局『S/Z』を買わずに過ごしてしまった...

バルザックの「サラジーヌ」という短編が注目されるのは、ロラン・バルトが『S/Z』という著書において詳細な構造分析をおこなったからだ。私がロラン・バルトにはまっていた頃、『S/Z』を読む前に当の「サラジーヌ」を読んでおかなくちゃと思いながら、結局『S/Z』を買わずに過ごしてしまった。 ようやく最近になって岩波文庫で「サラジーヌ」を含むこの短編集が刊行され、ただちに購入したわけだが、実はみすず書房の『S/Z』の巻末には「サラジーヌ」が載っているらしいことを事後に知った。 けれども、バルザックの未知の短編をまとめてよめるわけだからまあいいや。 4つの短編が収められたこの本は、所収のどれもが芸術家の登場する小説集なのだが、芸術そのものが問題となってくるのは「ピエール・グラスー」だけである。私にはこの作品が最も印象的だった。 登場する新進画家は勤勉ではあるが、才能がまるでない。いつも既存の作品の模倣になってしまって、独創性のかけらもないため、師匠に転職を勧められたりしている。 だから画家ピエール・グラスーは二流どころか三流以下の凡庸な作者なのだが、どういうわけか偶然が重なり、金、名誉、地位といった世俗の成功を手に入れてしまうのである。 グラスーの作品に値打ちがないことは、才能のある画家たちには隠しようもないことで、素人をだませている今はいいものの死後にはただちに忘れられる画家であることは間違いない。 けれども「死後にも残る作品の価値」などというのはただの観念であって、自己が死んでしまえばあとのことなんかどうでもいいや、という観点から言えば、そんなことは問題にならないのである。 私は無能なアマチュア作曲家で、くだらないクズばかり作っているが、グラスーとちがって「成功」なんぞしていない(それが普通なのだが)。 そしてもうひとつ彼と違うのは、自分の作品のクズぶりを十分に知っていて、その事実に永遠に苦しめられている点だ。グラスーは才能はないが鑑識眼はあると描写されているのに、自己の作品の無価値さに苦悩していない。これは不思議である。不思議だが、そういう人もいるのかもしれない。 やはり淡々とした素朴な生き様というものに、私は憧れながら隔絶を知るのである。

Posted byブクログ