なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか の商品レビュー
1993年、わずか100日間で人口の一割、80万人が農作業用のナタ(マチェーテ)で虐殺されたルワンダのジェノサイド。その現場に立ち会った国連平和維持部隊長官の手記。 背が低く農耕中心のツチ族。背が高く放牧で暮らしていたフツ族。植民地時代、ベルギーは少数派のツチ族を優遇することで...
1993年、わずか100日間で人口の一割、80万人が農作業用のナタ(マチェーテ)で虐殺されたルワンダのジェノサイド。その現場に立ち会った国連平和維持部隊長官の手記。 背が低く農耕中心のツチ族。背が高く放牧で暮らしていたフツ族。植民地時代、ベルギーは少数派のツチ族を優遇することで広大なプランテーション経営を実現した。独立後ほどなくして双方は内戦に陥る。1993年、乏しい予算の中停戦監視団として送られた国連部隊の人数はわずか数百人(ちなみにダルフール危機の国連派遣軍は1万8千人)。その長がカナダ軍出身のダレール氏だった。増員の願いもむなしく、ついに山刀を手にしたフツによるツチの無差別襲撃が始まる。 食糧も水も薬もない。押し寄せる避難民たち。状況打開のためには虐殺の当事者との交渉の場にも出なければならない。長官が「かれらを銃撃してしまう極度の誘惑にかられるような場合を想定して、ピストルから弾丸を抜き」(P.319)、ついこの間まではギャングのリーダーだった民兵たちと向かい合う。彼は「悪魔と握手してしまったように」感じる(P.320 )。 状況が悪化する中、国連はPKO部隊の撤退を論議し始める。今ここで撤退すれば虐殺は加速する。 「私は自分の立場をはっきりさせた。私はここを去らない。私たちは、大惨事の中にいるルワンダ人を見捨てることはできないし、私たちの保護下にいる数千もの人びとを見捨てることはできない」(P.271)(そしてダレール氏は戦後、部隊を危険にさらしたとして裁判に立たされることになる)・・・。 自分が多くの過ちを犯したことを認めつつ、ダレール氏は述べている。 「軍人として、私たちは自国の主権を守るために山中を移動するのはいつものことである・・・(しかし)将来私たちは、『国益を越えて』、人類のためにリソースを投入し、血を流す覚悟をしておかなければならない」(P.484)(ルワンダではベルギー、スリランカなどの将兵がダレール長官の下で戦死している) 誤解なきようにいうのだが、私は過去の反省、憲法の制約などを理由に自衛隊の活動を限定すべき、という意見はあってしかるべきと思う。PKO拡充についても賛成でも反対でも自由に意見はあるべきだ。しかし、こうした活動に積極的な人々が「戦争が好きな連中」で反対の自分たちは平和主義者だ、みたいな視野狭窄には陥りたくない、私自身はそう考えている。
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人権問題からではなく、PTSDに興味があり、手に取った本。PKO部隊として派遣された自衛隊員の中にも同じ症状があるとの事。 読み始めて、国際貢献と各国の国益の問題の大きさに改めて気づく。 色々な切り口から考えが深まる本
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「人権のためのリスクなき戦争というものは道徳的矛盾である。人権という観念は、すべての人間の生命が平等な価値を持つということを前提としている。リスクを免れた戦争では、私たちが介入して救い出そうとしている人々の命よりも、私たちの命のほうが重要だと考えられているのである」ルワンダでの司...
「人権のためのリスクなき戦争というものは道徳的矛盾である。人権という観念は、すべての人間の生命が平等な価値を持つということを前提としている。リスクを免れた戦争では、私たちが介入して救い出そうとしている人々の命よりも、私たちの命のほうが重要だと考えられているのである」ルワンダでの司令官としての経験から言えば、まさにその通りだ。 国連ルワンダ支援団UNAMIRの指揮官ロメオ・ダレールが93年8月17日に調査隊としてルワンダを訪れ、翌年8月20日に任務を離れ帰国するまでの1年間ロメールの要請は国連をはじめとする国際社会には届かず、750万のルワンダ人の内80万人が虐殺され、210万人が難民として周辺国へ逃げ出した。 ルワンダは旧ドイツ領でヴェルサイユ条約の結果ベルギーが支配することになった。西にザイール(現在はコンゴ民主共和国)、北はウガンダ、東にタンザニア、南にブルンジで面積は四国よりは大きく中国地方よりはせまい。アフリカで最も人口密度が高い地域でもある。問題のツチとフツはルワンダ、ブルンジ、ウガンダとコンゴの一部に住みドイツ人やベルギー人は比較的色の白いツチを支配者層として植民地支配を行ったがどうやら人種的には同じくバンツー族系である。宗教的にはカトリックを中心にキリスト教系が主流で、特に資源もないこの国については旧宗主国のベルギーと利権のあるフランス以外はほとんど興味を持たなかった。 国連PKOは当時の事務総長ブトロス=ガリのPKO改革に則り旧ユーゴ、ソマリアと派遣していたが93年10月に起こったモガディシオの戦い「ブラックホーク・ダウン」で米兵の遺体が引きずり回される様子がCNNに流されたことからクリントン政権はダメージを受けPKO参加に消極的になっている。大国が参加しないPKOには予算も人員も資材も充分回らずUNAMIR参加核国の思惑もいろいろだった。例えばバングラデシュは訓練されていない兵を派遣しており他人の懐で訓練と資材供給を受けるのが目的で、少し危険な任務に就いてはダレールの命令を拒否する。 ベルギーとフランスは旧政府に軍事顧問を派遣しており、現在は大統領のポール・カガメはUNAMIRにはそれなりに協力的であったがベルギーやフランスは敵視している。元の軍事顧問が後に駐留したフランス軍の指揮官になったのを見ればそれも理解はできる。 ハビャリマナ大統領の乗った飛行機が撃墜された4月6日以降3ヶ月に渡ってフツによるツチ虐殺が続いた。PKO増員を求めるダレールの意見は無視され後に虐殺の様子がニュースになって初めて増員されたが既に遅かった。ダレールにできることは限られており、最初の衝突時に10人が死亡したベルギー軍派遣隊は撤退したが、後にベルギーはダレールに責任を押し付けようとしている。 ハビャリマナ亡き後フツの軍隊を率いたバゴソラはダレールと交渉しながらも彼らの代表が当時の国連理事国として席を持っており、ベルギー軍やPKOの撤退を見越して裏ではフツによるツチの虐殺を支援していた。一方で軍事的に優位に立つカガメのRPFも虐殺を止めることよりも自らの軍事的優位性を確保することを優先していた様だ。比較的統率が取れていたRPFについてもフツに対する復讐が数多く行われている。 殺されたのはツチだけではなく穏健派のフツもツチ同様にターゲットにされた。そしてこの虐殺の実行舞台にはまだ10代の少年兵も多く関わっている。ジャレッド・ダイアモンドの文明崩壊によるとあるフツの村では主に家族間の財産争いで5%の住民が殺されている。民族間の内戦だけが原因では無かった様だ。それでもラジオによるプロパガンダの効果は大きかったらしく、ダレール自身も攻撃のターゲットにされた。 結局、虐殺の責任そのものはルワンダ人にあるものの、虐殺を防げなかったのは大国がルワンダに興味を持たなかったからと言っていいだろう。ルワンダを救うために自国民にリスクを負わせる価値はないとしたのだ。その中でダレールの舞台は人数も資材も足りず、先に発砲されるまでは発砲出来ないと言う指令を受けている。日本はよく資金は出すが人員を出さないと言う批判が見られるが、大国もかなりエゴで動いていてPKO局にも安保理事会を超える権限はない。資金だけを出すのも充分な貢献と思える。 原題はShake hands with devil〜The failure of humanity in Ruwanda、虐殺実行部隊の幹部を前にして撃ち殺してしまいたくなる気持ちを我慢しながら、治安維持に協力を求めるしか無かったダレールのことでもあり、バゴソラを黒幕と知りつつも派遣しなかったアメリカや舞台を撤退させようとした国連のことでも有る。それにしても500ページの2段組は重くて長い。
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ロメオ・ダレールは元カナダ軍中将であった。その彼が帰国後、自殺未遂をした。ダレールはルワンダという地獄に身を置きながら、国連の政治に翻弄された。彼は虐殺を見守るしかなかった。真の地獄は目撃者をも間接的に殺するのだろう。ダレールは生還した。ルワンダからも、自殺からも。タフという言葉...
ロメオ・ダレールは元カナダ軍中将であった。その彼が帰国後、自殺未遂をした。ダレールはルワンダという地獄に身を置きながら、国連の政治に翻弄された。彼は虐殺を見守るしかなかった。真の地獄は目撃者をも間接的に殺するのだろう。ダレールは生還した。ルワンダからも、自殺からも。タフという言葉はこの男のためにある。 http://sessendo.blogspot.jp/2014/04/pkopko.html
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ルワンダ大虐殺時、国連のPKO軍の司令官として、 現地に滞在していたロメオ・ダレール氏の著書。 当時の様子が事細やかに書いてある。 国連の動きの遅さ、虐殺の様子、各国の利権争い。 結局のところ、ルワンダ大虐殺はルワンダの"内戦"ではなくて、 アメリカ・フラ...
ルワンダ大虐殺時、国連のPKO軍の司令官として、 現地に滞在していたロメオ・ダレール氏の著書。 当時の様子が事細やかに書いてある。 国連の動きの遅さ、虐殺の様子、各国の利権争い。 結局のところ、ルワンダ大虐殺はルワンダの"内戦"ではなくて、 アメリカ・フランス・イギリスによる戦争だった。 自分が信じて入った組織が、実はまやかしのもので、 誰も動いてくれない、そして、自分も何も出来ない。 目の前でただ、人が殺されているのを見ているだけ。 どれほどの苦痛なのか、どれだけ想像しても分からない。 人の価値は、不平等だという事実を突付けられるのは、 どれほどのものなんだろう? でも、それでも、ルワンダの現状を伝えようと必死になっていた、著者。心から尊敬できる、そして、なんとしてもこの人にお会いしたいと思った。僕も行動しよう、とアフリカに暫く行けなくなった今でも、出来ることがあるんだと思い知らせてくれた一冊。
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Shake Hands with the Devilの邦訳。4年前に映画を見た後、自分で訳して読んだ本。その衝撃によって私の人生を変えた。
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とても重い話。 国連軍としてルワンダに派遣されたカナダ人司令官の、虐殺が起きるまでと起きた後のかなり細かい展開がかかれています。かなり長いし書き方が退屈で、訳もいまいちなので読んでいてつらいところがありますが、主人公のフラストレーションとか絶望感がとても伝わってきます。 長いので...
とても重い話。 国連軍としてルワンダに派遣されたカナダ人司令官の、虐殺が起きるまでと起きた後のかなり細かい展開がかかれています。かなり長いし書き方が退屈で、訳もいまいちなので読んでいてつらいところがありますが、主人公のフラストレーションとか絶望感がとても伝わってきます。 長いので8割くらい読んでやめちゃいました。
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訳が読みにくかったし、かなり長かったので大変だったけど、なんとか読めた。読んで恐ろしいとか辛い気持ちになるけど、それでも読んで良かった。
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国連平和維持部隊の司令官としてルワンダ虐殺に立ち会うことになったカナダ軍人、ロメオ・ダレールの手記。 原題は「悪魔と握手する――ルワンダにおける人道主義の失敗」。 これでは日本では内容が伝わりにくいので邦題はこうなったらしい。 読む前は傲慢なタイトルだと思ったけれど、内容をよくあ...
国連平和維持部隊の司令官としてルワンダ虐殺に立ち会うことになったカナダ軍人、ロメオ・ダレールの手記。 原題は「悪魔と握手する――ルワンダにおける人道主義の失敗」。 これでは日本では内容が伝わりにくいので邦題はこうなったらしい。 読む前は傲慢なタイトルだと思ったけれど、内容をよくあらわしている。 「救う」つもりでいった人が、救おうとしない世界各国に足を引っ張られる話だから。 国連を舞台にした世界のパワーゲームが、ルワンダを舞台にした政府内のパワーゲームが、部隊の中のパワーゲームが延々と続く。 その間に緊張はどんどん高まり、虐殺が進行する。 ダレールは国連と現場の温度差にいら立つけれど、ダレールとRPF(反政府軍)の間にも温度差はある。(もちろんRGF(政府軍)との間にも) たとえば内戦を回避するために政府軍に攻撃するなと要請する。 でもRPFに近いツチはもう虐殺されている。 攻撃するなということは大人しく殺されろということに等しい。 そりゃ受け入れられないだろう。 他人の国を大人しくさせたい国連をはじめとする部外者が望む「平和」と、自分の国を良くしたい当事者が目指す「平和」は同じではない。 読みながらずっと、南京のジョン・ラーベhttp://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4062088665が頭にちらついた。 軍人と民間人、救いに行った人と居合わせた人、立場は違うけれど、どちらも「どうでもいい場所」で虐殺を見て、本国に支援を訴えても孤立して、とにかく目の前の人を助けなきゃと必死で動く。 上からだけど助けてやりたい気持ちは本物で、責任感と能力があって、個人としては善人っぽい。 「南京の真実」は普通に読めたけれど、こちらは慣れるまで読みにくかった。 自分と違う考えを語られたときに、ラーベは「昔の人だから」と自分から切り離して考えられる。当時のナチ党員のドイツ人はこう考えたんだなと興味深く読める。 だけどダレールは今の人だから、反論したくなってしまう。 特に政治の部分は、この人はこういう意見なのだといったん距離を置いて飲み込む前に反射で抗いたくなってしまう。平静に読めない。 それでも虐殺が始まってからは体験に圧倒されて比較的素直に読んだ。 (休憩を入れて息継ぎをしつつ、ゆっくりとではあるけれど) はじめから平和を目指して出かけて行った分、そして頼るべきホームが全然使えないことを理解してしまった分、つまり「できない」ではなく「できるのにできない」分だけダレールはラーベよりきつい状況だったかもしれない。 ラーベの無力がしんどくないわけでは決してないけれど。 ダレールは軍を除隊したあとで政治に携わっている。 この人はパワーゲームがしたいんじゃなくて、まつりごとをどうにかしたいんだろうな。 翻訳文が少々読みづらい。たまに言葉の選び方が違うような気がする。「儀式(セレモニー?)」「強制移住(逃げざるを得ない状況で自発的に逃げている人?)」など
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