勝てないアメリカ の商品レビュー
2001年のニューヨークでの大規模テロを受けてアメリカはアフガニスタン、そしてイランへと派兵し戦争を継続してきました。軍事力の質・量では圧倒的な米軍が大きな犠牲を払っても勝利を得られない現実を様々な角度から報告する1冊です。4部構成となっており、1章は帰還兵が直面するTBI(外傷...
2001年のニューヨークでの大規模テロを受けてアメリカはアフガニスタン、そしてイランへと派兵し戦争を継続してきました。軍事力の質・量では圧倒的な米軍が大きな犠牲を払っても勝利を得られない現実を様々な角度から報告する1冊です。4部構成となっており、1章は帰還兵が直面するTBI(外傷性脳損傷)と呼ばれる爆風によるショックが生み出す脳機能への影響、2章は米軍と戦争を報道するメディアとの関係、3章は著者によるアフガニスタン最前線での従軍取材記録、4章はアメリカが本格的に導入した無人機による弊害、について詳しく述べられています。 装備がより充実し兵士の死傷率が下がる一方、以前であれば命を落としていたような衝撃を受けても命を落とさなくなった結果、慢性的な頭痛や疲労、記憶障害を併発し、自殺の増加や社会復帰できない帰還兵が激増しているという現実は、戦場に兵士を派遣すれば避けることができない事実であると感じます。 本書のタイトルにもありますが、質・量で圧倒的なアメリカ軍がアフガニスタン、イラクのテロ組織を相手に決定的な勝利を得られない構図として、戦う相手が正規軍でなく、戦場とそれ以外の区域の境界が明確でないことが挙げられています。 現地に駐留するアメリカ軍としては、現地民間人の世論は何としても味方につけて「アメリカ軍はテロ組織から民間人を守る」という意識づけを試みますが、民間人に紛れ込んだ武装組織メンバーからの攻撃を繰り返し受けるうちに、民間人の誤爆や巻き添えを生み、次第に敵視されるようになります。 これら現地に派兵することで発生する諸問題を解決する切り札として投入された無人機ですが、宣戦布告もなく、また現地政府に無断で武装組織の要人を殺害する手法は、主権侵害との誹りや、無人機での誤爆も引き起こし、アメリカに対する反感を増長する結果をもたらしています。特にCIA主導の運用では、誰をどういう容疑で殺害したのかといった重要な事実が安全保障上の機密として公開されないケースが多く、恣意的な運用を疑われる温床となっており、これは今後、中国が無人機を広く運用した場合に付け入る隙を与えているとも言えます。 アメリカとしては武装勢力を一掃した後、現地の人による統治、治安維持の道筋をつけてテロリストの温床とならない国づくりまでを目指したのですが、GHQが日本の民主化に成功したのとは異なり、長年紛争地域であったアフガニスタンでは国としての成り立ちが脆弱で、識字率の低さや、道路などのインフラの不足など様々な問題から成果は上がっていない現実が述べられています。 本書は2012年に発売となっており、その後のイスラム国の盛衰や、アメリカとイランの対立には言及していませんが、本書で危惧されている事がまさに現実となっている感があります。 また、最前線の従軍取材紀は著者が乗車したアメリカ軍装甲車が地雷を踏み、その爆発に実際に遭遇した様子など、非常に臨場感あふれるルポでした。 著者はジャーナリストとして数々の賞を受賞した毎日新聞の記者であり、本書も根気よく様々な情報源にあたり執筆されている印象を受けます。本書で取り上げられているアメリカ、イラン、アフガニスタンだけではなく「持てる国」と「持たざる国」の対立の構図を理解するにあたり、非常に情報量も豊富で説得力のある1冊であると思います。
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長期戦に持ち込めば持ち込むほど、「持てるもの」は費用や兵力がかさみ、反戦世論が高まる。これに対して小規模な戦略で臨む「持たざる者」は失うものも比較的少ないので時間が味方すると言う。タリバンなど反政府勢力は、そのことを十分に解し、最大限に使うつもりのようだ。119-120p 会合...
長期戦に持ち込めば持ち込むほど、「持てるもの」は費用や兵力がかさみ、反戦世論が高まる。これに対して小規模な戦略で臨む「持たざる者」は失うものも比較的少ないので時間が味方すると言う。タリバンなど反政府勢力は、そのことを十分に解し、最大限に使うつもりのようだ。119-120p 会合に居合わせたアフガニスタン国軍の拒んだり大39歳がつぶやいた「この国は戦争続きだ。人々は国家の未来より、まず自分の未来を考える」。…政府も警察も長らく存在しなかった地域の村村に、突然、政治だ選挙だと言って急ごしらえの「中央政府」を作っても、それがどれほど人々の信頼を集めるだろうか。138p 一般に、アフガニスタンで1人の青年に戦闘を教え、武器と給与を与えた場合の1ヵ月の費用は200から500ドル(16,000円から40,000円)。アフガニスタン駐留の米兵が、1ヵ月に消費する食品にも満たないほどだ。…IETは民家の台所で作ることができるほど簡単な作りで、安いものでは1個10ドル程度で製造できる148p 兵士の戦士と言う犠牲があるからこそ、米国はこれまで国民も政治家も、戦争には慎重になってきました。多数が死傷すれば、派遣に賛成した議員は選挙で負けるからです。けれどもパキスタンでの空爆は(米兵が死なないので)米議会で審議されず、戦争と言う認識さえ持たれていません。これは無人機戦争の拡大が生み出した民主主義社会の破壊です210p オバマ政権は、地上部隊によるCOINが充分進まず、人心をつかめていない中、空爆戦略を中心とするCTを同時並行で進め「成果」を見せようと急いだ。…だが正確な情報がないままの空爆は誤爆を生み、そのことで反米感情はさらに高まり、地上での「人心をつかむ競争」をさらに不利にした。これこそがまさに、オバマ政権の陥った悪循環のスパイラルだ。223-4p
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MRAPや軍病院などゲーツさんの自伝で見た懐かしい単語が出てきた。現場でのあるいは帰国してからの米兵の苦しみが生々しい。外傷性脳挫傷TBIは初めて知った。実際に対テロ戦争の現場を取材してIED攻撃を体験しており、その話も面白い。
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ゼミ同期の毎日新聞大治記者の渾身の作品。 アメリカはもちろんのこと、戦地であるアフガニスタン、隣国のパキスタンまで足を運び非対称戦争の持つ意味や今後予想される未来まで、事実に裏打ちされた確かな文章で読む者を感心させた。
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時間切れ タイムリーだった ISとのこれまでのこと少しわかります アメリカに巻き込まれるのはごめんです
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テロとの戦いと称してアメリカはアフガンに軍隊を派遣している。 戦地から戻ってきた兵士たちの多くがTBIという見えない疾病に悩まされているという。外傷性脳損傷。記憶障害や光に過敏に反応する、イライラなどの症状が出るとのことだ。そして、このTBIの原因と考えられているのが、IEDだと...
テロとの戦いと称してアメリカはアフガンに軍隊を派遣している。 戦地から戻ってきた兵士たちの多くがTBIという見えない疾病に悩まされているという。外傷性脳損傷。記憶障害や光に過敏に反応する、イライラなどの症状が出るとのことだ。そして、このTBIの原因と考えられているのが、IEDだという。即席爆破装置のことで10ドル程度で作れる安価な小型爆弾であり、圧倒的な軍事力を持つ米軍に対して絶大な効果をあげているらしい。タリバンらはこの安価な爆弾をあちこちに仕掛けて米兵を苦しめている。昔であれば、爆破で死亡するところが、ヘルメットや防護服の進歩により死ななくなったが、目に見えない障害を受けているという。それがTBI。 このようなゲリラ戦を称して非対称戦争というようだ。軍隊と軍隊の正面からの戦争ではなく、軍隊と非軍隊の戦争、ということか。正規の軍隊とゲリラの戦いは、泥沼化しIEDのような弱者によるカウンターが強者が「勝てない」状況を作っている。 最近は、無人兵器などを投入されるようになったが、それでもやはり非対称戦争は終わることがない。 本書は、それだからどうだとかどうすべきという提言はしていない。簡単に答えがわかるならとっくに米軍もやっているのだ。 著者は従軍取材をしていて、兵士の生の声も伝えてくれている。右傾化し国防軍がなんだといってる日本において、こうした戦争の実際のようなものを多く吸収する必要があると思った。
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米軍はあれだけベトナム戦争で苦労したのに2007年になる直前まで不正規戦、戦闘員と非戦闘員との区別がつかないような戦いを行うマニュアルもなかったそうだ。しかし、地元の役に立ち、住民の支持を受けながら戦いを終わらせると言うが、頼んでもないのにテロ撲滅という題目でやってきて戦争を始め...
米軍はあれだけベトナム戦争で苦労したのに2007年になる直前まで不正規戦、戦闘員と非戦闘員との区別がつかないような戦いを行うマニュアルもなかったそうだ。しかし、地元の役に立ち、住民の支持を受けながら戦いを終わらせると言うが、頼んでもないのにテロ撲滅という題目でやってきて戦争を始めて勝つことなど、どう考えてもできそうにないものだが。
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アフガニスタンでの従軍取材、装甲車やヘルメットの発達が却って路上爆弾の爆風の圧力による脳障害を引き起こしている、といった話が中心だけど、この本で個人的に興味を引いたのは無人機による偵察、空爆、暗殺がかなり日常的にアメリカ軍では行われていること。無人機の操縦や訓練の様子も取材の内容...
アフガニスタンでの従軍取材、装甲車やヘルメットの発達が却って路上爆弾の爆風の圧力による脳障害を引き起こしている、といった話が中心だけど、この本で個人的に興味を引いたのは無人機による偵察、空爆、暗殺がかなり日常的にアメリカ軍では行われていること。無人機の操縦や訓練の様子も取材の内容も含まれている。 現代の戦争を支える中心技術はロボット、インタフェース、VR。 インタフェースやVRの研究者がロボット関係の研究をするという最近よく目にするトレンド(?)もアメリカの国防事情と無縁ではないのかな。 まぁ無人機自体の技術はかなり昔から軍の支援で研究が盛んに行われてきていた分野ではあるのだろうけれど、 2~3年前にCHIというインタフェース分野の学会に行ったときに軍服姿の陸軍関係者が参加して熱心に情報収集していたのを思い出した。
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著者が毎日新聞のワシントン特派員であった時に、 ①負傷兵へのインタヴューを通じて外傷性損傷という見えない傷 ②従軍取材でみた基地の日常を通じてメディアがうまく米政府に利用されているか?のレポート ③従軍取材時に即席爆破装置による被爆体験と「持てる者」と「持たざる者」の間で繰り広げ...
著者が毎日新聞のワシントン特派員であった時に、 ①負傷兵へのインタヴューを通じて外傷性損傷という見えない傷 ②従軍取材でみた基地の日常を通じてメディアがうまく米政府に利用されているか?のレポート ③従軍取材時に即席爆破装置による被爆体験と「持てる者」と「持たざる者」の間で繰り広げられる泥沼化する非対称戦争の問題点の指摘 ④ロボット時代の幕開けにより無人偵察機&爆撃機による戦争の意味の変容が民主主義では止めようがないほど暴走していることを通して「終わらない戦争」の始まり などを克明に記述した非常に興味深いルポです。 個人的には、ノーベル平和賞をとったオバマ大統領に対する評価が、軍人であったセオドア・ルーズベルト大統領に近い非常に戦争に積極的であるとの記述が、積年の疑問に答えてくれました。 おもにアフガニスタンとの戦争を中心に、イラク戦争、パキスタンへの爆撃についての問題点も的確にまとめられており一読に値する一冊です。
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戦争論の世界では、非対称の戦いを制するのは情報だといわれる。米軍はこの情報戦に勝つために、従軍制度を新たな視点からとらえなおした。 アフガニスタンの米軍基地では、アマゾンでの商品購入やらあめりかのバーガーショップなどがあって、アメリカと同じ環境にするようにしていた。一番人気の施...
戦争論の世界では、非対称の戦いを制するのは情報だといわれる。米軍はこの情報戦に勝つために、従軍制度を新たな視点からとらえなおした。 アフガニスタンの米軍基地では、アマゾンでの商品購入やらあめりかのバーガーショップなどがあって、アメリカと同じ環境にするようにしていた。一番人気の施設はインターネットと電話。 軍事革命は少数の兵力で地上の大部分を破壊することも容易にした。 無人機による誤爆の大半は誤った情報によるものだった。 無人という技術がかつて民主主義の原則とされてきた国家としての意思決定のプロセスをどれほど省略してしまうか、そしてかつては戦争と呼ばれたものを、まるでそうではないかのように見せてしまうのか、そのことを考えると非常に問題を感じる。
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