誰も書かなかった世界経済の真実 の商品レビュー
同志社大学大学院の浜矩子先生が、過去の経済政策の取り組みを紐解き、現在のTPP、FTA、EPA問題を考察する。 TVや新聞でも経済の話題は毎日取り上げられるが、どうもボクなりに腑に落ちないことが多かった。いまの経済の問題は何で、具体的にどういう課題があるのだろう。だから、当時の...
同志社大学大学院の浜矩子先生が、過去の経済政策の取り組みを紐解き、現在のTPP、FTA、EPA問題を考察する。 TVや新聞でも経済の話題は毎日取り上げられるが、どうもボクなりに腑に落ちないことが多かった。いまの経済の問題は何で、具体的にどういう課題があるのだろう。だから、当時のボクは本をいろいろ読んでみた。だけど、本屋に平積みしている本でも、まったく反対のことを言っている本が同じ棚に並んでいる。異なる意見があるのは理解できるが、いったいこれはどうしたことだろう。そんなもがきのなかで浜先生の本と出会ったと記憶している。ボクなりにしっくり馴染んだ記憶がある。だから今では、浜先生は、経済分野のボクのガイドの一人だと思っている。 本書で浜先生は、過去の世界経済の枠組みを紐解く。 1.1995年当時のWTO 2.1948年当時のGATT 3.1930年代のブロック経済政策 これらを踏まえて、現在のTPP、FTA、EPA問題を透かしてみる。 「はじめに」にある議論が面白い。本書のタイトルを決めるに当たって、「通商」と「通貨」を比較したという話しだ。辞書を引くと「通商」は、「外国と商取引をすること。交易。貿易」とある。一方で「通貨」は、「流通手段・支払い手段として機能している貨幣。銀行券・補助貨幣などの現金通貨のほかに、預金通貨も含まれる」とある。 出版社としては、「通商」では本が売れない。「通貨」にしたい、というのである。つまり、モノの取引を意味する「通商」よりも、カネのやり取りに関わる「通貨」の方が、いまや人々の関心を強く引き寄せるらしいのだ。浜先生は、「ひょっとすると、この問題自体が本書のテーマの核心部分に直結しているのかもしれない」と言っている。ボクもそう思う。 そもそもカネのやりとりは、モノを買ったり売ったりする際の手段だ。経済は必要だったり、欲しいモノがあるから、別のモノと交換したり、手段としてのカネでやりとりをする。だが、今の時代はモノが必要だったり、欲しいのではなく、カネが目的になっている時代なのかもしれない。カネ余りの時代だ。これは、ボクが腑に落ちなかったところの琴線に触れている点だと思う。 浜先生は、「貿易は分かち合いである」という。競い合いながらも調和する、共生しながらも切磋琢磨する。そのような関係が、本来の経済を生み出すと考えている。逆に言えば、現在のグローバル経済には、決定的にこれが欠けていると見る。 だが、本書の弱点は、その対抗策が示されていない。そこが浜先生の弱いところだと思う。だからこそ、浜先生の次の提示を期待したい。
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「通貨」、すなわちマネーがらみの本は売れるが、「通商」を主題とした本は売れないとのことで、タイトルをつける際には、出版社とひと悶着あったらしい。 TPPがこれだけ話題になっているのに、確かに不思議といえば不思議。 そういえば、「通商摩擦」のような言葉をニュースで聞くこともなくなっ...
「通貨」、すなわちマネーがらみの本は売れるが、「通商」を主題とした本は売れないとのことで、タイトルをつける際には、出版社とひと悶着あったらしい。 TPPがこれだけ話題になっているのに、確かに不思議といえば不思議。 そういえば、「通商摩擦」のような言葉をニュースで聞くこともなくなった。 経済がグローバル化したことで、貿易や生産のあり方が大きく変化したからかもしれない。 そんな現代に、著者が危惧するのは、現在進行形のTPPやFTA,EPAが過去来た道であるということである。 それは、1930年代のブロック経済主義から、自国の保護貿易政策まで、自分たちさえよければいいという考えから、各国が内向きになり、最終的には戦争に突入するといった過去の歴史である。 このグローバル化した現代において、まさかとは思うが、TPPへの先進国の関心の寄せ方は不気味でもある。 そこで著者が注目するのは、これまた最近めったに耳にすることのない「WTO(世界貿易機関)」。 恥ずかしながら知らなかったのだが、その成り立ちは、前身のGATTにおいて、第2次大戦を導いたブロック経済への反省から来ているという。 関税障壁をなくし、「自由・無差別(=どの国とも公正な条件)・互恵」を理念として掲げる。 GATTには、自由化が完全雇用の目標を阻害する場合は、完全雇用を優先するという規定まであったらしい。 WTOは2011年に事実上停止状態になっているらしい。 WTOがうまくいかなかった原因は、各国の基準とするものがどこまで公正なのかという判断が難しくなったこともあるという。 例えば、比較的あたらしいテーマである、環境・健康・人権などの考え方は、国々によって随分違う。 しかし、それゆえに、すでにグローバル化してしまった現代において、WTO的な公正さの追求が必要で、TPPのような動きは、反時代的な危険な動きなのかもしれない。 グローバルサプライチェーンで成り立つ現代に、通商というテーマはしっくりこないものなのかもしれない。 しかし、TPPのような動きがある昨今、「通商」を巡って世界がどうなったのかは、よくよく過去の教訓から学ばないといけないと感じた。
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※このレビューにはネタバレを含みます
2013/07/12:読了 ベース 通商の面から、FTAやTPPなど、世界経済の動きをとらえている。 最後 シェアの意味が、奪い合いから、分かち合いになっていかなければ、世界はなりたたなくなる。
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直接お会いしたこともないのに こんなことを言ってはいけないのだろうけど、 ちょっと苦手です。 前回 「通貨」を読んだときもそう感じながら読んでました。 今回もその感じを持ったままだったので 結果的に頭に入らなかった・・・・。 本の構成としては面白かったです。 現代から 徐々に...
直接お会いしたこともないのに こんなことを言ってはいけないのだろうけど、 ちょっと苦手です。 前回 「通貨」を読んだときもそう感じながら読んでました。 今回もその感じを持ったままだったので 結果的に頭に入らなかった・・・・。 本の構成としては面白かったです。 現代から 徐々に過去にさかのぼって 最後に現代に戻ってくる。 それに「通商」なんてキーワードで 世界を見たこともなかったから・・・・ なかなか 混沌とした時代になってきたなあと 感じるしだいです。
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