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洋食屋から歩いて5分 の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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2013/03/20

エッセイや短編小説が並ぶ。 片岡さんがご自身のコーヒーの淹れ方を書いている。これははじめて聞く話で、興味深かった。 日本人でコーヒーに凝る人には、どこか茶道のように作法を感じさせるところがある。儀式的とさえ思える。究極とか至高とかを指向し、これがベストに近い方法だと主張してい...

エッセイや短編小説が並ぶ。 片岡さんがご自身のコーヒーの淹れ方を書いている。これははじめて聞く話で、興味深かった。 日本人でコーヒーに凝る人には、どこか茶道のように作法を感じさせるところがある。儀式的とさえ思える。究極とか至高とかを指向し、これがベストに近い方法だと主張しているような。 ところが、片岡さんのコーヒーの淹れ方は違う。シンプルであり合理的であり、実用的だ、と私は思う。だからこそ、毎日数杯のコーヒーを淹れるにしても、それほど面倒にはならない方法だ。とってもいいと思う。 ただし、コーヒー通を自任する方々に、この方法はどうだろう? 少なくとも、クリアなコーヒーを好む方には適さないかもしれない。 こんなふうに、ただ単に「コーヒーを淹れる」というあまりに日常的な行為から片岡流をみるだけでも、片岡さんの生き方の基本が覗けるようで面白い。

Posted byブクログ

2013/01/24

片岡義男は私生活の匂いがまったくしない。それ以前に年齢さえ見当がつかない。80年代、書き飛ばして作品が青春そのものだったから、僕を含め多くのファンはあの時代から「瞬間冷凍」されたまま。まぁ、あの当時だって、何歳なのか気にはしていなかったが。現在72歳。びっくりである。すっかりおじ...

片岡義男は私生活の匂いがまったくしない。それ以前に年齢さえ見当がつかない。80年代、書き飛ばして作品が青春そのものだったから、僕を含め多くのファンはあの時代から「瞬間冷凍」されたまま。まぁ、あの当時だって、何歳なのか気にはしていなかったが。現在72歳。びっくりである。すっかりおじいちゃんである。ということは角川文庫のあの赤い背表紙の書き下ろしを連発していたのは、40歳前半だったことになる。 さて、本書は食に関するエッセイ。とは言え、どこぞのコレが旨い!なんてことは一切出てこない。片岡義男特有のドライな筆致は不変。それゆえ読んでいて思わず生唾が湧いてくるような生理的欲求は薄く、静物の描写のようである。片岡義男といえばアメリカ文化に造詣が深いだけに吉田類がいかにも好みそうな居酒屋について饒舌に語られると妙に居心地が悪い。椎名誠なら「風呂にざんぶと浸かり、待望の生ビール大ジョッキをつかんだ。ワッシワッシと飲んだ後に出るブワァ~。これがあるから、冬でも生ビールなのだ」となるが。作家によって居酒屋ひとつを取ってもこうも違うかと思う。シズル感に欠ける中でコーヒーは無性に飲みたくなってくる。とりわけ喫茶店で飲みたいと思わせる。「コーヒーに向かってまっ逆さま」というエッセイは片岡義男節全開である。作家の田中小実昌との一夜の話。60年代、片岡義男はテディ片岡と名乗っていた。初秋の夕方、新宿駅地下通路で田中さんと偶然に会い、船橋のストリップ小屋へ、その後再び新宿に戻り、何軒もハシゴし、朝まで過ごすいうお話。事実を下敷きにしながらフィクショナルに仕立て上げるテクニックに名人芸の趣を感じる。 「食べ物をめぐる記憶」のページを繰りながら、そこにはかつてのマッチョな片岡義男は無く、「恋は遠い日の花火」のコピーよろしく「老い」を程よく漂わせた枯れた片岡義男が佇む。

Posted byブクログ

2013/01/01

年をまたいで読んだ本の一冊。食にまつわるエッセイ集なのだが、最後に収められている「真夜中にセロリの茎が」(書き下ろし)が、創作上の苦労を知ることができて一番面白かった。

Posted byブクログ

2012/10/30

中学高校時代の私の恋愛の教科書的存在でもあった作者。 おじさんには当然なっているんだけど、同じ時代の中を通ってきた人にはわかるよ、まだまだ若い気持ちが有るし。 今度は小説の新作を探してみます。

Posted byブクログ

2012/10/15

片岡さんのエッセイは(小説もだけど)、シャキンと背筋を伸ばして読まなければならない。誰にでもなくそう教わった。多分片岡さんの書き方そのものにそういったものが内包されているんだろう。

Posted byブクログ

2012/10/10

もう結構なお爺さんのはずなんだけど、文章だけは若く思えるから不思議。戦時中の疎開なんて経験してる年代なのに。

Posted byブクログ

2014/10/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

いきつけの喫茶店に入って、いつもの席につきコーヒーを飲む。日常の何気ない、けれどそれがきまりになっているらしい律儀さで、ほぼ毎日のルーティン・ワークになっている。そんな店で飲むいつものコーヒーのような味わいの一冊である。 エッセイ集と呼ぶのだろう。短いものなら四ページほどの散文が33篇集められている。いくつかの雑誌に求められて書いた作家本人の登場する小説のような作品から、少年時の回想、食べ物に関するちょっとしたこだわりなど、日常の身辺雑記にあたる文章は、どの作品にも片岡義男という商品タグが付されているような、いつものスタイルで統一されている。 たとえば深煎りコーヒー。たとえば、秋のはじまりであるはずなのに厳しい残暑の中で人とばったり出会い、洋食屋だったり喫茶店だったり、もしくは居酒屋に入って何かを食べ、いかにも訳知り通しらしい会話を交わす。そんな中から小説やエッセイのタイトルに使えそうなしゃれた文句を拾い出す。最近ではそれに俳句が加わった。 スタイルがほとんど変わらないのは自分にキャパシティがないからだ、という作家の言葉に膝を打った。たしかに変わるためにはキャパシティが必要だ。「ワープロのキーを爪弾いている」などという他の作家なら絶対やりそうにない用語法も、この人だと許せる気がする。気の向くまま、たまたま開いたページを拾い読みするような読み方にぴったりの本だ。散歩のときなど持ち歩いて公園のベンチなどで読むといいのではないか。

Posted byブクログ