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日本思想史講座(2) の商品レビュー

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2019/10/27

第二巻は、中世の思想の諸相があつかわれています。 巻頭論文となる末木文美士の「総論 中世の思想」では、石母田正の『中世的世界の形成』(岩波文庫)に代表される戦後の中世史研究を振り返ったあと、黒田俊雄の『日本中世の国家と宗教』における「権門体制論」および「顕密体制論」と、中世のよ...

第二巻は、中世の思想の諸相があつかわれています。 巻頭論文となる末木文美士の「総論 中世の思想」では、石母田正の『中世的世界の形成』(岩波文庫)に代表される戦後の中世史研究を振り返ったあと、黒田俊雄の『日本中世の国家と宗教』における「権門体制論」および「顕密体制論」と、中世のよりダイナミックな世界像をえがき出した網野善彦らの研究の意義が解説され、中世史研究の現代的展開が説明されています。 箕輪顕量の論文「中世の仏教思想」も、黒田以降の中世仏教研究の手堅い概説になっています。同様に、伊藤聡の論文「神道の形成と中世神話」も、神道研究史の来歴と現状が解説されています。 新田一郎の論文「法と歴史認識の展開」と菅野覚明の論文「武士の倫理と政治―中世の「道理」をめぐって」は、たがいにかさなりあうテーマをあつかっていますが、その結論には興味深いちがいが見られます。菅野の論文が中世の武士のエートスを探求しその中核的な価値観である「道理」について掘り下げているのに対して、新田の論文では西洋の「法」概念と日本のそれとの差異についての考察から開始し、わが国の中世における「法」は内的に完結した決定可能性を精緻化する方向へ進むのではなく、具体的な状況にそくしてその境界条件を「裁定」する技術としての役割をになうものであったと論じています。 平野多恵の論文「無常観の形成―和歌の果たした役割」と吉村均の論文「文芸と芸能の思想―狂言綺語としての文芸・芸能」は、いずれも国文学とかさなる領域において思想史的問題を論じたものですが、個人的にはもうすこし論者自身の見方を押し出してほしかったように思います。

Posted byブクログ