往復書簡 言葉の兆し の商品レビュー
東北の震災の年、東京の古井由吉と仙台の佐伯一麦のあいだでやり取りされた手紙。際立ったことが語られているわけではない。でも、今読むと、もう一度心の中の、ことばにならない何かを失いたくないと思う。1995年阪神大震災という、自然の、想像を絶する破壊の、刻み込まれた、経験に戻っていく...
東北の震災の年、東京の古井由吉と仙台の佐伯一麦のあいだでやり取りされた手紙。際立ったことが語られているわけではない。でも、今読むと、もう一度心の中の、ことばにならない何かを失いたくないと思う。1995年阪神大震災という、自然の、想像を絶する破壊の、刻み込まれた、経験に戻っていく自分を見つける。 家族を失い、自宅は倒壊した少年や、少女たちが、倒れなかった学校の、薄暗い職員室にやってきて、笑いころげ、経験の奇異を自慢しあうかのようにおしゃべりしていた。そんな顔が浮かんでくる。25年も昔のことだ。 二人の作家が、そんな少年たちの心の奥にあったもののことを語ろうとしている。 誠実な本だ。
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震災から1年間という、まだ世の中も人々もショックがおさまらない時期に作家二人がかわした往復書簡。かたや震災、かたや空襲という災いをかいくぐった両者の文面には震災直後の動揺のなか、それでも考察を深めようと努力しているさまが見える。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
東日本大震災から3年たった今日、この本を読むことができたのは何たる偶然。でも文学の人達のお手紙は難しい。でも知ってる人からのお手紙というか、言葉は嬉しいだろう。我らがB’zですら、音楽の力は役に立たないと思ってしまったというもの。時間が経ち、時代が変わり。しかし、地に足をつけて暮らしていきたいと思う。私にとって最初のお手紙といっても過言ではない、かすみちゃんからの手紙はまさにそのことが書かれていたのだ。何たる偶然。必然か。
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