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格差社会を越えて の商品レビュー

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2012/09/19

本書は最新の格差論争に対する諸学者の学術論文を掲載したものである。2000年代前半に議論になった格差論争から一歩進んだ観点を得ることができた。 また、サブテーマとして「社会的共通資本」というものが掲げられていた。これは宇沢弘文氏の提唱した概念で、格差論争と密接に結びつく概念であり...

本書は最新の格差論争に対する諸学者の学術論文を掲載したものである。2000年代前半に議論になった格差論争から一歩進んだ観点を得ることができた。 また、サブテーマとして「社会的共通資本」というものが掲げられていた。これは宇沢弘文氏の提唱した概念で、格差論争と密接に結びつく概念であり、こちらの観点からも各章で評価された。 本書がユニークである点は、分析アプローチが多岐にわたるという点である。例えば7章の金子勝氏の分析は、現代の経済学的分析で死角となっている部分を批判的に解説し、それにとって変わる方法を用いて格差を論じている。 ひとつ残念だった点を挙げるならば、著者に宇沢氏の名前が上がっているにもかかわらず、宇沢氏の分析や解説が無かった点である。確かにプロローグでは内山氏と共同で著してあると記されているが、やはり共著となるとうやむや感が残る。そういう意味で、タイトルはややズルい感じはする。 とはいえ、とても満足度が高く、得られるものが多い本であった。

Posted byブクログ