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湯浅泰雄全集(17) の商品レビュー

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2020/12/21

『宗教と科学の間―共時性・超心理学・気の科学』(1993年、さみっと双書)のほか、ニュー・サイエンスについての著者の文章をまとめています。また巻末には、著者の年譜および略歴も掲載されています。 本書の第一部に収録されているのは、1984年に著者の勤めていた筑波大学で開催された日...

『宗教と科学の間―共時性・超心理学・気の科学』(1993年、さみっと双書)のほか、ニュー・サイエンスについての著者の文章をまとめています。また巻末には、著者の年譜および略歴も掲載されています。 本書の第一部に収録されているのは、1984年に著者の勤めていた筑波大学で開催された日仏協力筑波国際シンポジウムの記録「科学・技術と精神世界」シリーズ(1986年、青土社)に掲載された文章です。著者はこのシンポジウムの責任者で、会場における発表と討論の様子を記しています。 ニュー・サイエンスは、アメリカにおけるカウンター・カルチャーと結びつき、フリッチョ・カプラの『タオ自然学』によって広くその内容が知られるようになりましたが、その理論的な中核をかたちづくったのは、カール・プリブラムとデイヴィッド・ボームの二人です。ただし、倫理学および日本思想史が専門である著者は、自然科学における議論の細部には立ち入らず、主としてユング心理学による知の変革という枠組みのもとで、その意義を解釈する議論をおこなっています。ニュー・サイエンスの歴史や、その具体的な中身について知りたい読者にとっては、やや不満ののこる内容かもしれません。 また著者は、いわゆる「オカルト」とのかかわりや、オウム真理教事件などにも言及して、ニュー・サイエンスにまつわる社会的影響についても若干の考察をおこなっています。ただ個人的には、科学社会学的な観点からの検討が充分であるとはいいがたいように感じました。たとえば、上述のシンポジウムでソニーの井深大や京セラの稲盛和夫が協力をしていることが象徴的だと思われるのですが、ジャーナリスティックな観点からではあるものの斎藤貴男が『カルト資本主義』(2000年、文春文庫)で分析しているような問題についても、もうすこし考慮が必要であるように感じます。

Posted byブクログ