かげろうの家 の商品レビュー
犯人の生い立ちや人間性を深掘りして、事件の必然性を社会責任に追求しようとした問題作とでも言おうか、犯人たちの人間味を描きながらも、全く被害者を分析しない事で、事件同様、結果的に被害者をモノ化してしまっている。 弁護側からの記述を中心に、巻末には精神科医の無機質な面白い現象ともい...
犯人の生い立ちや人間性を深掘りして、事件の必然性を社会責任に追求しようとした問題作とでも言おうか、犯人たちの人間味を描きながらも、全く被害者を分析しない事で、事件同様、結果的に被害者をモノ化してしまっている。 弁護側からの記述を中心に、巻末には精神科医の無機質な面白い現象ともいうような表現に胸糞悪くなる。読めば、子育ての難しさや問題点など、他山の石になるかと思いながらも、しかし、途中で然程役に立たない事に気付く。子供が如何に傷付くか、これは、改めて犯人の親たちが法廷で悔いる事だから、読者は同じ事をせぬようにと学びはある。しかし、事件当時の現場は校内暴力で荒れ、暴走族やヤクザが平気で関わる空気感にあった。また、家庭が子育てに及ぼす影響は、ジュディス・リッチハリスが『子育ての大誤解』で解説していた通り、思うほど大きく無い。友人関係の影響の方が、絶大だ。 更に、男たちは、集団になれば狂気を膨張させ、互いに通過儀礼の如く無茶を競い合う本能がある。自制の効かない領域の集団はエスカレートし、止まらない。酷い、悲劇だ。親さえも暴力で屈服させる。加害者に寄り添うのは良いが、同じ境遇に生まれ、問題を起こさぬ人間たちと何が違うのか、社会全体でどうすれば防げるのかをよく考えるべきなのだろう。サピエンスは集団になり、異種を駆逐する。重要な事は、暴力による集団を形成させぬ事なのだろう。
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