ヴィットーリオ広場のエレベーターをめぐる文明の衝突 の商品レビュー
アパートのエレベーターで起きた殺人事件の被疑者アメデーオについて、関係者10人の供述が並べられた小説形式。関係者は異口同音にアメデーオの無実を訴えるが、それぞれ偏見に基づいた真犯人を述べる。告げ口と悪罵の記述が続くものの、その語り口は軽妙で笑いを誘う。 小説の最後に真犯人は明かさ...
アパートのエレベーターで起きた殺人事件の被疑者アメデーオについて、関係者10人の供述が並べられた小説形式。関係者は異口同音にアメデーオの無実を訴えるが、それぞれ偏見に基づいた真犯人を述べる。告げ口と悪罵の記述が続くものの、その語り口は軽妙で笑いを誘う。 小説の最後に真犯人は明かされるが、そこまで読み進む過程で、読者は移民差別の現実、イタリア南北都市の反目を見つめることになる。登場人物たちは、出身地に対するステレオタイプの偏見を背負う。 ただし本書は単純な「差別糾弾の書」とは様相を異にしている。それを受け容れているわけではなく、ため息交じりの笑いに変えて物語化している。 次作が気になる作家だ。
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