ウィリアム・モリスのマルクス主義 の商品レビュー
図書館で借りた本。 思いのほか、経済的な、マルクス的な話だったけど、面白かった。ウィリアム・モリスが書いた『ユートピアだより』を読んでみたくなる。国家社会主義でなく、共同体社会主義を目指した思想。官僚的でなく、草の根的。アナーキズムにもつながってしまうかもしれないけど、ジョン・ラ...
図書館で借りた本。 思いのほか、経済的な、マルクス的な話だったけど、面白かった。ウィリアム・モリスが書いた『ユートピアだより』を読んでみたくなる。国家社会主義でなく、共同体社会主義を目指した思想。官僚的でなく、草の根的。アナーキズムにもつながってしまうかもしれないけど、ジョン・ラスキン→ウィリアムモリス、その間に、マルクス・エンゲルスがいたとは。
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宇野派の中心人物による本書では、『資本論』段階のマルクスは、それまでの経済学批判のなかで積み上げてきた唯物史観を放棄している、という認識が基礎となっている。 そのうえで、エンゲルスがマルクスの『資本論』を唯物史観の枠内で理解しようとした(=社会主義的科学)のに対して、モリスはフラ...
宇野派の中心人物による本書では、『資本論』段階のマルクスは、それまでの経済学批判のなかで積み上げてきた唯物史観を放棄している、という認識が基礎となっている。 そのうえで、エンゲルスがマルクスの『資本論』を唯物史観の枠内で理解しようとした(=社会主義的科学)のに対して、モリスはフランス語版『資本論』のみを摂取したことで、科学としての資本主義経済の運動法則を理解し、彼の共同体社会主義を科学的に裏づけることができた(=科学的社会主義)という主張がなされる。 本書の帯には、「マルクスの正統な後継者は、ウィリアム・モリスである。」という刺激的な文句が掲げられているが、本文中にはこうした記述はない。しかし、モリスの社会主義的経歴の特殊性が、その後のソ連型社会主義へと連なるイデオロギーから自由であったことを積極的に評価する記述は随所にみられる。 新書であるため、モリスの社会主義論の概略紹介に多くの紙幅が割かれたことで、議論の厳密性をやや欠いている嫌いが認められる。また、東日本大震災を契機に大幅に書き直されたという第四章において、特に記述の重複が目立つ。 しかし、特定のイデオロギーからは自由に、一哲学書としてマルクスやエンゲルスの著作を読むことができるようになった今日において、ユートピア社会主義者に対するエンゲルスやレーニンの批判を超えて、モリスの社会主義論に注目し、その現代性を検討するという本書の目的は大変に魅力的であり、勉強になった。
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