地下室のワルツ の商品レビュー
旧ユーゴの内紛により引き裂かれた、アレクと夏生の愛と憎しみの半生を描いた作品。 舞台は東欧からパリ、回想シーンを入れると日本、ウィーン、果てはケニアにまで及び、スケールが壮大です。 国を越えて出逢い、離別して、再びめぐり合い、愛しあって傷つけあって憎しみあって…その果てに何がある...
旧ユーゴの内紛により引き裂かれた、アレクと夏生の愛と憎しみの半生を描いた作品。 舞台は東欧からパリ、回想シーンを入れると日本、ウィーン、果てはケニアにまで及び、スケールが壮大です。 国を越えて出逢い、離別して、再びめぐり合い、愛しあって傷つけあって憎しみあって…その果てに何があるのかというところまで描ききってあります。まさに、大人のためのBL。 夏生は、「あなたは僕を愛していない」の海棠の後輩。独立した隠れリンク作だからなのか、絵師さんが違います。単独で大丈夫な内容ですが、夏生が働く小児ホスピスは、「マリオン財団」が設立されて実現した施設です。その後を少し知ることができるのもうれしいところ。そして、マリオンを愛していて最期まで世話をしていたオスカーと友人関係だったことから、夏生はホスピスで働くことになるわけです。 民族間の紛争が原因で、幼なじみのアレクと夏生は、じわじわと仲を引き裂かれていきます。その背景の描き方が徹底してリアルで、とても読み応えがありました。ユーゴ紛争など他人事のようにとらえていたことが、夏生の生き様を通して肌感覚で伝わってきて、震撼させられました。 暗く辛い背景の中、際立ったのが二人のキャラでしたね。海棠の彼氏も相当歪んでたけど、アレクも相当です。医師としては、クールで優等生で的確な判断ができるくせに、夏生のこととなると非常にオトナゲないと思うのは私だけ?夏生しか見えてないし、彼のこととなると鬼にも夜叉にもなれる攻様。 夏生には、独占欲丸出し、執着しまくり、やや変態で、心はとっても狭くなる、というかんじ。 それとは対照的に、夏生は大阪の天王寺生まれで、母ちゃんは水商売という元気な雑草系。へこたれないし、健気だし、何より素直でカワイイ。 そんな二人が、再会して閉塞的な地下室で、監禁する側とされる側と言う状態になった時の関係が興味深かったですね。 夏生を自分だけのものにしちゃったアレク、Hはやり放題、ワルツを踊らせたり制服着せてコスプレさせたり、変態の限りを尽くしています。愛している気持ちが、かなり屈折している残念さに萌えました。 そして、監禁陵辱など酷な仕打ちをする反面、足踏まれて嬉しそうだったり、肩を蹴られて変態呼ばわりされてやる気満々になるところは危なすぎです!本音は言えないラブラブな二人のあやしいプレイ、一歩手前なところに煽られました。 様々な壁を乗り越え、二人がたどり着いた先にあるもの。そこまでがドラマティックに描かれていて、せつなさ抜群です。読み終わった後には深い余韻が残ります。
Posted by
- 1