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昭和の戦時歌謡物語 の商品レビュー

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2012/07/07

回送先:稲城市立第二図書館 戦前の日本において一大勢力を築き上げた歌唱の分野に「戦時歌謡」と呼ばれるジャンルがある。塩澤が本書で注目しているのはそうした戦時歌謡の中でも大ヒット(今で言うところのシングルヒットチャートtop10とかだろうか?)を飛ばした歌謡曲とその世代的なバック...

回送先:稲城市立第二図書館 戦前の日本において一大勢力を築き上げた歌唱の分野に「戦時歌謡」と呼ばれるジャンルがある。塩澤が本書で注目しているのはそうした戦時歌謡の中でも大ヒット(今で言うところのシングルヒットチャートtop10とかだろうか?)を飛ばした歌謡曲とその世代的なバックヤードである。 本書で登場する歌謡曲のいずれにも共通するのは、歌を聞く人をオーディエンスとして設定し、そうしたオーディエンスに対してどのようなアプローチを取ることによって彼らを重要視しているかという現代の音楽市場に連綿と引き継がれた「欲望の設定の構図」の重要な転換がなされたということだろう。皮肉なことに、少年志願兵への憧れを引き立てる構図に現代のアニソン(アニメソング)を、あるいは、あるメディア作品とのカップリング曲が売れるという(現代でも頻繁に見られる)構図を思い起こさずにはいられなくなる衝動があることを率直に認めてしまおう。さらに言えば、「南から南から」という戦時歌謡が太平洋戦争の序盤にヒットしたが、翻って現在「JKT48」として売り出そうとする構造にもそうした「南方ソング」的な欲望がないと言い切れるだろうか(評者は言い切る自信はまったく無い)。 もちろん、塩澤が自身の歴史観に引きずられすぎているという批判も想定されることだろう。取り上げた曲がある一握りの作詞家・作曲家に固まっている印象を持つ人も少なくない。しかしとにもかくにもこれらのヒットを飛ばしたのは事実であり、売り上げ実績という数字から見て取れるものをしみじみと学習するのもまた歴史との向き合い方なのではないかと評者は考えている。

Posted byブクログ