西田幾多郎と現代 の商品レビュー
著者はマルクス主義の立場から、後期西田のポイエーシス論を評価するとともに批判する。 ポイエーシスは、道具を作って外界を変じてゆくことを意味している。もし物を作ることを「労働」と呼んでよいとすれば、世界を歴史的に形成する活動としての「労働」を人間の本質とみなす西田哲学は、マルクス...
著者はマルクス主義の立場から、後期西田のポイエーシス論を評価するとともに批判する。 ポイエーシスは、道具を作って外界を変じてゆくことを意味している。もし物を作ることを「労働」と呼んでよいとすれば、世界を歴史的に形成する活動としての「労働」を人間の本質とみなす西田哲学は、マルクス主義と同じ問題の地平に立っている。 だが同時に、両者の相違も指摘されている。マルクスの労働は、人間が環境の中で自己を対象化する活動として捉えられているのに対して、西田のポイエーシスは、歴史的世界そのものの表現としての性格を強調している。著者は、ここに西田の独自性を認めるつつも、個人の活動が「永遠の今」の自己限定としての「表現」として規定されているために、労働を観念論的に理解することになったと批判する。 著者自身も大きな影響を受けたと告白しているが、ほぼ三木清の西田理解を踏襲したものといってよいだろう。
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