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天台哲学入門 の商品レビュー

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2023/01/22

智顗によって大成された天台教学の思想について、簡潔に説明している入門書です。 「序説」には、「天台の教学思想のもっとも核心的な部分、すなわち智顗において、教理体系の構築に際し最大の関心が払われたであろうと考えられる教理の側面に絞って論を進めてゆくことにしたい」と述べられており、...

智顗によって大成された天台教学の思想について、簡潔に説明している入門書です。 「序説」には、「天台の教学思想のもっとも核心的な部分、すなわち智顗において、教理体系の構築に際し最大の関心が払われたであろうと考えられる教理の側面に絞って論を進めてゆくことにしたい」と述べられており、「五時八教」についての解説は省略されています。著者はその理由を、「直接にはそれが教理の性格上、生死の世界に迷惑する衆生に対して、悟りへの道程なり、それの実現のための方法なりを、主たる関心事として教示する教説のように思われない」ということをあげていますが、比較的入門書でとりあげられることの多い「五時八教」以外の教説に説明のページが割かれていることは、個人的にはありがたいと感じました。 とはいえ、天台教学の全貌を新書一冊の分量で語ることは困難であり、本書は「初期の教学思想」として『次第禅門』がとりあげられ、「円熟期の教学思想」として『法華文句』『法華玄義』『摩訶止観』がとりあげられていますが、観法の諸段階についてのくわしい説明は省略されています。それでも、智顗がその初期の思想において行を重視する姿勢を明確に打ち出しており、円熟期にいたって『法華経』の一乗論および実相論の影響のもとに智と行を統合する教学を打ち立てたという大まかな見取り図が示されています。 天台教学について知識をもたない読者が、その概要を手軽に学ぶことのできる入門書はあまり多くないなかで、明快な説明がなされている本書の意義は大きいように思います。

Posted byブクログ