ルポ 子どもの貧困連鎖 の商品レビュー
保育園に支払う月数千円の雑費が支払えず、何度目かの納付願いの手紙を子どもに持たせると、「先生、持ってきた」と差し出しされた手のひらには三枚の百円玉。 「ママ、小学生になったらアルバイトしていいかな。僕も仕事をしてママを助けたいんだよ」という保育園生の息子。 本書は、共同通信の...
保育園に支払う月数千円の雑費が支払えず、何度目かの納付願いの手紙を子どもに持たせると、「先生、持ってきた」と差し出しされた手のひらには三枚の百円玉。 「ママ、小学生になったらアルバイトしていいかな。僕も仕事をしてママを助けたいんだよ」という保育園生の息子。 本書は、共同通信の記者による連載単行本化。斜陽産業といわれるマスメディア。必要性を再認識させられる一冊。 (2012.10.1)
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「子どもの無縁社会」に比べて、感情に訴えるようなつくりではないけれど、高校、中学、小学校、それ以下と、それぞれの取材を通じた子どもの貧困の状況は、やはりとても重苦しいものです。 教育現場での貧困の発見も対処もとても難しく、また体系的な方法もない。一市民は、この問題にどう向きあえば...
「子どもの無縁社会」に比べて、感情に訴えるようなつくりではないけれど、高校、中学、小学校、それ以下と、それぞれの取材を通じた子どもの貧困の状況は、やはりとても重苦しいものです。 教育現場での貧困の発見も対処もとても難しく、また体系的な方法もない。一市民は、この問題にどう向きあえばいいのか、さっぱり答えが見えません。我が家がこうならないという確信も、さっぱり持てません。 周辺を考えてみると、教育現場や行政のせいだけではなくて、地域崩壊が発見を遅らせ、また手を差し伸べないベースになっている、のでは。地域がなくなったことが、いろんなことの問題だと思う。
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高校無償化という言葉と実際に施行されている内容の齟齬、子どもの貧困・格差について高校生・中学生・小学生・保育と分けて、実例と広域政策に関わる人へのインタビューを通したルポルタージュとして、出来るだけ客観性を失わないように書かれていると思う。 今まで個人的には、公立と私立では、もともと教育サービスが違うのだから授業料に差があるのだと漠然と認識していた。それに対して近年の高校無償化は、一律に一定金額を給付するという形のために、公私格差を問題視する人が出てきているようにまた漠然と見ていた。 しかし、この「高校無償化」という言葉を付けて施行されている実際施行されている政策は「子供向けのBasic income」と変わらない。それをただ「高校無償化」といって公私に不公平が生じている主張しているように見えるのが、少し空々しく感じるほど、より真剣に「勉学」を求め、就労しながら定時制に通い、悩み、苦しみ、それでも進む学生とそれを支えようとする人々の存在ことが帯にあるように≪鉛の重さ≫として感じざるを得ない。 それと同時に如何に恵まれてきて、未だに恵まれている現状に、何か返していかなければならないのだろうことだけが心に沁みる。 義務教育とは? 公立と私立の違いとは? 子どもが身に付けるべき学力とは?そして、この社会に横たわる年齢差別とは? 近年、「無縁社会」など高齢化社会での孤独の問題や非正規雇用の賃金格差、リーマンショックによる労働市場の減退とともに本書のような問題がより顕在化してきていると受け取れる。どうにかしなければならない。
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現場の取材をもとに文章が起こされてあり、それでいて著者の主観があまり入ってない文だったから、客観的な現状を知れてたいへん参考になった。貧困の格差は非常に深刻に広がっている。それでいて、本にも書いてあったけど「子どもの貧困は、見ようとしないと見えない」という状態だから、第三者が支援...
現場の取材をもとに文章が起こされてあり、それでいて著者の主観があまり入ってない文だったから、客観的な現状を知れてたいへん参考になった。貧困の格差は非常に深刻に広がっている。それでいて、本にも書いてあったけど「子どもの貧困は、見ようとしないと見えない」という状態だから、第三者が支援ができそうでできない場合がある。今話題になっている生活保護は、この本では「大きな権利」として扱われていた。むしろ「もっと申請してほしい」という感じで。幼児教育から高等教育まで段階ごとに、内容が書かれてあったけど、一つ「教師の使命」を考えてみた。本を読むと確かに「なんとかせんといかん」という気持ちがわく。しかし現実に自分が何かできるかというと、そういう生徒はいないしむしろ「そこそこの生活ができて、がんばれば自分次第でどうにでもなる生徒」ばかりだ。日本にはそういう子の方が圧倒的に多いし、また親も多い。もちろんだからといって、貧困に苦しむ子どもを見捨てるわけではないのだが、僕はそういう子たちと関わることは今ないし、これからあったら、全力で使命を果たしていこうと思った。「自分がやらなきゃ誰がする」という使命感だ。だが普通にがんばれる子も伸ばしきれていない現状で、「もったいない。もっとこうすればもっと伸びるのに」と思っているから、今僕はそっちに使命があると思う。
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保坂渉・池谷孝司『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』(光文社、2012年)は子どもの貧困問題を取り上げたルポタージュである。現代日本において貧困は大きな問題である。貧困問題の大きな弊害は親の貧困が子どもにも連鎖することである。 『ルポ 子どもの貧困連鎖』から貧困...
保坂渉・池谷孝司『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』(光文社、2012年)は子どもの貧困問題を取り上げたルポタージュである。現代日本において貧困は大きな問題である。貧困問題の大きな弊害は親の貧困が子どもにも連鎖することである。 『ルポ 子どもの貧困連鎖』から貧困の要因として日本の福祉の貧困が浮かび上がる。駅前のトイレで寝泊まりする女子高生、車上生活を強いられる保育園児、朝食を求めて保健室に行列する小学生などが紹介されている。未だに中流幻想にしがみつく無関心な市民は見ようとしないだけで、貧困と格差は厳然と存在する。 日本の福祉は申請主義になっている。つまり困窮者が自動的に助けられる仕組みになっていない。お笑い芸人の母親の生活保護受給がバッシングされたが、「本当に必要な人に生活保護が受給されていない」という本質的批判は乏しい。反対に「生活保護受給は甘え」という類の時代錯誤の特殊日本的精神論からのバッシングが中心である。むしろ、大阪府東大阪市の職員約30人の親族が生活保護を受給していたことの方が恣意的な生活保護受給の問題を物語っている。 公的福祉の貧困によって生まれるものはゼロゼロ物件などの貧困ビジネスである。貧困ビジネスを野放しにすれば貧困層は搾取され続ける。貧困ビジネスは規制しなければならない。現実に反貧困の市民運動の活動により、ゼロゼロ物件業者を宅建業法違反で業務停止処分に追い込んだ例がある(林田力「住宅政策の貧困を訴える住まいは人権デー市民集会=東京・渋谷」PJニュース2011年6月15日)。 厄介なことに貧困ビジネスは公的なセーフティネットが機能不全になる中で社会資源の一つとして認知されつつある。そのために目の前の現実論として貧困ビジネスがなくなると貧困層は益々困ることになるという類の議論すら生じる。『ルポ 子どもの貧困連鎖』でも家がない家族が取り上げられるが、そのような家族にとってゼロゼロ物件は必要悪と言う論法である。 この種の欺瞞的な議論は労働者派遣法でもなされている。「年越し派遣村」に象徴される正規から非正規への置き換えは格差社会の要因であるが、労働者派遣を規制強化すると派遣労働者の働き口が減るとの議論である。ゼロゼロ物件などの住まいの貧困と非正規やワーキング・プアの問題は密接に関係している。 実際は住宅に困っている人々にゼロゼロ物件を紹介することは、金に困っている人にサラ金を紹介するようなものである。ゼロゼロ物件は悪であって、必要悪では決してない。その意味で教育現場から貧困問題のサポートを志向する『ルポ 子どもの貧困連鎖』は貧困ビジネスの二次被害を防ぐ上でも重要である。
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生活保護を受けている家族が「プラネタリウムにも行ってきた」。 読んでいると、人間に必要な出費は生活だけに切り詰めてはならないと思った。小さな子から高校生まで、さまざまなケースが紹介されている。
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学費を自分で稼いで払う生徒は十年前クラスで一人だったのが、いまは3割くらいに増えたかな 野宿になった若者 母子家庭と虐待家庭が多い 貧困による悲劇を生み出さないためにも、日本には、いい意味での「お節介」が必要なのではないか?
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家庭の貧困が子供の教育に重大な影響を与えつつあることを、取材を元に実態を読者に知らしめようとする本。 バイトを複数掛け持ちしながら学校に通うも、疲労から学業を断念する様は読み進めるにつれ苦しい思いにさせられる。 贅沢をするためではなく、「生きていく為に」子供たちが疲弊しているのに、その現実が表に出てこない、この国が壊れていく過程を突きつけられたような気がする。
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格安でデザインそこそこの衣料品が手に入る現代。「貧困は見た目では分からなくなってきている」という教育者達。子供からの小さなサインを見逃さずに早めに根気強く手を打つ事が肝要。
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