震災後の自然とどうつきあうか の商品レビュー
今の能登半島の状況と,これからの復興を考えるときに,まさに時宜を得た著書だ。 本書が出版されたのは,2011年の東日本大震災の後である。 東日本大震災のあとの復興の様子を見て,相変わらずコンクリートで自然と対峙することしか考えていない日本社会のあり方に警鐘を鳴らしてくれる。...
今の能登半島の状況と,これからの復興を考えるときに,まさに時宜を得た著書だ。 本書が出版されたのは,2011年の東日本大震災の後である。 東日本大震災のあとの復興の様子を見て,相変わらずコンクリートで自然と対峙することしか考えていない日本社会のあり方に警鐘を鳴らしてくれる。 そして,著者の専門である生態学やグリーンインフラストラクチャーの立場から,自然に逆らわない,時々起きる災害と共生共存する復興のあり方のヒントを教えてくれる。 もう10年以上前に出版された著書だが,これからの能登や珠洲市の復興のあり方を考えるときに参考になると思う。 特に珠洲市では,トキの放鳥に向けての動きも止めることはできない。市長自らも「里山里海を活かした珠洲市を作っていく」と言っているので,その方向性は同じだ。 9月には豪雨もあり,豪雨災害にも強い町づくりが必要となる。そのヒントも,この本の中に書かれている。 著者は自然災害に対するヒトが採る戦略には3つあるという。それは, 「抗する」…自然災害の力を人工的な構造物によって押しとどめる 「避ける」…自然災害の影響をうけやすい空間における居住などを避け,一時的な利用にとどめることで,災害が生じないようにする,あるいは弱める 「逸らす」…災害が起こってもそれによって大きな被害が生じないように社会的,行動的な備えをすること。避難する。 である。 堤防の高さを10mにして海との境をつくることは,本来の自然のあり方ではない。 そんなことをしていると,またぞろ,想定外…で,避難することを忘れた住民が命を失うこともあるだろう。東日本大震災の時だって,堤防があるから大丈夫だと,海の近くのヒトの方が避難しなかったという事実もあった。まさに,本末転倒だろう。 とにかく,いろいろと考えさせられる本だった。 今後,机上の空論ではなく,この本から学んだことを活かし,具体的な復興計画を提案していきたいものだ。
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落ち着いた文調でグリーンインフラストラクチャーを説く。名取の砂浜と再生した湿地…また破壊されないうちに行きたいなぁ。本当は北上川もそんな風に再生できるといいのだけれど…。
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