日本思想史講座(1) の商品レビュー
長く日本思想史にかんする良書を刊行してきたぺりかん社が、日本思想史研究の現在地を示すシリーズの第一巻で、古代の日本思想の諸テーマがあつかわれています。 本シリーズの直後に『岩波講座 日本の思想』の刊行がはじまりましたが、岩波のシリーズがテーマ別編成になっているのに対して、本シリ...
長く日本思想史にかんする良書を刊行してきたぺりかん社が、日本思想史研究の現在地を示すシリーズの第一巻で、古代の日本思想の諸テーマがあつかわれています。 本シリーズの直後に『岩波講座 日本の思想』の刊行がはじまりましたが、岩波のシリーズがテーマ別編成になっているのに対して、本シリーズは時代別の編成が採られています。巻頭の論文である佐藤弘夫の「総論 古代の思想」では、本巻に寄稿している論者たちを中心に、近年の日本思想史研究の成果が手際よく紹介されており、これからこの分野について学ぼうとする読者にとって有益な手引きとなっています。 認知考古学という立場から日本の古代思想についての研究をおこなっている松本直子の論文「縄文の思想から弥生の思想へ」では、認知考古学の視点から生と死、ジェンダーなど種々の問題があつかわれていることが語られています。日本神話の研究に新しい風を吹き込んだ神野志隆光の論文「古代神話論のために」は、これまでの著者の仕事の簡潔なまとめのような内容ですが、日本神話研究が現在取り組んでいる問題について知ることができます。三橋正の「神祇信仰の展開」、末木文美士の「平安仏教論」も、執筆者自身の主張を織り込みつつ、それぞれのテーマを概観しています。佐藤弘夫の論文「本地垂迹」は、マーク・テーウェンとファビオ・ランベッリの「本地垂迹パラダイム」の問題提起を受けつつ、「目に見えない根源的存在」と「目に見えるその現れ」の二種類のカミによって構成される本地垂迹の理念の形成とその変容が通史的にたどられています。
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