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天下無敵のメディア人間 の商品レビュー

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2020/08/01

1997年をピークに二十年以上発行部数を減らし続けている日本の雑誌。このアンダーコロナの時代に紙をやめてWEBだけに移行する雑誌も多々あると聞きます。日本に限らず世界的にも雑誌というメディアは「老年期」を迎えているのかもしれません。(そうじゃない!と、サバイブへ向けてのトライをし...

1997年をピークに二十年以上発行部数を減らし続けている日本の雑誌。このアンダーコロナの時代に紙をやめてWEBだけに移行する雑誌も多々あると聞きます。日本に限らず世界的にも雑誌というメディアは「老年期」を迎えているのかもしれません。(そうじゃない!と、サバイブへ向けてのトライをしている雑誌からは怒られるかもしれませんが…)本書はまだ雑誌というメディアが洗練された「大人のビジネス」になる前の「青年期」の物語です。それは明治、大正、昭和という近代化、デモクラシー、戦争という体験に国家としての自我を模索する日本という国の「青年期」の物語でもあると思います。それを著者は一人のハチャメチャ人間を主人公にすることで描き出すことに大成功しています。『明治の博文館、大正の実業之日本社、昭和の講談社という日本出版史のメイン・ストリームに徒手空拳で乗り込んだ自称「天下の青年」が野依秀一である。』(P65)彼を「言論人」としてではなく「メディア人間」と名付けて、自己宣伝をもってして自己存在となす「広告媒体的人間」の先駆けとしています。先ず敵を作り、それを徹底攻撃し、その批判の過程で自己生成する行動主義…これって今のアメリカの大統領のプチだ、と思ったり。本書では使われていませんが、ポピュリズムと言われるものの正体もここらへんにありそうだと、と思いました。東京瓦斯の料金に噛みつき、交詢社のエスタブリッシュメントに噛みつき、恩人大隈重信に噛みつき、新渡戸稲造の教養に噛みつき、陸軍増強に噛みつき、藩閥政治に噛みつき、ニセ薬販売有田音松に噛みつき、新聞権力に噛みつき、講談社野間清治に噛みつき、軍部に噛みつき、英米に噛みつき、戦時体制に噛みつき、圧倒的な狂犬人生!この一貫性において野依は「青年」であり続けたし、逆に死ぬまで「青年」を演じなければならなかった、と著者は指摘します。一度も体制側で存在感をなさなかったことがトランプとの違いか…狂犬であると同時に負け犬の歴史でもあります。輿論というものが世論になっていく大衆参加社会の生成こそがメディアという産業勃興にキーだったことがよくわかりました。『「キング」の時代ー国民大衆雑誌の公共性』からたどり着きました。また以前読んだ『パンとペンー社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』ともつながりました。

Posted byブクログ

2012/09/10

近現代日本のジャーナリズム史を見る上で極めて重要な人物だと思われるが、その活動範囲の広さや胡散臭さ、誤解などなどの理由によってほとんどまともに取り上げられてこなかった野依秀市の本格的研究書である。〝メディア人間〟として野依という佐藤氏の把握にはまったく同意。元祖ブラックジャーナリ...

近現代日本のジャーナリズム史を見る上で極めて重要な人物だと思われるが、その活動範囲の広さや胡散臭さ、誤解などなどの理由によってほとんどまともに取り上げられてこなかった野依秀市の本格的研究書である。〝メディア人間〟として野依という佐藤氏の把握にはまったく同意。元祖ブラックジャーナリズムの野依として切り捨て、あるいは無視してきた今までの研究史を痛烈に批判している。 ダイヤモンドの石山賢吉、『サラリーマン』の長谷川國雄、パトロンの1人であった渋沢栄一、三宅雪嶺などとの関わりも非常に興味深い。

Posted byブクログ