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会社員とは何者か? の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2016/05/11

非常に興味深い「会社員小説」をめぐる文芸評論であり、良い作品紹介となっていると思う。ここで紹介され分析が加えられた作品群を読んでみたい。とりあえず著者の『岩崎彌太郎—「会社」の創造』(講談社現代新書)は注文してみた。

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2014/05/07

随分前にReaderで購入したまま積んデータで危うく忘れかけていたのを不意に思い出しようやく読了。 文芸作品に立ち現れる「会社員」に関する優れた小説論=批評でありながら、「会社員」という属の謎を、近代史を遡りながらネチネチと執拗に紐解いて行く手続きは圧巻で、いわゆる自己啓発系ビジ...

随分前にReaderで購入したまま積んデータで危うく忘れかけていたのを不意に思い出しようやく読了。 文芸作品に立ち現れる「会社員」に関する優れた小説論=批評でありながら、「会社員」という属の謎を、近代史を遡りながらネチネチと執拗に紐解いて行く手続きは圧巻で、いわゆる自己啓発系ビジネス書の類だとリアルな生活感情から違和感を持ってしまうような「会社員」たる紳士淑女であれば、自己の出生の秘密を知るためにも読んでおいてもいい良書。

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2013/01/29

 これもまた”郊外”からの関連、興味で読んだのだが、前書きに述べられたように妄想と牽強付会、なるほどそういう読み方もあるのかと関心はするが、またしてもその興味を満たすものではなかった。岩崎弥太郎と三菱の概論がそれに近かったか。機会があれば新書も読みたい。

Posted byブクログ

2012/11/02

会社員と小説にはどのような関係性が存在するのか- という命題を、いくつかの作品を例に考察した一冊。 資本主義社会がはじまるとともに、それまで農民と貴族、商人だけだった世界に会社員という異質な存在が生じる(日本で言う明治維新のころ)。ただし、小説の世界では長らく会社生活を描く小説...

会社員と小説にはどのような関係性が存在するのか- という命題を、いくつかの作品を例に考察した一冊。 資本主義社会がはじまるとともに、それまで農民と貴族、商人だけだった世界に会社員という異質な存在が生じる(日本で言う明治維新のころ)。ただし、小説の世界では長らく会社生活を描く小説が出てこなかった。夏目漱石『三四郎』のように、どちらかというと社会不適合存在と言われるような人たちがスポットに充てられてきた。その後徐々に注目されるようになるが、それでも会社員の自分と私生活の自分を上手にバランスよく書き終える小説が少なかった。それはなぜか…? 色々と考察があるのは理解できたが、ゴール設定があいまいだったため、いまいちピンとこない作品だった。でもたまにはこんな作品も読んでもいいかも。星2つ。

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2012/07/28

 著者は<会社という条件の中で生きる人間とその関係を描くことで>成り立っている小説を「会社員小説」と定義する。このカテゴリを見いだしたことは、文学にとってひとつの収穫だとおもう。とくに<企業や業界、そこで働く人々や事件などを扱った小説>である「経済小説」とは明確な線を引いた。この...

 著者は<会社という条件の中で生きる人間とその関係を描くことで>成り立っている小説を「会社員小説」と定義する。このカテゴリを見いだしたことは、文学にとってひとつの収穫だとおもう。とくに<企業や業界、そこで働く人々や事件などを扱った小説>である「経済小説」とは明確な線を引いた。この分野において登場人物は、効率的に情報を伝えるために比較的紋切り型に近いキャラクターとして使われるからだという。「会社員小説」は「経済小説」とは違い<人間を描くことが、手段ではなく目的であるような世界>―つまり、近代文学の世界の作品を指すのだとする。  具体論に入ると、まず取り上げている作品の趣味がいいなぁと感じる。会社員小説の説明に使ったのは「アレグリアとは仕事はできない」(津村記久子)であり、「泣かない女はいない」である。その際の、取り上げ方(スジの紹介の仕方、読みどころの的確さ)もすばらしい。  さらには、いわゆる「会社員」が出てくる小説ばかりではなく、カフカ「変身」やメルヴィル「バートルビー」までも「会社員小説」というハサミで切っていくことで、あらたな「読み」に挑戦している。刺激的だし、楽しい。あっぱれ、だ。

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2012/06/17

絲山秋子さんの「沖で待つ」が好きだ。 芥川賞を受賞されたときの文藝春秋を捨てられずにいる。 伊井直行さんの本書は、会社員小説の書評を集めたような本である。その中に「沖で待つ」を見つけたときには嬉しかった。解説を読んで、なるほどなと思う。 いつだったか、駅から会社に向かう道路を...

絲山秋子さんの「沖で待つ」が好きだ。 芥川賞を受賞されたときの文藝春秋を捨てられずにいる。 伊井直行さんの本書は、会社員小説の書評を集めたような本である。その中に「沖で待つ」を見つけたときには嬉しかった。解説を読んで、なるほどなと思う。 いつだったか、駅から会社に向かう道路を歩いているとき、同じ会社の従業員が行列になって歩いている姿を見て、みんないろんな問題抱えているだろうに、毎朝ちゃんと出勤して仕事してえらいなぁとしみじみ感じた。華々しく活躍している一部の人を除き、大抵の会社員は地味に堅実に仕事をこなして、その働きが会社の支えとなっている。会社員小説というのは、そういった会社員に寄り添う存在なのかな、と思う。働く中での良いことも悪いことも小説の中に散りばめて。

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2012/07/19

ブルータスに紹介されている 会社員小説の研究本 半身プライベートで、半身会社に捧げているのが、会社員… p27給料と休暇と出世のことばかり考え働いている人々・・・ 肉体労働者は、月給を取っていてもサラリーマンとは言わない 日本では、ブルーカラー、ホワイトカラーの区別を言いた...

ブルータスに紹介されている 会社員小説の研究本 半身プライベートで、半身会社に捧げているのが、会社員… p27給料と休暇と出世のことばかり考え働いている人々・・・ 肉体労働者は、月給を取っていてもサラリーマンとは言わない 日本では、ブルーカラー、ホワイトカラーの区別を言いたがりません。 30格差が社会問題として大きく取り上げられるようになる 33梶山の出世作『黒の試走車』 55もっともうまくやっているのは村上春樹ではなかろうか。 61池井戸潤『シャイロックの子供たち』 68津村きくこ『あれぐりあとは仕事はできない』 85人間を描くことが小説の重要な役割であるとすれば・・・ 87明野照葉『家族トランプ』 102黒い『働くということ』 104 黒いが提示する労働の本質にもあてはまる。・・・・ 107スタッズ・ターケルのインタビュー集『仕事!』 157『毎日が日曜日』 169諸井薫『夕餉の仕度の匂いがする』 177千野帽子「毎日が日直。『働く大人』の文学ガイド」 184大量の紹介本あり 188『沖で待つ』 203会社員小説リスト 208そもそも会社員となった人間は、身体を二つにー「公」と「私」に分断されている。・・・・ 214人が人生のもっともいい時期に・・・・ 221岩崎と初期三菱が会社員誕生の先駆者だった・・・ 238盛田隆二『ありふれた魔法』『きみがつらいのは、まだあきらめていないから』 252たくさんの本が紹介されている。(企業への女性の進出について) 308半身であるから心がこわれ、一方で半身であるから会社の生活に耐えることができる

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2017/03/17

「会社員」というよく知られた存在に敢えて注目していて、どういうわけか読み手の関心をくすぐります。じぶんが会社員であるかどうかに関係なく、伊井さんの著作が好きであれば楽しめるでしょうし、氏の著作を読んだことがなくとも、これを読めば会社員がフシギな存在であることがわかるでしょう。 ...

「会社員」というよく知られた存在に敢えて注目していて、どういうわけか読み手の関心をくすぐります。じぶんが会社員であるかどうかに関係なく、伊井さんの著作が好きであれば楽しめるでしょうし、氏の著作を読んだことがなくとも、これを読めば会社員がフシギな存在であることがわかるでしょう。 氏のおかげで津村記久子『アレグリアとは仕事はできない』や庄野潤三「プールサイド小景」を読んでみたくなり、ハーマン・メルヴィル「書写人バートルビー」を再読したくなりました。というわけで、「会社員小説」をめぐる読書案内と思って読んでもいいかもしれません。

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2012/05/12

「どうして平凡な勤め人のことを書いた小説は数が少ないのだろう」 これは自身けっこう思っていたことである。平凡な勤め人は世の中に相当数いる気がするのに。小説に書かれるのは「恋愛」とか「死」が多く(これは高橋源一郎さんの『ニッポンの小説』の受け売り)それはなぜなのだろうか、と。その...

「どうして平凡な勤め人のことを書いた小説は数が少ないのだろう」 これは自身けっこう思っていたことである。平凡な勤め人は世の中に相当数いる気がするのに。小説に書かれるのは「恋愛」とか「死」が多く(これは高橋源一郎さんの『ニッポンの小説』の受け売り)それはなぜなのだろうか、と。そのことが「平凡な人」をなんとなく軽視しているような「文学さん」の居丈高な態度を思わせて、たまに「小説ばっかり読んでていいのかなぁ」という気持ちに囚われることがある。そんなことまあ気にしなければいいんですけどね。でも、たまにこういう感情が湧いてきて、全然小説を読まなくても平気な時期というのもあったりする。揺り返しで結局また戻ってくるんですけどね。 「会社員小説」というものを定義して、「会社員とは何なのか」という問いかけを探る伊井さんの試み。 庄野潤三『プールサイド小景』 長嶋有『泣かない女はいない』 絲山秋子『沖で待つ』 津村記久子『アレグリアとは仕事はできない』 上記のような小説を解剖して「会社員」を探る。いずれも好きだったり、読んでみたいとおもう小説ばかりなので楽しく読めた。 会社にいる時間と私生活の時間。そこが微妙に入り乱れるようなこともあれば、すっぱりと分かれることもある。また、会社での仕事っぷりがどのように描かれるか、といった視点もある。読んでいてわかるのは「何かを書くと別の何かが書かれなくなる」ということ。挙がっている小説について自身振り返ると、「会社」もしくは「お勤め」について何か書こうとすると、そこに特殊な雰囲気が醸成されるような気は確かにする。こういう類の本には珍しい図による説明なんかもあるのだが、それらは直接何かの結論を導こう、という風には使われてはいない。そこがさすがに小説家。軽やかに結論を先送りしながら「会社員小説」を巡る冒険に連れて行かれる。 「会社員小説」というのは一体どういう層の人が共感するのだろう。『泣かない女はいない』なんて、好きすぎて何度も何度も読んでいる小説だけれども、恋愛小説の要素も強いので、一般には「恋愛小説」として読まれているのかもしれない。「会社員」という要素について深く掘り下げたものを、実際に会社員として日々お勤めをしている人は手に取りにくいのかもしれない。働き盛りの人は忙しいし、小説以外のところに関心が向かう人も多いだろうから。しかし、ここにも出てくる黒井千次さんや坂上弘さんなどは、本格的な「会社員小説」を書いているような気がする。そして、その小説はその「最中」にいる人にはあまり手に取られないのかもしれない、という不思議な関係。本を一番読む(読める)のは学生時代とか若い時ではないか、という気がするが、その時には「会社員小説」で書かれていることが実感として湧かないのではないかとも思う。そういう意味で、こういう小説は時代の証言として貴重なんではないか、という風に思った。なんだかとりとめのないことを書いてしまった。 光があたりにくいところにはやはり何がしか架け橋が必要で、この本はまさにそんな本ではないかと思う。著者の言葉の裏側にあるものを汲み取ることのできる力に対して敬服の念を抱く。

Posted byブクログ