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古書の来歴(上) の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2012/07/28

面白かった。しかし、ただ楽しんだだけではなかった。これは一冊の貴重な古書をめぐる物語だ。現実に存在するユダヤ教徒の出エジプトを祝う儀式に用いるという歴史的価値の高いある古書が民族紛争に、世界大戦に巻き込まれ、ユダヤ教徒のための本でありながら二度もイスラム教徒に救われたその古書に思...

面白かった。しかし、ただ楽しんだだけではなかった。これは一冊の貴重な古書をめぐる物語だ。現実に存在するユダヤ教徒の出エジプトを祝う儀式に用いるという歴史的価値の高いある古書が民族紛争に、世界大戦に巻き込まれ、ユダヤ教徒のための本でありながら二度もイスラム教徒に救われたその古書に思いをはせ、想像の翼を大きく大きく広げ高く遠く羽ばたかせて紡いだ物語だ。そう、物語という想像力の賜物だ。 物語は紛争が終結しようとしている1996年のサラエボから始まる。古書修復師である主人公が紛争中、銀行の貸金庫に隠されていた古書の修復にあたることとなったからだ。そして本のなかに挟み込まれた蝶の羽や塩の結晶、ワインの染みという過去を探る手がかりから物語は時間を遡る。 ユダヤ教徒の苦悩とはいかなるものかその一端を私は初めて垣間見た。これは古書をめぐる物語であると同時にユダヤ教徒の迫害の歴史書でもある。またユダヤとカトリック、イスラムとの関わりの歴史だ。そして、ある意味で同じ起源をもつ三つの宗教を時代ごとに追い、その時代に生きる人間たちをあざやかに描きだしている。理不尽な迫害に泣き、たしかにこんな時代があったことをかみしめた。もちろんこれは物語だ。たとえ実在する書物を題材としていても空想の産物であり、実際の歴史ではない。しかしだからこそ胸に迫るものがある。この古書がたどった数奇な運命の一つの道を著者は見事に描いた。物語という夢のなかで。 面白かった。そして泣かされ、もっと知るべきだと思わされた。過去を、過去に生きた人々を。 上下、2巻。

Posted byブクログ

2012/05/14

ユダヤを含むヨーロッパの歴史がわからないとなかなか入り込めないが、現代と過去を交互に登場させることで、より一層の臨場感が楽しめる。

Posted byブクログ