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「ビジネス書」と日本人 の商品レビュー

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2012/08/05
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※このレビューにはネタバレを含みます

 ビジネス書といえば、書店に行くと英語学習本とともにたくさん並べられている分野のひとつだ。次から次へと発行されていくビジネス書。そんなビジネス書に関して高度経済成長期あるいはその直後に発行された本を取り上げながら、ビジネス書のベストセラーを通して見えてくる当時の日本人の姿を浮き彫りにしている。  インパクトの大きい本といえば、第5章で取り上げられているあの日本マクドナルトを始めた藤田田。その藤田が書いた「ユダヤ商法 世界経済を動かす」(ベストセラーズ、1972年)だ。規格外のモンスター経営者だからこそ、マクドナルドを日本に持ち込んで、今や良いか悪いかは評価が分かれるが、あのアーチ型のマークは日本の風物詩の1つになった。GHQのユダヤ兵に商売を学ぶとある。この中で相当鍛えられたともある。藤田がマクドナルドの経営に乗り出した理由を著書で次のように述べている。  日本人は総体的に蛋白質のとり方が少ない。だから、背は低いし、体力がない。国際的な競争に打ち勝つには、まず、体力から作らなければならない。私がハンバーガーに手を出したのも、日本人の体質を変えようと思ったからである。  日本人が肉とパンとイモのハンバーガーを、これから先、千年ほど食べ続けるならば、日本人も、色白の金髪人間になるはずだ。私は、ハンバーガーで日本人を金髪に改造するのだ。  今なら、トンでも説として片付けられるが、当時の時代背景を考えるとまじめに考えていたのが分かる。何しろ高度経済成長期で、欧米に追いつき追い越せとモーレツに突っ走っていた時代。何とかして日本人を骨太にして国際舞台でタフに生き抜いていけるだけの図太い人間にしようともくろんだのか。  もう1冊になったのは、第3章で取り上げられている林髞(たかし)著「頭のよくなる本 大脳生理学的管理法」 光文社/カッパブックス 1960年だ。この本が出版されてから「味の素」の売り上げが伸びたとある。その理由について、「味の素」に含まれルグルタミン酸が、頭によい作用をもたらすとあり、飛びついた人が多かったのだと想像がつく。ただし、「味の素」は、理論上は頭がよくなる可能性があるが、きちんとした研究結果がないとしてリスクにも触れている。今こんなことを書いて発表したら大変だ。マスコミにとってトヨタと並んで大がつくくらいのお得意様だけに、なかなか取り上げる勇気のあるテレビ局や新聞社はそうないだろう。  ついでに川上は「頭脳パン」についても言及されている。頭脳パンは、大橋二郎という、「製粉技術中央研究所」を設立した人物だ。林が唱えている「小麦ビタミンB1が頭を良くする」から、小麦粉にビタミンB1を加えた「頭脳粉」を開発したとある。頭脳パンといえば、大学生協においてあって食べたことがある。味は普通のパンと同じだ。何が頭脳か良く分からなかったが、こういう由来があったとは1つ利口になった気分だ。  そういえば、英語学習参考書の歴史について書いている人の本を読んだことがある。ビジネス書の歴史同様、あまり省みられない分野だけに印象に残っている。他にも意外なジャンルの歴史について触れている本があったら読んでみたいものだ。

Posted byブクログ