ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅(下巻) の商品レビュー
持っているのは旧版の上下2巻セットの「鈍器」だが、この下巻で印象が残ったロードス島のユダヤ人の運命について。1944年7月20日という非常に覚えやすい日にちにロードス島のユダヤ人に見舞った出来事について単独で書かれた本はないと思うし、見た限りではゲッツ・アリーの「ヒトラーの国民...
持っているのは旧版の上下2巻セットの「鈍器」だが、この下巻で印象が残ったロードス島のユダヤ人の運命について。1944年7月20日という非常に覚えやすい日にちにロードス島のユダヤ人に見舞った出来事について単独で書かれた本はないと思うし、見た限りではゲッツ・アリーの「ヒトラーの国民国家」くらいしかある程度言及している本はないかもしれない。 「国防軍と関係ないところで「ユダヤ人問題の最終的解決」が実行された」という意味の文章があるヴォルフガング・パウルの「最終戦」に最後のヒトラーの誕生日に唯一、祝いのパレードをした部隊として部隊名は出て来ないにしろ、ロードス突撃師団が登場し、偶然にしろ前師団長のクレーマンの名前が出て来るが、それだけ。こりゃダメだね。この本は「零時」の後、デーニッツ提督が「SS関係者」(実はヒムラーがフレンスブルクに連れてきた強制収容所の犯罪に関わる「SS関係者」)を海軍に編入したのは「戦友愛」であるかのように書いているし。 住民の構成や文化的にはともかく、当時のドデカネス諸島はイタリア領なのに「ギリシャ」の範疇に入れてしまったのは明らかにヒルバーグの間違いだが、ロードス島の支配者だったロードス突撃師団長のウルリヒ・クレーマン中将を「中尉」とあるのは原著なのか、それとも邦訳者の間違いなのか。記述については「ヒトラーの国民国家」の方が細かく、当時の位置づけも正確だ。 さてこの師団を巻頭に取り上げた「ラスト・オブ・カンプフグルッペⅢ」にはただの一言もロードス突撃師団が「柏葉付騎士十字章に輝く「苦労人」」師団長クレーマンの命令で何をしたのかが書かれていない。ペネロペ・クルスが出演したというハリウッド映画の素材になったからか、イタリア休戦時に武装解除したイタリア兵をドイツ軍が虐殺した事は書いているのに。この件でフーベルト・ランツ将軍は継続裁判で有罪となった事は書いていないが。これで「国防軍神話」なるものから目が覚めた。ロードス突撃師団は第999アフリカ軽師団の一部が母体となっているので執行猶予部隊という側面があり、中にはユダヤ人を匿っていたので逮捕されたが強制収容所からこの師団に配属された人がいるかもしれない。 ジーモン・ヴィーゼンタール嫌いの人間が書いた本でクレーマンがロードス島のユダヤ人をアウシュヴィッツへ送る時の下準備で会っていたというアイヒマンの部下をロードス突撃師団はE軍集団直轄なので?クルト・ヴァルトハイム中尉に入れ替えていたものがあった。 これじゃ困るけれどね。
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