夢で語るな日本のエネルギー の商品レビュー

鈴木光司,山本隆三【著】

2014/03/01

2012年に東北電力が大学祭で配布していた本の1冊目。再生可能エネルギーに対していかに原発が優れているかということと、電力自由化の問題について、前半は対談形式、後半は評論としてまとめている。

私はこの本に書かれている再生可能エネルギーの課題については納得できる。

確かに現時点において、自然エネルギーは技術的にも限界があり、供給が安定しないおそれがある。また自然エネルギーを導入することにより、消費者の負担額が増えるというのも確実だろう。欧米の動向も正しい。

電力の自由化で電力料金が下がらないというのも納得できる。

しかしだからといって原発が良いとはならないだろう。

まず原発を停止しても電力が足りなくなるというのは、震災以降、一度もそういう事態に陥らなかったことから考えて、嘘だということは明白である。それでも足りないというなら、他の発電設備でまかなうという方法もあるはずだ。

また「原発のコストが安い」というのも嘘である。仮に発電時のコストが安かったとしても、その後の使用済み核燃料やプルトニウムの処理、寿命に達した原子炉の廃炉費用など、発電から後処理にかかるトータルのコストを考えると、原発の方が遥かに高くなるはずだ。

後処理の費用は国が負担しているが、PPPの原則からいえば電力会社が負担するべきものだ。だから当然、発電コストに含めなければならないのだが、どういうわけかコストに含まれていない。

また原発の燃料に使われるウランも限りがある。ウランは発電後も死の灰として残る。他の発電方法ならこうはならないのに、「原発は他の発電方法と比べて環境に優しい」などと言えるのだろうか。

このように原発だろうと他の発電方法だろうと、どの発電方法にも一長一短があるのは当たり前だ。そして脱原発と言うなら、電気代の値上がりを我慢するぐらいすべきだと考える。原発は負の利益しか生まない。しかしそれでも原発を選択するという方法ももちろん残されている。いずれにしても、国全体をみてどの発電方法がベストなのか徹底的に話し合う必要がある。討論なくして選択することこそ、国を滅ぼしかねない。

この本は自然エネルギーのことを考えるきっかけにはなると思う。しかし参考文献や引用文献がなく、主張の信用性は乏しいため、学術的にほとんど役立たない本である。なのでこの本はあまりおすすめできない。

2012/04/11

内容は題名通り。
福島第一原子力発電所での事故後すぐに、テレビのコメンテーターは原子力なしでも電気料金を１０％程度上げるだけで経済への影響は少なく、原子力のエネルギー比率を下げるべきであると口をそろえて発言していた。

コメンテーターさん、自分の発言には責任を持ちましょう。

そんな彼らに、本書のような入門書を読んで感想文を書いてもらいたいものです。

本書は論点を提示するのみで、データによる詳しい論拠はあまり出てこない。
しかしながら、エネルギーについての議論をするにあたり、こんな事例があるとか、こんな事が問題点になっている（良好事例になっている）と知っていたほうがはるかに建設的な議論ができるのではないだろうか。