白きたおやかな峰 の商品レビュー
山に登ったことはないけれど、北先生の色の表現が大好きです。確かこの小説に出てくる青空の色を表現が記憶に残ります。
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※このレビューにはネタバレを含みます
著者の本も、いわゆる山岳物も初読みとなりました。 なかなか手を出してこなかった純粋な山岳物、こんな風になるんですね。 山に関する作品としては、浅田次郎著「八甲田山死の彷徨」を好きで何度か読みましたが、あの作品は真冬の八甲田山で行われた雪中行軍を描いた作品なので、純粋な山岳登山ではありません。 本作はカラコルムの未踏峰ディラン遠征隊に、雇われ医師として参加した体験に基づく小説で、これがいわゆるリアル登山という物なのだろう。 自分が最後に山に登ったのはいつだっただろう... 山に登ったと言っても富士山や剣岳などではなく、ハイキングの延長のようなものであったが、それですらすでに四半世紀ぐらい以前のように思います。 登山といえば最近では好きなTV番組である「世界の果てまでイッテQ!」登山部でイモトさんが挑む姿を思い浮かべます。 いつも凄いなぁって思いながら、視聴者として外野から見させて頂いているだけですが、ここ数年は一度は富士山に登ってみたいと思うようになりました。 時として大自然を前にして人間の力は無力なもの。 若い頃、サーフィンを通じて自然と一体化する感覚にハマった経験がありますが、ある意味で登山も同じ感覚があり、感動があるのだろう。 初読みとなった山岳物とし本作を選んだことは間違っていないと思います。 ラスト、たった1人で頂きを目指した増田がどうなったのかは描かれていませんが、だからこそ読み終えた読者がその先を想像し楽しめばいいと思います。 説明 内容紹介 カラコルムの未踏峰ディラン遠征隊に、雇われ医師として参加した体験に基づく小説。山男の情熱、現地人との交情、白銀の三角錐の意味するものは? 日本山岳文学の白眉。 内容(「BOOK」データベースより) ひょんなことから雇われ医師として参加することになった、カラコルムの未踏峰ディラン遠征隊。キャラバンのドタバタ騒ぎから、山男のピュアにして生臭い初登頂への情熱、現地人との摩擦と交情…。そして、彼方に鎮座する純白の三角錐とは一体何物なのか…。山岳文学永遠の古典にして、北文学の最高峰。 著者について 1927-2011。作家、エッセイスト、精神科医。「どくとるマンボウ」シリーズや、「楡家の人びと」で知られる。芥川賞、毎日出版文化賞、日本文学大賞、大佛次郎賞など受賞。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 北/杜夫 1927年、東京青山生まれ。本名・斎藤宗吉。作家、エッセイスト、精神科医。旧制松本高校を経て、東北大学医学部を卒業。『文芸首都』同人。1960年、半年間の船医としての体験をもとに『どくとるマンボウ航海記』を刊行。同年、『夜と霧の隅で』で芥川賞を受賞。作品に、『楡家の人びと』(毎日出版文化賞)、『輝ける碧き空の下で』(日本文学大賞)など、評伝に、“茂吉”四部作(大佛次郎賞)がある。2011年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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どくとるマンボウ・北杜夫が1966年に医師として随行したカラコルム・ディラン峰の遠征の経験に基づいて描かれた小説です。 カラチでのパキスタン政府との遅々とした交渉を終え、カラコルム登山口であるギルギットへ向かう飛行から物語は始まります。飛行機から見た重畳たる山並みに圧倒されたり...
どくとるマンボウ・北杜夫が1966年に医師として随行したカラコルム・ディラン峰の遠征の経験に基づいて描かれた小説です。 カラチでのパキスタン政府との遅々とした交渉を終え、カラコルム登山口であるギルギットへ向かう飛行から物語は始まります。飛行機から見た重畳たる山並みに圧倒されたり、闘志を沸かす隊員たち。ギルギットからディラン山麓までの恐怖のジープ移動。多数のポーターを使って荷揚げし設営したベースキャンプ。そして第一キャンプ、クレバスに阻まれた第2キャンプ。適地が見つからず苦労した第3キャンプ。稜線に設営した暴風の第4キャンプ。 この作品に特定の主人公は居ません。ごく平凡な日本人隊員と数人のハイポーターからなるチーム全体が主人公です(ただ、その中でポーターを引退し、今はコックとして同行しているメルバーンの存在は目立ちますが)。また、特別な事件や事故が生じたり、英雄的行為が有る訳でもありません。しかし、前進するに釣れどんどん高まる緊張感。そして最後のアタックで・・・・。エンディングは見事です。 おそらく小説化にあたり、登場人物のプロフィールは随分変えていると思います。しかしこの小説には、そこに居て、実際に体験した者で無いと描けないような生々しさが有ります。時折顔を出すマンボウ風のおふざけを程よいブレークと見るか、不要と見るかは、少し意見が分かれるかもしれませんが。 あまり有名では無い作品ですが、山岳小説の白眉だと私は思っています。
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北杜夫とか、辻邦生とか、この時代の純文学作家の文体には、独特の美しさがある気がして、なんだか気に入っている。 「白きたおやかな峰」というタイトルだけでも、やはりホレボレしてしまうよね。 そんなタイトルからも想像がつく、厳しくも美しい山の自然をリアルに描く筆致と、ドクトルマンボウそ...
北杜夫とか、辻邦生とか、この時代の純文学作家の文体には、独特の美しさがある気がして、なんだか気に入っている。 「白きたおやかな峰」というタイトルだけでも、やはりホレボレしてしまうよね。 そんなタイトルからも想像がつく、厳しくも美しい山の自然をリアルに描く筆致と、ドクトルマンボウそのままのドクターや、現地のコックのメルバーンをはじめとした人々を描くユーモアとが同居しているのが、北杜夫の真骨頂であり、この小説の最大の魅力なんだと思う。 だからみんな、もっと北杜夫を読むべきです。
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日本の登山隊が当時未踏峰のディランを目指す物語。登山隊の隊員たちのキャンプ生活の様子や、現地人との交流、未踏峰の様子などが作者独特の雰囲気でゆったりと読める。もちろん山岳物なので、頂上アタック時の厳しさも細かに表現されている。現地人のコックとドクター(作者本人)のやり取りが人間臭...
日本の登山隊が当時未踏峰のディランを目指す物語。登山隊の隊員たちのキャンプ生活の様子や、現地人との交流、未踏峰の様子などが作者独特の雰囲気でゆったりと読める。もちろん山岳物なので、頂上アタック時の厳しさも細かに表現されている。現地人のコックとドクター(作者本人)のやり取りが人間臭さを支えていて、山岳物にありがちなガチガチな印象を和らげている。結末がはっきりと分からないが、最後の数行から読み取るほかない。
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1965年、作者がカラコルムのディラン峰登山隊に山岳ドクターとして参加した体験に基づく小説。ディランは、それまでにイギリス隊、ドイツ隊の挑戦を退け、依然として未踏峰だった。小説は、この遠征隊の準備段階から語り始められ、しだいに速度を上げながら、頂上アタックへと向って行く。ドクター...
1965年、作者がカラコルムのディラン峰登山隊に山岳ドクターとして参加した体験に基づく小説。ディランは、それまでにイギリス隊、ドイツ隊の挑戦を退け、依然として未踏峰だった。小説は、この遠征隊の準備段階から語り始められ、しだいに速度を上げながら、頂上アタックへと向って行く。ドクターはベースキャンプからC1までしか行かなかったのだが、作家的想像力を駆使して、アタック隊員やサポート隊員の心情や、極限に置かれた彼らの状況を克明に描き出してゆく。最後には、山岳小説としては実に絶妙といえるラストシーンが待っている。
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再読。カラコルムの未踏峰ディラン峰に挑んだ日本の登山隊に随行したドクターの視点から描かれた小説。 冒頭の山々の描写をこのように描ける作家さんは、現代には居ないだろうなぁっと思う美文。 何度読んでも最終ページのひらひら舞い落ちる雪に震えがくる。
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