アメリカ合衆国と中国人移民 の商品レビュー
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19世紀にアメリカ大陸へ渡った中国人たちは、ほどんどが"苦力"(クーリー)と呼ばれる、奴隷同然の肉体労働者だと思われていますが、実はそれ以前に商売でアメリカ東部や中米・カリブ海に渡っていた中国人商人たちがいた!? と言っても、本書のテーマはそんなことではありませんw 中華帝国(清朝)の衰退により、食い詰めた貧民男性が低賃金で酷使される"苦力"とという年期奉公人アメリカへ渡り、大陸横断鉄道の敷設工事に大きく貢献したものの、職を奪われたアイルランド系移民に迫害され、人種差別で権利を制限される。 そういうステレオタイプな認識を見直す研究です。 移民を送出した中国側の事情、移民を受け入れたアメリカ側の事情、世界的な労働力移動を促したグローバルな国際的要因から、アメリカへ渡った中国人移民たちの歴史を分析。 ゴールドラッシュに沸くカリフォルニアへの中国人の渡航から、1882年の排華法による流入制限まで。 中国人労働者たちを歓迎した資本家たちや、中国人移民を積極的に受け入れようとした宣教師たち。 反面、中国人移民たちに職を奪われた下層白人労働者たちの反発と暴動。 李鴻章による洋務運動と、アメリカの中国に対する門戸開放通牒などから、移民を巡る外向的駆け引きなども。 アメリカへの移民全体や全人口から見れば微々たる人数でしかなかった中国人移民は、実はアメリカ人のアイデンティティーを揺るがす大きな存在だった!? キーワードは"南北戦争"。 奴隷解放後のアメリカ再建で、"アメリカ人"の枠をどこまでで制限するのか? 「移民の国」の理念と、下層労働者階級の不満という現実との間での、アメリカ合衆国の葛藤。 (個々の人々は苦悩などせず持論を大声で主張してますが、アメリカ全体ではどちらにすべきか苦悩してるように見えますw) 奴隷国家から移民国家へと生まれ変わろうとするアメリカの、「産みの苦しみ」とも言えますが、副産物としてパスポートの発明に繋がったのは興味深いです。 もう一つ特筆すべきは、当時のアメリカ社会の価値観を示す資料として、新聞の風刺画を大量に掲載しています。 特にトマス・ナストという画家の風刺画が多く、当時の中国人移民に対するアメリカ社会の態度を痛烈に批判していますが、アメリカ人の価値観がよく解ります。 同時に、アメリカの新聞がどの党派で、どういう理念を持っているのか?というのも各紙ごとに判って面白いですw アイルランド系は、必ず猿顔に描かれていますね(*^m^) ニン、トン♪
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