IZIS の商品レビュー
同名の写真展が JR 京都伊勢丹の美術館「えき」で開かれている.ブレッソンと同時代のイジスもやはり「決定的瞬間」を切り取っているのだが,その画面構成は優れて絵画的.サーカスの綱渡りを撮った 1 枚は 3 本のロープとバランサーが直線的に画面を分割し,フラットな背景に人物をコラージ...
同名の写真展が JR 京都伊勢丹の美術館「えき」で開かれている.ブレッソンと同時代のイジスもやはり「決定的瞬間」を切り取っているのだが,その画面構成は優れて絵画的.サーカスの綱渡りを撮った 1 枚は 3 本のロープとバランサーが直線的に画面を分割し,フラットな背景に人物をコラージュしたかのよう.白いユリカモメは川面に写る黒いビルの姿をバックに飛ぶ. またシャガールの製作過程を捉えたカラーのシリーズは,シャガール自身や画材までもが絵と地続きであるかのような不思議な魅力をもつ.これは 1960 年代前半のカラーフィルムの粒子が粗いために生まれた効果かもしれない.アトリエの中で絵を描いているシャガールはブレることなく写真に捉えられている.アトリエのアベイラブルライトで動きを止められるだけのシャッターを切るためにはそれなりの感度が必要となり,当時の技術では粒子はまだまだ粗かったと考えられる.カラーで撮られたシャガールのざらっとしたテクスチャは,絵のタッチとあいまってまたひとつの絵画的な画面を生み出している. イジスがどのようなカメラやフィルムを用いていたのかなど写真技術に関する記述がまったくないのは少し残念だが,純粋に画面がどのように構成されているのかに集中して鑑賞すると得るものは多い.また望むべくもないことだが,深くみるにつれてこの画面構成の外に何があるのかについて知りたくなってくる.イジスが何を画面の外に追いやってこれを切り取ったのかが知りたい.レンジファインダーのフレームを覗くように画面の内と外をみてみたい.
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