“古典的なるもの"の未来 の商品レビュー
イタリア人文学の専門家による、西洋文明における「古典的なるもの(クラシカル)」についての解釈論。主として遺跡、建造物、美術品など、古代文明を手がかりとして焦点を当て、自らの国家や文化圏の優位性を支えるために「古典的なるもの」を利用する歴史的研究者を批判している。文化や神話、迷信な...
イタリア人文学の専門家による、西洋文明における「古典的なるもの(クラシカル)」についての解釈論。主として遺跡、建造物、美術品など、古代文明を手がかりとして焦点を当て、自らの国家や文化圏の優位性を支えるために「古典的なるもの」を利用する歴史的研究者を批判している。文化や神話、迷信などを基に美術史や文化人類学などの狭い範囲を研究の対象としており、あまり興味のわく内容ではなかった。 「「古典的なるもの」という用語そのものが、ギリシアおよびローマの古代全体を指すこともありえたと同時に、その一部のみを指すこともありえた」p100
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1.サルヴァトーレ・セッティス『〈古典的なるもの〉の未来』ありな書房、読了。古代から現代へ至るヨーロッパ精神史を“classical”を切り口にヨーロッパとは何かを浮き彫りにする好著。著者は古典的なるものの再興が果たしてきた役割を検証するが、時代ごとの強調点に違いがある。 2.S.セッティス『〈古典的なるもの〉の未来』ありな書房。ギリシア・ローマの文明は、ヨーロッパのルーツと憧憬されるが、現在でいうヨーロッパ的要素とほど遠い要素も多い。それが、廃墟と美術作品を通して理想化され、ヨーロッパ化されていく構造の指摘は刮目させられる。 3.S.セッティス『〈古典的なるもの〉の未来』ありな書房。歴史の連続に人は注目するが、断絶を連続へと転換するのが歴史なのだろう。邦訳で二百頁未満の小著ながら、人文学の伝統とその変遷をたっぷりと味わうことのできる一冊。ヨーロッパ文明とそのの根幹にあるものに触れることができる。了。
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