相田家のグッドバイ の商品レビュー
相田家の物語で何の事件も紆余曲折など小説としてはおもしろ味がないのに、語りが淡々としているからか、興味深いように読めるような文体だからか苦もなく淡々と読み進める。でも困った事もどん底もない平和な家庭に育ち、両親の介護も皆無でしかも早期退職で海外に移住。羨ましい生活を送っている。世...
相田家の物語で何の事件も紆余曲折など小説としてはおもしろ味がないのに、語りが淡々としているからか、興味深いように読めるような文体だからか苦もなく淡々と読み進める。でも困った事もどん底もない平和な家庭に育ち、両親の介護も皆無でしかも早期退職で海外に移住。羨ましい生活を送っている。世の中不公平だとつくづく思う話ではあった。
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紀彦が副業で作家を始めて、大学の給料を大きく超えるというエピソードはないものの、物語の骨格は自伝と言ってよいのだろう。ご両親の描写は誇張されたものとなっているが、基本の考え方などはこんな感じだったのだろうとうかがえる。
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淡々と綴られた家族の一生が私には重く、みるみる暗い気持ちになっていった。誰にも親はいて、他人事ではない。 それが終盤になると鼻の奥がツンとしてきた。人生の後半に差し掛かったら分かることもあるだろうか。生物が生きて死ぬということはこういうことだと示してくれているような本だ。 親孝行や社会に対する考え方が共感できた。 明るい話ではないが、これを読んで心が軽くなる人もいるだろうと思う。
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森博嗣の自伝的家族小説。 ちょっと変わった親として描かれる父母は、なかなかどうして悪くない。特に父親は相当偏屈のように描かれるが、一本理屈が通っていて、その生き方は潔い。 他者との関わり方、家族、家に対する考え方、世間的にこうあるべきとされていることよりも、自分の中で理屈が通るかということに重きを置く生き方、そしてそのように子供を育てる姿、どれをとっても爽快である。 父母と兄妹の4人で築かれた相田家。そこには祖父母は愚か、息子の子供さえも加わらない。子どもが独立したら、そこは別の家。父母が亡くなった時点で相田家は終わる。子供を頼らず、自分の最期は自分で始末をつけるその潔さ。 私もこんな風に死んでいきたいと思った。そして、死ぬときには「ありがとう」と言ってこの世を去っていけたらそれでいい。
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ただ淡々と静かに当たり前に語られる相田家の2世代の物語だけど心に沁みてくる。とりわけ父親の老年期の話では我が家の数年前とシンクロするようで他人事とは思えない気持ちだった。取り立てての山や谷があるわけでもなく当たり前に静かに時が刻まれて行くだけなのに いや だからこそ我が家の物指し...
ただ淡々と静かに当たり前に語られる相田家の2世代の物語だけど心に沁みてくる。とりわけ父親の老年期の話では我が家の数年前とシンクロするようで他人事とは思えない気持ちだった。取り立てての山や谷があるわけでもなく当たり前に静かに時が刻まれて行くだけなのに いや だからこそ我が家の物指しとは違うけどよく解る佳作です♪
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自伝的小説か、私小説か...。森先生のご家族を描かれたと思われる内容だけれど、淡々と、しかし初期の作品よりも少し湿った文章でこの相田家の生まれから終わりを綴っていく。 死、と言えば悲しいと一般的に思われるかもしれないが、自分の父親が死への過程、そして死に直面した時は、思ったよりも...
自伝的小説か、私小説か...。森先生のご家族を描かれたと思われる内容だけれど、淡々と、しかし初期の作品よりも少し湿った文章でこの相田家の生まれから終わりを綴っていく。 死、と言えば悲しいと一般的に思われるかもしれないが、自分の父親が死への過程、そして死に直面した時は、思ったよりも冷静で落ち着いていたから、その意味では主人公の考え方に共感できているし、最後に自分が生まれた相田家の全てを消し去ろうとする姿勢も分からなくもなかった。 家族というのは、言わば密室のようなもので、いくら相田家のようにお互いに干渉しないスタンスでも、見えないところで実は繋がっていて、主人公も親の死でようやくそれに気付いたように思える。 正直大して発見や閃きのあるような作品ではなくて、印象に残ってる部分も少ないけれど、一つだけ肝心したのは、一番近しい人間、親しい人にはちゃんと「ありがとう」と言えるのか?諸々あって自分の父親には言えなかったし、言おうとも思えないが、案外それが難しいことかもしれない。表面上の言葉ではなく、感謝し感謝されるような人生ができたら、どんなに良いだろうか。
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そもそも自分一人だけの時間と空間が好ましい、という絶対的な指向がある。他者と一緒にいること、生活を共にすることは、たとえ愛する者どうしであっても、その基本的な指向を抑制し、我慢をすることでしか成り立たない。 (P.160)
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相田家の2代にわたる家と家族のストーリー。 子どもが巣立ち、両親が老い、亡くなり、家を片付け、自分もこれからを考え、新しい相田家を作っていく。 親も子もそれぞれが淡々と干渉せず暮らしてきたようで、実はその暮らし方、価値観などが家族として受け継がれていたのかもしれない。 親の死...
相田家の2代にわたる家と家族のストーリー。 子どもが巣立ち、両親が老い、亡くなり、家を片付け、自分もこれからを考え、新しい相田家を作っていく。 親も子もそれぞれが淡々と干渉せず暮らしてきたようで、実はその暮らし方、価値観などが家族として受け継がれていたのかもしれない。 親の死の迎え方。家のたたみ方。相続・退職・新しい老後の生き方。淡々とではあるが、深く考えさせるものがある。 これは、森博嗣の分身?
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百年孤独のような重みはない,赤朽葉家のような波瀾はない,精霊たちの家のような神秘もない。先生は自分流な大衆観念を少し逸脱した理屈っぽいなこの大半生において沈殿抽出された家族観、生死観と生活観を淡々に述べていて、この素朴な洗練な平凡な物語こそ、私自身の家族メモリーを喚起してくれる。...
百年孤独のような重みはない,赤朽葉家のような波瀾はない,精霊たちの家のような神秘もない。先生は自分流な大衆観念を少し逸脱した理屈っぽいなこの大半生において沈殿抽出された家族観、生死観と生活観を淡々に述べていて、この素朴な洗練な平凡な物語こそ、私自身の家族メモリーを喚起してくれる。題名のgoodbye通り,人の人生は別れを告げるための過程。ps:先生は奥様への感謝の気持ちは駄々漏れだな~
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グッドバイ=死、もしくは無。 一組の夫婦の歴史を息子の視点から描いている。 人が生まれ、成長し、働き、家庭を築く。そして、病気や老いで死んでゆく。 どこにでもあるサイクルであり、淡々としている。このサイクルについての記述を何世代分も積み重ねたら、ガルシア・マルケスの「百年の...
グッドバイ=死、もしくは無。 一組の夫婦の歴史を息子の視点から描いている。 人が生まれ、成長し、働き、家庭を築く。そして、病気や老いで死んでゆく。 どこにでもあるサイクルであり、淡々としている。このサイクルについての記述を何世代分も積み重ねたら、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」のようになるかもしれない。 p168「子供の頃から成長し、一所懸命働いて、少しずつ獲得してきた自由を、今度は手放していかねばならない。すっかり手放してから、あの世へ旅立つのである。」 幸いなことに、自分はまだ「自由」を手放す段階には至っていない。「自由」を獲得するために、我慢をしながら働いている段階。 どうせ手放すことになる「自由」のためにそこまで頑張る必要があるのか。分からないけれど、きっと何もしないよりは良いのだろう。 さまざまなシガラミをすべて断ち切って、遠くへ行きたくなった。
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