「第5の戦場」サイバー戦の脅威 の商品レビュー
陸上自衛隊初のサイバー戦部隊を率いた元自衛官による著作。 サイバー空間は「第五の戦場」と位置付けられる。(陸上→海上→航空→宇宙→サイバー) 戦略上、「高地を取ったものが有利」であるが、サイバー空間は相手国の指揮通信機能、心臓部を撃つことができる、究極の高地。 これほど重要性...
陸上自衛隊初のサイバー戦部隊を率いた元自衛官による著作。 サイバー空間は「第五の戦場」と位置付けられる。(陸上→海上→航空→宇宙→サイバー) 戦略上、「高地を取ったものが有利」であるが、サイバー空間は相手国の指揮通信機能、心臓部を撃つことができる、究極の高地。 これほど重要性を増したサイバー空間の戦争に対し、各国はどう取り組んでいるのか。 アメリカ:サイバー攻撃は「戦争」であり、ミサイルなど通常戦力による報復も辞さない、というドクトリン ロシア:かつては「核攻撃による報復も辞さない」と公言していたが、今ではサイバー戦に自信を深め、逆にグルジアなどに攻撃を仕掛けた可能性すらある。 中国:戦争には手段を選ばない、と公言しており、化学兵器などと並んでサイバー攻撃も準備している。また、各国に対し恒常的なハッキングを挑んでいる。 日本:現状の法体系では、自衛隊にサイバー戦、防衛の権限すらない。自衛隊自身のシステムを防衛するための部隊があるのみ。 サイバー戦の手段と実践例 (DDoS、マルウェア、イラク防空システム、シリア防空システム、スタクスネット) サイバー戦における戦術と戦略 (戦術:指揮通信システム/輸送兵站システム/武器システムへの攻撃) (戦略:インフラの破壊/無力化) ※サイバー戦は、著しくコストパフォーマンスが良いので、北朝鮮はじめ貧者の武器として注目されている。 ※通常の戦略兵器が、じわじわと相手国を弱体化させていくのに対し、戦略的サイバー攻撃は、最初にインフラ破壊などの効果が出るが、時間とともに対応策が実施され、影響力が減衰するという性質を持っている。 サイバー戦の機能 (情報収集/攻撃/防御) 各国の取り組み アメリカ:1997年の「エリジブル・レシーバー」以来、国防システムにたいする攻撃演習を年1回行うことを義務化、300万ドルを投じている。 アメリカは電力網に脆弱性があり、またレガシーなアクセス方法がいまだに残っており、それらを狙ったサイバー攻撃に神経質になっている。 中国: 軍事利用:アメリカなど他国への攻撃準備、情報収集 経済利用:日本企業の技術など、産業スパイ 政治利用:国内外の反政府勢力への監視、攪乱 ロシア:以下のような実績?があるように、国家レベルの技術力は高い。 エストニアに対するサイバーアタック(の疑い) グルジアに対するサイバーアタック(の疑い) さらに、民間レベルの技術力も高く、ハッカー集団による他国への攻撃やDDoSサービス提供が行われている。
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著者の伊東さんは陸上自衛隊初のサイバー戦部隊・システム防護隊の初代隊長を務めた経歴の持ち主で、現在は民間のセキュリティ研究機関の所長を務めています。 本書は日本有数のサイバーセキュリティ専門家である伊東さんの手による未来の戦争、サイバー戦の解説本となります。 中国からのサイバー...
著者の伊東さんは陸上自衛隊初のサイバー戦部隊・システム防護隊の初代隊長を務めた経歴の持ち主で、現在は民間のセキュリティ研究機関の所長を務めています。 本書は日本有数のサイバーセキュリティ専門家である伊東さんの手による未来の戦争、サイバー戦の解説本となります。 中国からのサイバースパイ等、サイバーセキュリティ/安全保障に関するニュースが従来よりも頻繁に報道される昨今。 世界各国はこのサイバー空間に対してどの様な姿勢で向かいあっているのかという点について簡単に知りたければ本書はお勧めです。 では、前置きはこの位にして以下で簡単に内容紹介。 本書は、序章、終章を合わせると全7章から構成され、それぞれ ・序章 サイバー攻撃が日本を直撃した場合のシミュレーション ・1章 サイバー空間内における世界情勢の解説。 かつては自分の能力を誇示するためのいたずら目的に行われたサイバー攻撃が現在では金銭目的の犯罪行為に変化。また自らの政治的要求に基づきサイバー攻撃を行う事も。 その他、各国政府によるサイバー空間の軍事利用例の紹介。 ・2章 サイバー戦とは具体的にどの様なものなのかを解説 ・3章 アメリカ、中国、ロシア、北朝鮮など世界各国のサイバー軍事力の整備状況の推測とサイバー戦の実例の紹介 ・4章 サイバー戦に関する国際法機の整備状況の解説 「サイバー犯罪条約」(2004年7月発効)等があるが実効性は殆ど無い ・5章 日本におけるサイバーセキュリティの状況とその問題点の解説 サイバー空間に対する国家戦略がないため、各省庁が省益追求型の対策を推し進めている 現在、サイバー攻撃は「武力事態」の範疇外になっている為、外国軍からのサイバー攻撃に対して自衛隊が反撃する事は法律で認められていない。 外国製のセキュリティ対策ソフトに細工を仕掛けられると深刻な事態になるので国産のセキュリティ対策ソフトが必要。 個人、企業・団体が取るべきサイバーセキュリティ対策の紹介 ・終章 総論 となっています。 本書は公開情報をまとめ、それに基づき著者の主張が述べられていると言った感じです。 その為、以前読んだことがある「世界サイバー戦争」等、関連書籍等を既読の方にとっては本書に書かれていることは既に知っていたと言う事も多いかと思います。 しかし、それ以外の方にとっては新書形式でコンパクトにサイバー戦の現状について解説した本書は、十分参考になるのではないかと思います。 また関連書籍を既読の方にとっても、日本のサイバーセキュリティに対する取り組みについてまとめられた類書は数少ないので、試しに一読してみる価値はあるのではないでしょうか。 いずれにしても、陸上自衛隊初のサーバー戦部隊の初代隊長だった人物が何を考え、何を懸念しているのかについて興味をお感じであればお勧めです。
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元自衛官による著書。 危機意識は呼び起こされるものの、現状を今の時代にフィットさせるにはハードルが高く、そして多過ぎる事に絶望感を抱いたのは自分だけではあるまい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
国家はもちろんだけれど、その下部機関の学校うという組織も情報管理面では非情に危うい。「第5の戦場」サイバー戦の脅威(伊東寛)を読んで日本のサイバー戦略の実情を一文を学校版に翻訳してみたらこうなるか。 本来、「国家の守るべきものは何か、それをどうやって守るか」という大方針(国家戦略)があって、その上にそれぞれの分野における戦略が構築されるべきものであろう。このような省益優先の迷走を見るにつけ、そもそもこの国に確かな国家戦略はあるのか、と心配になる。 ↓ 本来、「学校の守るべきものは何か、それをどうやって守るか」という大方針(学校経営戦略)があって、その上にそれぞれの学校における戦略が構築されるべきものであろう。このような大綱的なセキュリティポリシーが無いまま、ローカルで学校IT化を進ませ、結果トラブルに汲々としている様を見るにつけ、そもそも学校には確かなIT化戦略はあるのか、と心配になる。 という感じになりましょうか。 わかりやすい文体で、サイバー攻撃の事例と各国の対策状況、および日本の対策の遅れなど、これからのサイバー戦時代を迎える上での心構えができる本という位置づけかな。 読んで損はない本です。いやマストに近いかな。
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陸自のサイバー戦部隊、初代隊長だった筆者が、日本と世界のサイバー戦の現状を冷静に分析した一冊。第三章「世界各国のサイバー戦事情」は中弛みの感もあるが、第四章に書かれた「サイバー戦を戦争と定義した意味」と、第五章の「日本のおかれている現状」は一読の価値あり。
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