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西郷信綱著作集(第2巻) の商品レビュー

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2024/01/26

『古代人と夢』(1993年、平凡社ライブラリー)と『古代人と死―大地・葬り・魂・王権』(2008年、平凡社ライブラリー)の二作品を収録しています。 『古代人と夢』では、日本の古典文学などにえがかれる夢についての考察をおこない、当時の人びとが現代人とはまったく異なる価値を夢にあた...

『古代人と夢』(1993年、平凡社ライブラリー)と『古代人と死―大地・葬り・魂・王権』(2008年、平凡社ライブラリー)の二作品を収録しています。 『古代人と夢』では、日本の古典文学などにえがかれる夢についての考察をおこない、当時の人びとが現代人とはまったく異なる価値を夢にあたえていたという著者の主張が展開されています。 現代では、夢は現実から完全に区別され、それが意味をもつとしても、精神分析のような観点からその意味が読み解かれることがあるにすぎません。しかし著者は、古代の人びとにとって夢がもつ意味を理解するためには、「夢と「うつつ」を従来のように単純に機械的に対立させるのではなく、夢もまた一つの「うつつ」、一つの独自な現実であると考えねばならない」と著者は述べて、夢は古代人にとって神話と同様に公的な意味をもっており、彼らの世界観の一部に位置づけられることを示しています。 『古代人と死』は『古代人と夢』の姉妹編で、古代の人びとにとって死がどのように理解されていたのかということを考察しています。とりわけ、天武天皇の葬礼についてくわしい検討がなされており、エルンスト・カントロヴィチの『王の二つの身体』 を踏まえて、古代における王権の継承がどのようなしかたでなされたのかということが論じられています。また、「黄泉の国」にかんする議論や、オオモノヌシやタケミナカタについての議論も含まれており、著者の記紀神話研究を補完する内容にもなっています。

Posted byブクログ