泣くな、わが子よ の商品レビュー
1950年ごろのケニアを舞台にした、著者の自伝的小説。 英国の植民地政策により農地を奪われたゴゾ一家は、本来先祖のものであった土地で、作男をしている。 ゴゾの年長の息子たちは、第二次世界大戦で英国の徴兵により出征し、ある者は死に、ある者は人生観を変えられて帰国する。末弟にあたる...
1950年ごろのケニアを舞台にした、著者の自伝的小説。 英国の植民地政策により農地を奪われたゴゾ一家は、本来先祖のものであった土地で、作男をしている。 ゴゾの年長の息子たちは、第二次世界大戦で英国の徴兵により出征し、ある者は死に、ある者は人生観を変えられて帰国する。末弟にあたる戦争を知らない主人公ジョローゲは、英国系の学校へ通い身を立てることを夢見ている。 ゴゾ一家は英国の植民地支配のあらゆる負の面を背負う。しかし一方で、英国式教育により身を立てることが、一家の唯一の希望にもなっている。この背反性は読んでいて切ない。一家は次第に混迷の渦に呑み込まれる。 息子の一人は優秀な成績で将来を嘱望され、また別の息子は植民地政府に捉えられ、また別の息子はゲリラ闘争を指揮する。かくして主人公ジョローゲは、「明日は明日の日が昇る」的な理想像を失っていく。 これが「自伝」的だという事実。それだけで考えさせられる材料としては十分重い。
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植民地化されたケニア。現地の人々はイギリス人のためにドイツ人と戦うことを余儀なくされた。さらに祖先から受け継がれた土地を奪われ、白人に安価な給与で雇用されている。 ケニアは一夫多妻制で、主人公の家族には2人の母親がいるが、異母兄弟たちは助けあって暮らしている。生活は貧しいがその中...
植民地化されたケニア。現地の人々はイギリス人のためにドイツ人と戦うことを余儀なくされた。さらに祖先から受け継がれた土地を奪われ、白人に安価な給与で雇用されている。 ケニアは一夫多妻制で、主人公の家族には2人の母親がいるが、異母兄弟たちは助けあって暮らしている。生活は貧しいがその中でも賢い1人の少年が学校に行けるように家族は支援する。教育がないとこれからも自分たちは搾取されるのだろう、だから英語を勉強しなければならない、という彼らの考えに、この本の読者はいささかの矛盾があると気がつくかもしれない。 1952~1956年のイギリス人への抵抗運動として実際に起こったマウマウ団の乱をベースした物語。おそらく著者の家族が描かれているのであろう。あまり馴染みの無いアフリカの名前が多く登場するが、巻頭に人物紹介の一覧あり。 (この本には書かれてはいないが)著者グギ・ワジオンゴはケニア公用語の英語ではなく民族語のキクユ語で創作することを宣言しているそうだが、表紙には英語でのタイトル“Weep Not, Child”と掲載されている。果たしてこれは英語からの重訳なのだろうか。残念ながら翻訳がこなれているとは言えず、日本語が非常に読みにくいが、当時のケニアを知る機会にはなる作品ではある。 この本は英語圏では教材にも使われているらしい。 (参照:ペンギンブックス) http://www.amazon.co.jp/Weep-Child-Penguin-African-Writers/dp/0143106694 短い要約版もあるようだが、Amazonのレビューではこれでは内容を伝える意味が無いと批判されている。(それは教材として普及しているせいかもしれない) http://www.amazon.co.jp/Weep-Not-Child-Macmillan-Readers/dp/1405073314 アフリカへの植民地支配は現地人に英語やフランス語の教育、キリスト教をもたらしたが、彼らがこうして自分たちの物語を語り、その本が出版されて”英語で”世界中で読まれて評価されていくという現実は皮肉でもある。世界に対する理解とは何だろう?
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