震災句集 の商品レビュー
俳人長谷川櫂の十年あまり前の震災の年の句集です。感想はブログに書きました。できれば、そちらを覗いてみてください。 https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202312200000/
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本の帯には”山河慟哭”なんてセンセーショナルな言葉の並ぶ句を配した煽り文句があるが、内容はもっともっと淡々としたもの。季語という制約のある俳句、それゆえに季節のなかの一つの出来事であるかのようにこの未曾有の震災を眺めている。本人も承知の上、あとがきで、「俳句で大震災をよむということは大震災を悠然たる時間の流れのなかで眺めることにほかならない。それはとても非情なものとなるだろう。」と述べている。 3月の朝日俳壇の投稿句も、この震災に関わるものが多く、震災忌、原爆忌という新たな季語を、という選者の意見もあり、それはともすると当事者の気持ちを忖度してない考えかもしれないかな、などと思ってはみたけれど、それもで、やはり人智を超越した自然の猛威に晒されたときは自分もやはり自然の一部分でしかないと思い、大気圏の外から眺めるような気持ちで、やりすごすんだろうな、と思う。 そんな、超然とした句、時空を超えたかのような視点で描く句の多い長谷川櫂の句は気持ちがよい。この句集は、他の句集と較べて、そんな高みから眺めて句は、どちらかというと少なく、より地面に近い目線のものが多いけど、通底する思いが、”悠然たる時間の流れのなかで眺める”ことにあるのがいい。 以下、おきにいり; 「幾万の雛わだつみを漂える」 「早蕨(さわらび)やここまで津波襲ひしと」 「みちのくをみてきし月をけふの月」 「湯豆腐や瓦礫の中を道とほる」 「億年の時間の殻に牡蠣眠る」 「葦牙(あしかび)のごとくふたたび国興れ」
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震災がった年の年始から1年間の世の中を、季語のある俳句(5、7、5)で表現した。「一望の瓦礫を照らす春の月」など。「漢字一字で1年を表現する」みたいに、俳句という手段で、もうひとつ別の表現力を獲得出来るんだと思った。
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震災にちなむ俳句集。 震災歌集という短歌を編纂したものよりも,やや遅れて発行している。 歴史を刻むにはよい試みだ。 たとえば 竹串に一握りづつ春の雪 という句のよこに,笹かまぼこという注記がある。 小さいもじなので苦にならないし,参考になる。 長い注記より,最小限の情報で,気が利いている。 さすが詩人だと思った。
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現代を代表する俳人に失礼な物言いになるけれど、洗練された写実の格調高さの一方で、向こう見ずに時代に向かっていく迫力、諧謔性やアイロニーに乏しい著者の句を、僕は予てから不満に思っていた。しかし、今回は随分と向こう見ずだ。もちろん意識的に。現時点ではホームランかファールかの判別の難し...
現代を代表する俳人に失礼な物言いになるけれど、洗練された写実の格調高さの一方で、向こう見ずに時代に向かっていく迫力、諧謔性やアイロニーに乏しい著者の句を、僕は予てから不満に思っていた。しかし、今回は随分と向こう見ずだ。もちろん意識的に。現時点ではホームランかファールかの判別の難しい句がほとんどだが、文句なしのスタンドインを見せ付けられる日もそう遠くはないだろう。「滅びゆく国にはあらず初蕨」「桜貝残されしもの未来のみ」「生き残る人々長き夜を如何に」「億年の時間の殻に牡蠣眠る」「日本の三月にあり原発忌」。
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