イノベーションの地域経済論 の商品レビュー
地域におけるイノベーション政策に関心があるかたはぜひ読んだほうがよいと思います。経営学からのイノベーション理論と地理学からの地域関係論等を統合した非常に鋭い分析力がある本です。 長野県のカーボンナノチューブ実用化、山形県の有機EL実用化、スコットランドのバイオ産業クラスター等につ...
地域におけるイノベーション政策に関心があるかたはぜひ読んだほうがよいと思います。経営学からのイノベーション理論と地理学からの地域関係論等を統合した非常に鋭い分析力がある本です。 長野県のカーボンナノチューブ実用化、山形県の有機EL実用化、スコットランドのバイオ産業クラスター等について事例研究がなされています。 基本的に科学技術型イノベーションを取り上げており、核となる大学研究者、地域内外の企業内研究者、それを広げる土壌となるコーディネーター(県等)がアクターとなるようです。 地域のイノベーション政策を語る上では、産業クラスターもそうですが、地域内にアクターとなる企業が近接していることが重要だという論調が多くありましたが、長野県・山形県の場合も、地域内外の企業内研究者がフェーズごとに様々な役割を果たしているようです。長野県の場合は、研究段階では、地域企業との緩やかな連合体としての共同研究(ただし大学教授と企業との一対一の関係)、山形県の場合は、研究段階では地域企業が入る余地が少なかったため、地域外大企業をひとつの研究所に集めて、研究をするという関係性があったようです。 そのため、企業の地域的近接性ということ以上に、(人的)関係的近接性のほうが重要だと示されています(もちろん近くにいたほうが関係的近接性は高まる)。 地域イノベーションの形態には、様々な形態があり、地域内の企業の持っている資源によって、イノベーションプロセスのどの部分で活躍するのか、どの部分で地域外の企業等が活躍するのかが非常に明瞭に表れています。 地域のイノベーションを考える上では、いかに地域内の企業と地域外の企業の資源を見極めて、フェーズごとにどのようにイノベーションプロセスをデザインするかが、非常に重要だと感じました。
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