押し入れの虫干し の商品レビュー
些細なことを覚えていたりする。小指をぶつけるように思い出したりする。すっかり忘れてしまって逆さまにしたって出てこないこともある。積もり積もってわたしがここにいる。まだなんでもなかった女の子の、なんでもない日々の記憶。文中の太い字はとてもおとなで、挿まれたこどもの絵とのあいだでゆら...
些細なことを覚えていたりする。小指をぶつけるように思い出したりする。すっかり忘れてしまって逆さまにしたって出てこないこともある。積もり積もってわたしがここにいる。まだなんでもなかった女の子の、なんでもない日々の記憶。文中の太い字はとてもおとなで、挿まれたこどもの絵とのあいだでゆらゆらただよった。
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幼い頃の記憶も、彼女の場合、食べ物にまつわるものが多いようだ。 というか、食べ物にからんで記憶している、ようだ。 「台所の天井には、見たこともなき赤黒くて長いものが、何本もぶら下がっていた。Sちゃんちに遊びに行くたんびに、私はその長くて赤黒いものを、食べてみたくてたまらなかった...
幼い頃の記憶も、彼女の場合、食べ物にまつわるものが多いようだ。 というか、食べ物にからんで記憶している、ようだ。 「台所の天井には、見たこともなき赤黒くて長いものが、何本もぶら下がっていた。Sちゃんちに遊びに行くたんびに、私はその長くて赤黒いものを、食べてみたくてたまらなかった。(略)それは生まれて初めての強烈な味だった。新しい木の匂いと合わさって、ママちゃんのお化粧のいい匂いも合わさって、見たことも行ったこともない、どこか遠い外国の味がした」というサラミソーセージとか。 毘沙門さんのお祭りも、 「りんご飴、お好み焼き、カルメ焼き、味噌おでん、いかの丸焼き、べっこう飴、焼きそば、やきとり」 として記憶される。 限りなく自伝エッセイに近い物語。 なんだか本当に、昔の作文や絵や古いアルバムを放り込んだままの押し入れに、迷い込んだようだよ。
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高山さんの少女時代を垣間見れる物語。私の大好きな彼女の独特な文体が散らばって、味わいがあり良かった。
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