「むだ」と「うがち」の江戸絵本 の商品レビュー
巻頭で黄表紙についての概説が述べられ、続いて精選された5作品が収録されている。田舎から出てきて江戸文化に翻弄される男を嘲笑する『金々先生栄花夢』、流行語に人格を与えるという突飛な発想で読む者を唖然とさせる『辞闘戦新根』、自意識過剰の男とその周囲の女たちの心理を鋭く穿った『江戸生艶...
巻頭で黄表紙についての概説が述べられ、続いて精選された5作品が収録されている。田舎から出てきて江戸文化に翻弄される男を嘲笑する『金々先生栄花夢』、流行語に人格を与えるという突飛な発想で読む者を唖然とさせる『辞闘戦新根』、自意識過剰の男とその周囲の女たちの心理を鋭く穿った『江戸生艶気樺焼』、寛政の改革を戯作者の眼で透視した『天下一面鏡梅鉢』、作者自身のみならず黄表紙の制作過程までも戯画化してしまった『的中地本問屋』である。それぞれの作品については、冒頭で解題が示され、本文を挟んで、背景も含めた解説が述べられている。本文は、影印と文字部分を活字化したものとその現代語訳、絵に対する場面解説から構成されている。(達)
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1775年から1806年までの江戸で出版された黄表紙の五作品の解説。一見「ムダ」と思われるほど突飛なパロディーと、人生のやや情けない部分や理想と現実の狭間を誇張して見せる「穿ち」を当時の社会風俗の中に緻密に描いてみせるのが黄表紙の魅力という。この本は原典とその書き下し、現代語訳を...
1775年から1806年までの江戸で出版された黄表紙の五作品の解説。一見「ムダ」と思われるほど突飛なパロディーと、人生のやや情けない部分や理想と現実の狭間を誇張して見せる「穿ち」を当時の社会風俗の中に緻密に描いてみせるのが黄表紙の魅力という。この本は原典とその書き下し、現代語訳を並列して解説も付しており、痒いところに手が届く構成。生き生きとした江戸の庶民文化が垣間見える。せっかくの原典の図版がやや小さく、文章や登場人物の細かい表情を読み取れないのはかなり残念。
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現代語訳があるのはなかなか珍しい。小学館の体系にもあるけれども。小池さんの解説もわかりやすい。さらりと読んでも戯作、掘り下げて読んでも戯作。受け入れやすい作品ばかりでよかった。
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