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美しい書物 の商品レビュー

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2022/12/23

金魚を飼っています。金魚の魚拓だなんて!と思いどんなエピソードなんでしょうと気になって取り寄せてみた。 室生犀星氏との交流が粋すぎてうっとりする。ご自身のことを小説に記されているなんて。本に対する眼差し、装幀家、ブック・デザイナーとしての、製本に対する心構え、真摯さ、丁寧な手仕事...

金魚を飼っています。金魚の魚拓だなんて!と思いどんなエピソードなんでしょうと気になって取り寄せてみた。 室生犀星氏との交流が粋すぎてうっとりする。ご自身のことを小説に記されているなんて。本に対する眼差し、装幀家、ブック・デザイナーとしての、製本に対する心構え、真摯さ、丁寧な手仕事そのものに胸を打たれる。 製本工房から(1978年)製丁ノート(1987年)ルリエール二十年を加えて再編集 以下抜粋 「室生家では、私はもう過去の人になり、近頃では先生は水のような顔をして私を見ていらっしゃる」「先生は、その一人一人に似合った顔を見せ、先生の文章のかけらを、まるでめいめいにお小遣いでも分けてくださるように、与えられた。」 「人にも本にも、出会う「とき」というものがある。」 自身の仕事を「本に着物をきせること。本の顔をつくる役目。パッケージ・デザインの一種。着付け師。」など衣服に例えたり、「皮膚」という言葉を使っていたらしい。「記憶の容器を作る工人」(種村季弘さん記事の引用) 「目に見えないものから目に見える品物の形になるという、ドラマチックな変身の瞬間」

Posted byブクログ

2022/08/04

 「金魚の魚拓を作って下さい。」という、室生犀星先生からの無理難題を聞いて、「金魚の魚拓なんて、残酷で悪趣味だと思います。」という手紙を書きながらも、それを本の表紙にしたいという先生の思いを叶えるため、毎日、金魚屋に「死んだ金魚がいたら下さい。」と通われた栃折さん。そうしてなんと...

 「金魚の魚拓を作って下さい。」という、室生犀星先生からの無理難題を聞いて、「金魚の魚拓なんて、残酷で悪趣味だと思います。」という手紙を書きながらも、それを本の表紙にしたいという先生の思いを叶えるため、毎日、金魚屋に「死んだ金魚がいたら下さい。」と通われた栃折さん。そうしてなんとか出来た、室生犀星の小説「蜜のあはれ」の見事な表紙。そしてその制作を巡って栃折さんと先生のやり取りを小説化された「火の魚」。  筑摩書房の編集者をしながら、装幀をし、やがてブックデザイナーとして独立されて、ルリユール教室も主催された栃折さん。装幀の仕事とはどこからどこまでなんだろう。栃折さんは決して“デザイナー”としての自分を前に出されるわけではなく、出版社の編集者時代からの作家とのお付き合い…会話や所作の小さなことまで尊敬と思いやりとユーモアを大切にしてきた葉脈の上にふっくらと肉づき、陽光を受けた葉っぱのようなお仕事をされてきたのだろうと思った。  印刷物という平面へのデザインではなく、“造本”という科学を基礎に置いた栃折さんのブックデザイン。ここに書かれた文章は1970年代中心なので、今から読むと時代錯誤と受け取られかねないことや逆に“先見の明”を感じられることがあるが、何れにしても約50年前のブックデザイナーの言葉だからこそ、深く心に刺さった。以下抜粋。  いま書店で売られている本は大部分が「パルプ紙に印刷された無線綴じの本」です。……パルプ紙は長持ちせず、百年もたたないうちにボロボロになります。……「無線綴じ」というのは、印刷した紙を折りたたんで重ね、背で綴じ合わせるのに、糸を使わず、接着剤でまとめる製本方法のことです。糸綴じの場合、たとえその糸が機械製本用の細くて弱いものであっても、丈夫な麻糸を使って手かがりで直し、再生することが可能です。無線綴じで作られた本は、背の折り目が完全に切り落とされるか、僅かな部分だけ残して切り込まれているかしているので、かがり直すことが出来ません。   なかに何が書いてあるかを知るだけなら、「本」を手元に置く必要はない、と考えることができます。でも、ブラウン管に写し出された文字を眺める「読書」は本を読むことの部分にしかすぎないのではないでしょうか。宇宙飛行士が、目の前にぶら下がっている何本ものチューブのなかから、好みのものを選んで口に入れ、「食事」をするのに似ています。……本の本質は内容であって、しかもそれだけではない、ということを私は痛切に考えています。本は食器や家具と同じような「品物」でもあるのです。 〈抜粋終わり〉  昨年亡くなられた栃折さん。最近の文章を読んではいないが、電子図書やネットでの「読書」が可能になった現在の文化をおそらく全否定はされていなかっただろうと思う。それはそれで、ますます手軽に多くの人が本の内容を読むことが出来、エコでもあると私も思う。そのせいで本がますます売れなくなってきているのは問題だが、「本の内容を広める」という役目を他のメディアが担ってくれる時代になったからこそ、後世に残す「容れもの」ごとの本という文化のあり方を今一度見直すことは出来ないかと思う。  栃折さんのブックデザイナーとしての作品を沢山見てみたいのだけれど、検索しても殆ど著作のほうしか出てこない。  栃折さんの主催されていた池袋のカルチャーセンターのルリユール教室は今でもあるそうだ。行ってみたいが、東京なので行けない。残念。

Posted byブクログ

2020/08/26

本が作られる目的は、読者に届けるため持ち運びに便利で量産可能な、読み保存するという実用に適した、お金で買うことができ所有することに満足する見て美しい品物…という一文にグッときた。

Posted byブクログ

2018/01/14

装幀やルリユール(製本工芸)について、もっと知りたくなる。 自分でやろうと思うには、広大な沼の予感がヒシヒシとするのでおいそれとは近寄れませぬー。 活版印刷も素敵よねぇ。 序盤の室生犀星さんとのエピソードが微笑ましくも切ない。

Posted byブクログ