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魔道書ネクロノミコン外伝 の商品レビュー

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2021/12/28

 狂気に陥ったアラブの詩人が執筆したという魔導書ネクロノミコン。その英訳版を、所有者(カーター)が各章に註解を付記した上で復刻した――という体のファンブック。表題の他、ラテン語版ネクロノミコンを英語に翻訳したという体の『サセックス稿本』、アルハザードの弟子が記したとされる『師の生...

 狂気に陥ったアラブの詩人が執筆したという魔導書ネクロノミコン。その英訳版を、所有者(カーター)が各章に註解を付記した上で復刻した――という体のファンブック。表題の他、ラテン語版ネクロノミコンを英語に翻訳したという体の『サセックス稿本』、アルハザードの弟子が記したとされる『師の生涯』、そしてこれまでに各作品で引用されてきたネクロノミコン(からとされる)の断片に分析と註解を加えた『ネクロノミコン註解』の計四作品を収録した偽典集(正典として採用されなかった諸文献)。 ----------------------------------------------------------  『ネクロノミコン』(カーター):十五世紀の魔術師ジョン・ディーが翻訳した英訳版の復刻という体裁で、著者が同人誌等で発表してきた断片を一つの作品としてまとめたもの。アルハザードの自伝と旧支配者や外なる神への言及や召喚などといった魔術に関することの二つのパートで構成されており、カーター版クトゥルフ神話体系の集大成となっている。ラヴクラフトのそれとは大きく印象が異なるために好き嫌いが分かれるだろうが、クトゥルフ神話関連の創作の参考にはなるだろう。  『サセックス稿本』(ペルトゥン):書名の由来はラテン語版を英訳した男爵がイングランドのサセックス州に住んでいたことからだが、それは通称で実際の書名は『Cultus Maleficarum(悪の祭祀)』という、少々ややこしいことになっている。一般に知られているものとは大きく異なる独自の解釈によって構成されている特異性から、これまではダーレスやカーターなどの作品内で書名だけが伝わる程度だった。作品自体の独特の味付けは決して悪くはないので、一風変わったクトゥルフ神話を創作したいという人には参考になるだろう。  『師の生涯』(オールバンズ):ネクロノミコンの著者であるアルハザードの弟子が遺したものを、後代の伝記作家が英訳したという体の短編作品。イラストレーターでもあった著者自身による挿画など独自の特色はあるが、際立った良さはないのが残念。  『ネクロノミコン註解』(プライス):神学者でもある著者が、これまで各作品で引用されてきたネクロノミコン(からとされる)の断片に分析と註解を加えた論考集。註解の良し悪しはともかくとして、断片を引用したのがどの作品かがよく解る――英語による原題のみではあるが――ので、オリジナルのネクロノミコンについてより知りたい人にはオススメ。

Posted byブクログ