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思春期の心の臨床 の商品レビュー

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2014/01/11
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※このレビューにはネタバレを含みます

 この本の著者は、精神科医である前に、自分は長所も短所もある、元気なときもあれば落ち込んでしまうときもあるという1人の人間という意識をもっている人。治療場面でクライエントに会う際に気を付けているのは、治療者-患者関係での出会いではなく、人と人が出会う場、そのような場にはそれなりの“もてなし”が必要。  Th.は万能でもなければ魔法使いでもない。魔法でクライエントを楽にすることはできない。でも、クライエントは楽になりたいから相談に来る。その時、自分の無力感を痛感する。著者もそのような体験を幾度も経験している。『患者から「先生は何もしてくれないのですか」と怒りが治療者に向かってくる。その時、「私はあなたのことを心配しているけど、現実に助けることはできない」旨を伝える。「どうしてくれるんですか」と問い詰める患者に「申し訳ない」と白旗をあげる』『白旗をあげ頼りないけども、後ろへはひかない治療者を見て、次第に治療者に助けてもらうという気持ちが少しずつ「結局は自分が頑張るしかないのだな」という気持ちへと変化していくことが大切である』という文が印象的だった。クライエントが苦しんでいても、実際Th.は何もできない。自分の無力感を感じ、クライエントの抱えているものに圧倒され、何もできないと白旗をあげても、クイエントに会い続ける。この苦しさに圧倒されていた私にとっては、踏ん張る力をくれた本。  また、『治療者はおとなというもののモデルの1つである。自分の人生を肯定的に捉え、しっかりと楽しもうとしている治療者と出会うことが、青年が自分の人生を楽しむことに一歩踏み出す景気になると思う』と考えており、Th.は1人の人間として生きていることをしっかりと認識する必要があると思う。

Posted byブクログ