トロムソコラージュ の商品レビュー
タイトルのトロムソコラージュはどのように解釈すれば良いのか。ただ無意味に言葉をつなげているような印象を持つのはまだ僕に詩の心が育っていないせいなのだろう。想像力がないことを痛感させられる。臨死船や詩人の墓は物語調で分かりやすいが、小説と詩の境界はどこなんだろう。詩について知識があ...
タイトルのトロムソコラージュはどのように解釈すれば良いのか。ただ無意味に言葉をつなげているような印象を持つのはまだ僕に詩の心が育っていないせいなのだろう。想像力がないことを痛感させられる。臨死船や詩人の墓は物語調で分かりやすいが、小説と詩の境界はどこなんだろう。詩について知識があればもっと感動出来るような気がする。しかし、知識がなくてもなぜか数ヶ月に一度、谷川俊太郎を読みたくなるのだ。
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デュラスを読んだ後だと、谷川俊太郎の詩はとてもいつそ清々しく感じられる。場所は違へど同じところにたつてゐるといふのに、このひとはどうしてこんなに笑つてゐるのか。 音が転がる。風のやうに流れていく。どこへ?どこかに?どこかへ。彼は作詞家でも作家でも映画監督でもなく、詩人だつた。 詩...
デュラスを読んだ後だと、谷川俊太郎の詩はとてもいつそ清々しく感じられる。場所は違へど同じところにたつてゐるといふのに、このひとはどうしてこんなに笑つてゐるのか。 音が転がる。風のやうに流れていく。どこへ?どこかに?どこかへ。彼は作詞家でも作家でも映画監督でもなく、詩人だつた。 詩壇に現れた20億光年の孤独の頃と比べて、音を感じる。考へてゐることと書かれたことがほぼ同時のやうだ。どこか硬質で冷たく、ほとばしるやうな思考で満たされてゐた頃とは異なり、語りかけるやうな、歌のやうな、形が紙の上を生きてゐる。 詩人の墓とそれに対するエピタフは、彼の放つ形のない形を輝かせる。詩人の墓には何一つ刻まれてゐない。けれど、彼はそこにエピタフを与へた。形のない形。詩人の墓を前にして誰ともなく歌はれた歌。けれどそれを今自分は読んでゐる。さうしたことを彼はやつてのける。女は静かに涙を流したが、男はビールを飲みながら問ふ。デュラスとの違ひはここにあるのだと思ふ。それが詩人としての彼の性なのだと。 ことばを尽くすとは、何もすべて書き尽くすことではない。書かずとも、語つてゐる。ここにゐる男や女がどんな姿をしてゐるのか知らぬ。けれど、男や女が確かにゐるのがわかる。ことばとはさういふものだ。「何もなくても誰もいなくてもそこに在るもの」「そよぐ木々」「十万年前の雲」「鯨の歌」「人間には無としか思えない時空を満たしているもの」 詩人にはコオロギのやうに歌ふことしかできない。けれどもことばにならないさういふ歌を求めてやまないのだ。作家は書く、映画監督は映す、詩人は歌ふ。沈黙さへ歌ふのだ。
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六つの長編詩と一つの短編詩が収録。 どの詩にもストーリー性があり、 一気に最後まで読み進ませてしまう 強い引力がある。 六つの長編詩は、 イメージを膨らませながら、 自分の思考を遊ばせながら、 読むことができてどれも好きだが、 その中でも「絵七日」が一番好き。 絵の中に入り込...
六つの長編詩と一つの短編詩が収録。 どの詩にもストーリー性があり、 一気に最後まで読み進ませてしまう 強い引力がある。 六つの長編詩は、 イメージを膨らませながら、 自分の思考を遊ばせながら、 読むことができてどれも好きだが、 その中でも「絵七日」が一番好き。 絵の中に入り込んだ主人公の 一週間で色々な絵を巡る「旅」が 描かれているのだが、 その「旅」のデッサンに 「人生」や「時の流れ」の 絵の具を更に塗り重ねられている、 と重層感が感じられた。 トロムソはノルウェー北部の都市。 そこで即興的に書かれたものが表題作。 「私は立ち止まらないよ」の一言から 始まり、北欧の街のあちらこちらに 散りばめられ、拡げられる、 詩人の豊かで柔らかな内面で 作りあげられた数々の言葉達。
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夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった 以来、谷川俊太郎さんの詩は、 夜中にひとりで読むのがいちばん好きです。 が、今回は携帯して電車のなかなどで一遍ずつ読んでいます。 それもいいです。
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私は立ち止まらないよ 現代最高の詩人が描く、 軽やかに時空を超える長編物語詩6編 鮎川信夫賞受賞作 道尾さんの推薦で読む。 詩について考えながら読んだのは初めてだが、その抽象的な表現に、自分自身が追いつけなかった。 「詩人の墓」だけは込み上げる何かがあった。
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表題作は即興的に作ったそうで。驚き以外の何物でもないですね。 「トロムソコラージュ」、「問う男」、「臨死船」、「詩人の墓」、「この織物」、「絵七日」がいいですね。って全部ですけど。 それほどまでにどれも素晴らしかった。
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何冊か挑戦してきてやっとわかった。 じぶんが詩を読むに適していない人間だということに。 表題作の自由さが、私には理解できなかった、退屈すら感じた。 『臨死船』と『詩人の墓』だけは、たのしく読めた。 抽象的なものは、読者を選ぶとおもった。
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〈私は立ち止まらないよ/私は水たまりの絶えない路地を歩いていく〉いつまでも西日が眩しく、夜になるとオーロラが現れるノルウェー北部の都市トロムソでなかば即興的に書かれた、疾走感に満ちた表題作。あの世への旅のユーモラスなルポルタージュ「臨死船」。映画のように場面が切り替わる、静謐な愛...
〈私は立ち止まらないよ/私は水たまりの絶えない路地を歩いていく〉いつまでも西日が眩しく、夜になるとオーロラが現れるノルウェー北部の都市トロムソでなかば即興的に書かれた、疾走感に満ちた表題作。あの世への旅のユーモラスなルポルタージュ「臨死船」。映画のように場面が切り替わる、静謐な愛の物語「この織物」。軽やかに時空を超え、深い余韻を残す6編の長編物語詩。 見つけて即買い。何度でも読みたい。
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谷川さんにしては珍しい、少し長めの6つの詩が収められた詩集です。 〝トロムソコラージュ〟という詩の中の、〝私は立ち止まらないよ〟という言葉が印象的でした。時はただただ流れていくものですから、〝私は立ち止まれない〟と思いがちなのですが、あえて〝立ち止まらないよ〟と書かれたところに、...
谷川さんにしては珍しい、少し長めの6つの詩が収められた詩集です。 〝トロムソコラージュ〟という詩の中の、〝私は立ち止まらないよ〟という言葉が印象的でした。時はただただ流れていくものですから、〝私は立ち止まれない〟と思いがちなのですが、あえて〝立ち止まらないよ〟と書かれたところに、谷川さんの積み重ねてこられた時間の長さと、生きていく覚悟のようなものを感じました。一見、楽しんで即興で紡がれたようなこの詩を読みながら、谷川さんもお歳を召されたなぁ、という思いがしました。もちろん、良い意味で。 〝詩人の墓〟という詩に漂う空虚感もまた、詩人として生きてこられた方の言葉として沁みてきました。 愛情に満ちた江國香織さんの解説も素敵でした。
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