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贈与の歴史学 の商品レビュー

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27件のお客様レビュー

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2024/04/07

贈与が表題であるはずなのだが、中世日本の記述に終始するために社会学的関心を満たすには歴史学的知見が必要とされるものとなっていて読者層がピンポイントすぎやしないかと。

Posted byブクログ

2023/01/22

「過去が現在よりもつねに素朴だと思うのは、過去にたいする見くびりであり、現代人の傲慢である。」 至言。(現代の)自分達が過去より良いもの、進んだものに囲まれてるとは限らない。

Posted byブクログ

2022/08/22

極端とも言える発展を遂げた中世日本の贈与儀礼について、具体的な事例を通してその本質を探る内容。極地とも言える15世紀の贈与慣行の特異さ、経済や時代精神との関係性が非常に興味深かった。

Posted byブクログ

2021/06/25

日本中世において猖獗を極めた贈与経済についての本。モース『贈与論』とゴドリエ『贈与の謎』の議論によれば、贈与には提供の義務、受容の義務、返礼の義務、神に対する贈与の義務の4つの類型がある。日本古代において租と調は元々、神に対する贈与の義務が税に転化したものだったが、平安時代中期に...

日本中世において猖獗を極めた贈与経済についての本。モース『贈与論』とゴドリエ『贈与の謎』の議論によれば、贈与には提供の義務、受容の義務、返礼の義務、神に対する贈与の義務の4つの類型がある。日本古代において租と調は元々、神に対する贈与の義務が税に転化したものだったが、平安時代中期においてそれらは官物と呼ばれる地税に統合されて、神への捧げものとしての性格が失われてしまった。 神への義務は失われてしまったが、その後も他の形態の贈与は生き続け、中世には贈与儀礼が大いに発展した。将軍家に対しても多くの贈与品が集まったが、そこに目をつけたのが室町幕府。1441年9月の嘉吉の徳政令は京都の金融業者である土倉・酒屋に大きな打撃を与え、土倉役を主要な財源としていた室町幕府自身を深刻な財政難に陥れた。財政難の幕府は、将軍家への贈与品を修理費が必要な寺院に寄付し、寺院は贈与品市場でそれらを売却することで、修理費を捻出したという。幕府の倉から一銭も出さずに財政出動を行っていたわけだが、なかなか巧妙な手口であると思う。 中世の信用経済の発展に伴った折紙システムの記述が本書のハイライトであろう。中世では贈り物を持参する際に折紙(目録)を添える作法があり、銭に添える折紙を用脚折紙という。当時は、いきなり銭を贈らず、金額を記した折紙を先方に贈り、後から銭を届けるのが一般的だった。銭が引き渡された後で清算が済んだ証として、受贈者から贈与者に折紙が返却された。折紙システムの登場により、銭がその時に手持ちが無くても贈与がおこなわれるようになり、また折紙で贈与の相殺が行われるようになったという。年中行事で様々な機会に人々が将軍に贈った折紙は、室町幕府の重要な財源とみなされ、そこからの収入は折紙方とよばれ、専属の奉行人の折紙方奉行まで任命された。15世紀末から折紙だけ贈って、銭を未納する事例が目立ち始め、折紙システムは16世紀になるとほとんど見られなくなったという。MMTの議論を絡めて言えば、折紙は室町将軍への贈与(納税)義務によって信用が担保されていたと言えるだろう。 本書は、筆者のさまざまな論文を集めて再構成したものであり、内容はやや詰め込みすぎで散漫な印象を受けたが、神への贈与を起源とする税徴収が行われた古代、それが失われた後でも、中世において発展した贈与儀礼についての流れを理解するには大変面白かった。現代とは違う中世の経済構造について知りたい人にはおすすめの本だ。

Posted byブクログ

2020/05/05

人類学における贈与論を一定のベースにしつつも、日本の中世における、主として14世紀から15世紀の贈与・贈答儀礼の在り方や変遷について、具体の史料に拠って、明晰に解き明かした書。随所に切れ味の良い見解が示され、歴史を学ぶ醍醐味を味わうことができた。

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2018/11/05

中心となるのは15世紀前後の室町時代での貴族・武家社会での贈与のありかた。当時は贈与経済が市場経済と並んで幕府財政をも支える柱にさえなっていた。 贈与をめぐる4つの義務 ・贈り物を与える義務 ・それを受ける義務 ・お返しの義務 (ここまでがM・モースの定義) ・神々や神々を代表...

中心となるのは15世紀前後の室町時代での貴族・武家社会での贈与のありかた。当時は贈与経済が市場経済と並んで幕府財政をも支える柱にさえなっていた。 贈与をめぐる4つの義務 ・贈り物を与える義務 ・それを受ける義務 ・お返しの義務 (ここまでがM・モースの定義) ・神々や神々を代表する人間へ贈与する義務 古代では第4の義務が相対的に重要であったと思われる。それが税へ転化したり、世俗化していく。 租・・・税率はわずか3%。律令制度よりも古い、神への貢納・初穂がルーツ 調・・・これも品目から見て初穂(or初尾)に由来 室町幕府は京都に所在したため都市的性格が強い。土地や農業からの収入よりも、商業・流通・金融・貿易からの収入に重きを置いていた(江戸時代と違う!)。年貢を現物でなく銭で収める代銭納制が1270年ごろから急速に普及していった。これは南宋の滅亡により銅銭が大量に国外に流出したためと言われている(東アジア全域で中国銭使用がこの時期に拡大)。米などの作物を現地で換金するため商品経済、信用経済が発達した(なお江戸時代に改めて米納に回帰する)。 →まったく歴史というのは単線的な発展をするものではないと思う。 有徳思想、けち(欠けるってこと)、「例」、「相当」などの概念は現代人でも充分に理解できる。しかし室町人は、それらにメチャクチャこだわっていた。それが現代から見ると特異な贈与経済をうむ。将軍も皇族も、財政基盤が弱かったこともあって、自転車操業で贈り物のやり取りをしてる。贈り物はそのモノ自体に価値がある場合もあるが、ほとんどは非人格的なあつかい。贈物の贈物への転用も当たり前。さらに極めつけは銭の贈与。やはりモノより薄礼という意識はあったみたいだが。さらに現金がなくても「折紙」により贈物が手形化する。中世は権利の譲渡については現代よりよほどドライでもある。 はっきりとした主張ないし結論的なものがある本ではないのだが、今と似ていて少し違う時代の経済・儀礼感覚をリアルに描き出して面白い。市場経済とは贈与経済の単純化・非人格化を推し進めたひとつの形であると言えるかもしれない。 室町時代では皇室と幕府が近所づきあいをしていたのも、贈与儀礼が妙に発達した原因かもね。

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2016/01/10

主な題材は、日本の室町時代の贈与。本来は人間関係を維持、構築するための儀礼だった贈与が、あまりにも頻繁に行われる欠かせないものであったがゆえに、どんどん自動化、非人間化していく。やがて儀礼と経済活動の境目があやふやになっていき、最終的には幕府や将軍家を維持するための公的活動、税の...

主な題材は、日本の室町時代の贈与。本来は人間関係を維持、構築するための儀礼だった贈与が、あまりにも頻繁に行われる欠かせないものであったがゆえに、どんどん自動化、非人間化していく。やがて儀礼と経済活動の境目があやふやになっていき、最終的には幕府や将軍家を維持するための公的活動、税のひとつになった。応仁・文明の乱を皮切りに、打ち続く戦乱で京が荒廃することで衰えていったが、もしそのまま進んでいったら贈与がどんなものになったかを想像すると面白い。

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2014/09/02

[送り送られの心うち]世界の中でも独特の位置づけがなされる日本の贈与文化。その中でも特に特異な発展を示した中世の贈与の在り方を眺めながら、贈与が果たしていた社会的役割や、その裏に隠されていた贈与への人々の思いを明らかにしていく作品です。著者は、日本中世史や経済流通史を専攻としてい...

[送り送られの心うち]世界の中でも独特の位置づけがなされる日本の贈与文化。その中でも特に特異な発展を示した中世の贈与の在り方を眺めながら、贈与が果たしていた社会的役割や、その裏に隠されていた贈与への人々の思いを明らかにしていく作品です。著者は、日本中世史や経済流通史を専攻としている桜井英治。 中世の文化における贈与というものが本当に複雑で「変わった」ものだったことに驚かされるばかりです。現在行われている贈与を頭に思い描きながら本書を読むと、その違いに興味が湧くと同時に、なんとも中世の人たちも大変だったなと思うこと間違いなしです。それにしても夏に送った贈り物のお返しが年初に届くことがままあったりと、中世の人の時間感覚はずいぶんと今と違っていたんだなぁと。 また、贈与が限りなく発展していった挙句の果てに、経済との境目がはっきりしてこなくなる様子なども記されており、贈与という行為自体に新たな目を開かせてくれるのも本書の魅力の一つ。当然今日においても贈与は人々のあらゆる生活の側面に欠かせないものとなっていますので、本書で先人達の贈与への姿勢を日常生活の参考にしてみるのも一考かと思います。 〜日本の贈与の歴史が私たちに教えてくれているのは、他人との限界的な付き合い方であり、それはつまり身近な人ではなく、もっとも遠い人との付き合い方である。それは現代人が苦手にするところであろうが、中世の人びととてけっして器用とはいえなかった。それは私たちにとって、ひとつの救いでもあろう。〜 贈り物に気苦労しちゃうタイプなので勉強になりました☆5つ

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2014/06/20

レヴィ=ストロース的なものを期待してはいけない。悪くない本だが、ジャック・アタリの所有論をヨーロッパについての考察としてはともにすすめたい。

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2014/05/25

Lv【初心者】~ 桜井先生の魅力的な室町描写が光る一冊! 当然、室町だけでなくもっと広い時代、日本を超えた枠組みで贈与を面白く扱っておられる。 だけど、やっぱり先生の室町描写、特に当時の経済のお話は物凄く魅力的で引き込まれる。 貞成親王と六代将軍・足利義教の間で交わされる「折紙...

Lv【初心者】~ 桜井先生の魅力的な室町描写が光る一冊! 当然、室町だけでなくもっと広い時代、日本を超えた枠組みで贈与を面白く扱っておられる。 だけど、やっぱり先生の室町描写、特に当時の経済のお話は物凄く魅力的で引き込まれる。 貞成親王と六代将軍・足利義教の間で交わされる「折紙銭」の摩訶不思議な遣り取りは、室町期の朝廷と武家の在り方を知る上で、なるほど、うなずかされる事しきり、だ。 桜井先生の「室町人の精神」→「破産者達の中世」→本書の順で読み直しても面白いと思うのでオススメ

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